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ドリスの学園生活が気まま過ぎて困る  作者: 朱村 木杏
第一章 いざ! 学園へ!!
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12 前途多難

番外編「アルベルツ家周辺の人々」の中の※04話でちらっと出てきた、ユスティーナの事情もさらっと載っております。

※先日、タイトルに番号がないことに気づき、追加しました。


こう言う事情だったのです。番外編を書いているときは、それがバレないように書いていたのですが、バレましたかね?


 エルヴィンの断罪は、次の週末にやることになった。

 場所は、ブレンターノ伯爵邸。そこに、ドリスの関係者を集めるという。


 トールの寮部屋に行き、そのことを報告すると、腹を抱えながら笑われた。


「あはははは!! 愉快な人だなぁ! エルのお祖母様は!」

「女性陣に囲まれながら、お茶会という名の断罪だぞ? ……恐くないか?」

「恐ろしいね! だけど、俺には人事(ひとごと)だな」

「……薄情者」

「言ってろ! だーれーが、素晴らしい助言をしてやったと思っているんだ?」

「……それに関しては助かった。 ありがとう」

「そんなに素直に言われると、からかいづらいじゃないか」

「ドリス嬢のことだけじゃなく、家の現状も知れたからな」

「まさか、没落寸前だったとは……。 俺もそこまでは知らなかったよ。うまーく、ヴィオラ様が隠していたのだろうな」


 うんうん、とトールは困ったような顔をしながら、うなずいた。


「ってことは、君は母親とは縁を切るのか?」

「領地の父に手紙を送ったら、カンカンに怒ってたよ。でも、自業自得でもあるけどな。お祖母様からの手紙を一切読まなかった、父にも責任はあるし」

「契約結婚っていうのも、まずかったな。これ、ゴシップ紙の良いネタだよ? お祖母様は、どうするって?」

「それは根回しするだろ。記事を出したところは、潰されるだろうな。家には今、金がないけど、伝手ならある」

「恐ぇ!? 俺、絶対言わない!!」

「当然だろ?」

「エルも、その話をする相手には気をつけろよ! 俺だって、ついぽろっと言うかもだろ?」

「トールは言わない。なぜなら、それをわきまえているからだ」

「信用してくれてどうも! そ! 俺は危ない橋は渡らないタイプなんだ!」

「それより……次の休みになって欲しくない!!」

「あっきらっめろ~」






 寮部屋は意外と防音が効いている。特に上位貴族の部屋は、しっかり出来ている為、壁が厚くて内々の話をするのにもってこいなのだ。


「上位貴族で良かったと思うよ。下位貴族の部屋だと、こうはいかないからな」

「それ、ドリス嬢に言えるか?」


 エルはすぐに気づき、「あ」の口を開けたまま固まった。


「ドリス嬢の部屋は最上階。しかも、薄い壁に固いベッド。……お前失言多いな。今、上位貴族の学力低下が嘆かれてるのに。……頭が良くても失言が多い」

「そうだな……自分にとっては当たり前のことも、外から見れば、違うんだよな」

「それに……ドリス嬢の経歴で、まだ、言っていないことがある」

「なんだ?」

「ドリス嬢の姉、カミラ様が学園に通っていないことは、言ったよな? アルベルツ家は、少し前まで、没落寸前の貧乏貴族だったんだ。だから彼女は、貧しい平民並の生活を送っていた経験がある。

 それを解消したのが、カミラ様の旦那のローレンツ卿だ。彼個人で経営している商会は、その業界でトップに位置している。だから今は、潤っている上位貴族並みの生活を送っている。エルとは逆だな」


 確かに真逆だ。それなりに裕福だと思っていたが、それは幻だった。


「それと、彼女の家族が優秀と言ったが、それは本人もだ。入学式早々、彼女は、ミーシェ語とドラッファルグ語の単位を取得した。学年末の試験より、遥かに難しい問題をサラッと解いたらしい」


 エルは、トールの言いたいことが分かってきた。その彼女に釣り合う人間にならなければならないのだ。


「学園に来た目標が出来たぞ! 優秀な成績で卒業する!! そして、平民の気持ちも分かるような領主になる!!」

「ちょっと馬鹿っぽいな。でも良い目標だ。上には上が居るが、がんばれ~」

「上って? ドリス嬢だけじゃないのか?」

「当たり前だろ!! ドリス嬢と仲がいい、アンジェリーナ嬢も成績はいい。それだけじゃない! 入学式で代表の挨拶をやっていたのは、誰だ?」

「確か……ワシューの王子の……」

「アンディ殿下だ。彼らは間違いなく、上位に入る。お前その中に入れるのか?」

「やるさ。研究並みに燃えて来た」

「おう! 燃えろ! そして、俺にも教えてくれ」

「大変だな……それ。……ふと思ったのだが、うちの国の王子もいたよな? 何で上位に入らな……」


 トールは自分の口に、片手の人差し指を立てて、顔をしかめ、小声でエルの耳にささやく。


「……あれはダメ王子だ。今までの歴代王子の中で、一番成績が悪いと言われている。彼と同腹の姉も、良くて三十位くらいだった。奴も恐らくそれくらいだろう。あと……側女とその子ども達は、過激派だ。気をつけろよ」

「……わかった」

「……知らないようだから、王子達について話しておく」





 現在、ロザリファ王には四人の子どもがいる。


 王太子シュテファン、第一王女アリーナ、第二王女ユスティーナ、第二王子バシリウス。


 王太子と第二王女は正妃の子。

 第一王女と第二王子は側女の子だ。


 元々王は、中立派である正妃しか娶るつもりはなかったが、それに反発したのが過激派だ。お互いの拮抗を保つ為と名目をつけて、過激派の貴族を娶ることになった。


 しかし、側女側が色々やらかしているらしい。

 側女は常に正妃と対立し、第一王女も第二王女への嫌がらせをしているという。第二王子も、あまり評判が良くなく傲慢な人間で有名だ。


 それは王にとっても、周りの貴族にとっても、頭の痛い種となっている。






 「なるほど」とうなずくエルから離れると、トールはため息をついた。


「お前は素直過ぎるんだよ。もうちょっと、周りを見ような?」

「……すまん」


 「前途多難だな」という、トールの言葉に、エルは頭を抱えながらうなずいた。

 




パシリウスが第一ではなく第二王子なのは、王太子=第一王子というのが、ロザリファの常識だからです。

正しくは、作者が紛らわしいと思ったからですが。


さぁ! 次回はエルのお仕置きターイム(笑)

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