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ドリスの学園生活が気まま過ぎて困る  作者: 朱村 木杏
第一章 いざ! 学園へ!!
26/94

25 え? 他国の密偵!?


「昨日、寮に不審者が侵入したと報告があった」


 担任のボイス先生が、クラスの皆に届く声で言った。

 周りはドリスを見て、ヒソヒソと囁いている。


「いいか。夜中の他者訪問は禁止とする。何かあったら、すぐに部屋に備え付いている、連絡配管から衛兵を呼べ。いいな?」


 え? そんなものあったっけ? とドリスは思ったが、よくよく思い出すと、よく分からない飾りが付いているなと思ったものがあった。

 

 あれ、連絡配管だったんだね。


「「「はい」」」


 当たり前という顔で答えるのは、上位貴族達だけだった。

 下位貴族の人達は、納得いかないように、首を傾げている。


 もしかして……


「はい! 先生。私、入寮する時にその説明を受けておりません」

「は? 必ずやるはずだが……他にいるか?」


 すると、下位貴族の生徒、全員が手を挙げた。


「分かった。こちら側に問題があったようだ」

 

 手を挙げる生徒達を見て、ボイス先生は渋い顔をした。


 後に下位貴族達を案内した学園関係者は、生徒を命の危険に晒す結果となったとし、その職員達は解雇されたらしい。







 連絡配管のこともあるが、思ったより大事になってしまったので、ドリスも戸惑っていた。しかも、

今回は、自分だけが狙われた。

 リーナのところには、そんな訪問者はいなかったらしい。


 前回、階段から落とされた時は、男だと言っていた。

 今回は、女。

 この二つの事件に、関連はあるのだろうか?

 ……にしても、昨日のはふざけているとしか思えなかった。






「ドリスだけが狙われたのが不思議ね」

「今回の犯人ね、精霊が視える人かもしれない。アイリスが言ってたのだけど、中位の精霊憑きだったみたい」


 精霊は、上位、中位、下位と階級に分かれている。


 上位は、大人の姿をしていて、魔法も強力なものが使える。

 中位は、十歳以上の少年または少女の姿をしていて、魔法は少し強いものが使える。

 下位は、十歳未満の子どもの姿をしていて、使える魔法はこの中でも一番弱い。


 ロザリファでは魔力が少ない人が多いせいか、憑いているのは下位の精霊がほとんどだ。精霊が憑いていない人すらいる。


「ロザリファ人だったら、下位の精霊が憑いているのは分かるのだけど、中位以上の精霊は貴族以上に憑いていることがほとんどみたい。でもこの学園では、貴族に精霊が憑いているとしても、下位精霊がほとんどなんだよね」


 するとリーナは、少し考えてから口を開いた。


「ということは……他国の人」

「どこだろう。私のことを知っているのは、ワシュー王国の人だよね」

「ではなく、別の国じゃない? 例えば……テレシア王国とか」

「どうしてその国なの?」

「それは……」


 最近精霊信仰がある、魔法が使える国では、食糧難が深刻な問題になっている。特にテレシア王国は、それが顕著(けんちょ)だ。


 もし、この国に密偵を送り込んでいるとしたら……


「うーん……とにかく、伝手を当たってみる」

「情報に詳しそうな人?」

「アンディ殿下か、お義兄様の友人。……殿下だと、お金取られるかな?」

「さぁ……どちらにも聞いてみるのはどう? 殿下なら、精霊に聞けば分かるから、その……お義兄様のご友人の情報と整合性が取れるのではなくて?」

「いいね!! じゃあ早速手紙を……」

「待って」


 リーナは、真剣な顔つきで、ドリスを見た。


「手紙だと、危険よ。誰かに見られる可能性もあるわ。直接会って話した方が良いのではないかしら?」

「……そうだね。そうしてみる」


 早速、お義兄様に手紙を書いて、ブルーノさんに会う算段を取り付けよう!






 その日の休み時間、ドリスのクラスに、エルが駆け込んで来た。


「ドリス! 今度は、部屋に不審者って……」

「この通り無事ですから、心配なさらないでください」

「でも!!」

「アルベルツ。心配してくれる人がいるのは、ありがたいことだぞ」

「殿下……エルヴィン様と仲良くなったのですか?」

「あぁ。それより、不審者の情報を教えてくれ。ジンに聞いてもよく分からなかった」


 ドリスは、真夜中にあったことを説明した。


「中位精霊が憑いている女……か。他国の者の可能性大だな」

「やっぱりそうですか」

「ってことは、目星は付いているのか?」

「テレシア王国しか、浮かばないのですが……」

「確かにな。密偵がいるか、探ってみるか」

「私の伝手でも探して見ます。……殿下に頼んだりしたら……その……お金って発生しますか?」

「情報料か! もらってもいいな。 だが、状況による。この場合は、そうも言ってられないだろう。その伝手、腕は確かなのか?」

「初めてお願いするので、分かりません」

「よし。ジンの情報と一致するか試すか」


 アンディはニヤリと笑った。


「……ドリス。その伝手って男?」

「エルヴィン様? 何です? いきなり……お義兄様の知り合いですよ」

「そっか……男か」

「エル! いちいち嫉妬するなって!」

「トール……」


 エル達の後から教室に入って来たトールは、色んな人に聞き込みをしてくれていた。


「ご機嫌麗しゅう、ドリス嬢。不審者のこと、結構話題になっちゃってるよ」

「誰です?」

「あぁ! 初めまして、アンジェリーナ嬢。ファルトマン伯爵が三男、アナトールです。トールって呼んでください!」

「アンジェリーナ・ブローンですわ。貴方、初めてなのに、随分馴れ馴れし過ぎでは?」

「親しみを込めて言っているのですが、伝わりませんでしたね」


 「残念」と呟きながら、トールはドリスに顔を向けた。


「話は戻すけど、不審者のことで、一部の貴族から攻撃されないといいけど……大丈夫?」

「それなら、気を逸らす手段がありますから」

「何それ?」


 そこで休み時間が終わってしまい、エル達は自分のクラスへ戻った。







 ボイス先生が呆れ顔で、クラスの皆を見た。


「お前ら、不審者の話題で盛り上がっている場合か? もちろんそれも、気をつけなければならないことではある。……が、もうすぐ楽しい楽しい……期末試験の時期だ」

「「「あ……」」」

「前回の凄まじいやる気はどこへ行ったんだ? ……今回も期待しているからな!」


 にっこりと笑ったボイス先生は、クラスの皆に恐怖を与えた。

 その結果、特にドリスのクラスの生徒は、必死になって勉強することになった。



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