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潜群アリス  作者: Heart
6/7

感情という獣は理性の檻から



永久凍土とはどのようなものなのだろうか。

広がる景色全てが真っ白な世界。

まだ高校生、平均寿命の1割も全うしていない子ども。そんなわたしは、シベリアの冬景色も、遥か北の大陸も、まだ目にしたことがない。


____________________________________________


シーアが去って、しばらくすると無音で部屋が現れた。空間が裂けた、とでも表現するべきか。奥で左手をかざして佇む女性が開けたのであろうことが推測できる。


「…入りなさい。」


少し枯れたような声が響いて、それが自分に向けられたものだとすぐに判断できなかったのは長いぼっち生活のせいにしよう…


おずおずと裂けた空間をくぐると、やたらと天井の高い広々とした部屋に出た。


「バカ広いねこの部屋・・・」

「初めて来た人はみんなそう言うよ」

「およ?メガネくん。身体はもういいの?」

「その呼び方はなんとかならんのか。。」

「ふっふん。メガネくんはメガネくんだよっ!」


なんとなく鼻を鳴らしてドヤ顔で威張ってみる。

メガネくんは目も当てられないと頭をかかえていたが、思ったよりも元気そうで安堵している自分がいた。


「…そろそろいいかしらね?」


わたしとメガネくんを静観していた女性が口を開く。


「ぁ、すいません。」

「申し訳ありません、司令。」


司令と呼ばれた女性がキッと睨みつけてきた。え、わたし?わたし何かしたっけ・・・そもそも寝てたし初対面だよね?なんで睨むのやめてよ怖い。


心做しかメガネくんの表情が暗い…そんな気がした。


「まずは被害者でありながらうちの子を救ってくれたことに感謝するよ。お嬢さん。」

「い、いえそんな大したことは・・・」


言葉と表情がマッチしてませんマドマーゼル!メガネくん助けてー・・・


「相手を甘く見ていたこいつに責任がある。お嬢さんは誇れることをしたんだよ。謙遜する必要はないさ。」

「本当に申し訳ない・・・。」


深く頭を下げるメガネくん。本当に悔いているらしいその姿勢は、さながら入社説明会にでも披露したいほどの風格がある。


その頭をガシガシわしゃわしゃと女性が撫でる?というよりも叩く印象の方が強い…


「…さて、そんじゃそろそろ本題に入ろうかね。」


一瞬で場の空気が変わった。同時に女性の声音にも重みが増した気がする。


室内にもかかわらず冷たい風が吹き抜ける。寒気の暗喩や気の迷いでもなく、本物。いつも髪を乱してくるわたしの嫌いなやつ。


“それが目の前にたつ女性から発せられている”と気づくのに、そう時間はかからなかった。


藍瓦あいがわらさん、だったかな。今からあんたをテストさせて貰うよ!行きなっ灰色狼!」


「…ッ!!どうゆうことっ…わっっ」


状況を飲み込めず、どこからともなく放たれた狼の攻撃をスレスレで避けることになった。

血に飢えたような鋭い眼光でわたしを捉える狼。一撃を外したからといって退いてくれる気はないようだ…。


『そのままの意味さっ!あんたの全力を見せてみなっ』


放送機から声がする。いつの間にか、あの女性とメガネくんの姿は消えていた。


「わけわかんないっよッ!!」


牙をむき出して襲いかかってくる狼の顎を、咄嗟にローファーの先で思いっきり蹴り上げた。

予想外の攻撃に反応できなかったのか、蹴りあげられた身体は背の高い放物線を描いて背中から墜落した。3メートルくらい舞い上がったのではなかろうか。衝撃に耐え切れなかったのか、狼は這いつくばってのびていた。


「ふぅ…」


咄嗟の行動にしては上手くいったように思う。まさか人生で狼を蹴り飛ばす経験ができようとは…にしてもこんなに足強かったっけわたし。


『ふっ、まだまだこれからだよっ!』


わかっていたとでも言うようにあの人は鼻を鳴らした。

あの人は休息も許してくれないようだ。


「ねぇ!どうゆうことなのメガネくん!!」


わけもわからず猛獣に襲われているこの状況で、冷静でいられるわけがない。

そしてそれをどこかで眺めている彼らに気味の悪さを感じ、同時にふつふつと怒りも沸いてきた。


『・・・』


メガネくんは一言も返してくれない。放送機の向こうにいるあの人も黙ったままだ。

なぜ何も答えてくれないのか。あの人はともかく、メガネくんまで…どうして…。


わたしの中で何かドス黒い感情が生まれた気がした。

腹の底から込み上げてくるそれは、わたしの喉を抉るように、思考を飲み込んで、頭の中を黒一色に変えようとしてくる。


「…かったよ。」


理性を繋いでいた糸が切れたように、感情が爆発する。


「「コレが終わったら問い詰めるからね」」


ただ静かに、以前とは違う形で具現した武器を握り締める。


視界を移すと、そこには銀白色の大地が広がっていた。先程までの無機質な空間とはうって異なる輝かしい雪景色。

それだけなら良かったものの、先ほど同様、“それら”はギラギラした目で獲物わたしを捉えていた。


「・・・5匹」


わたしを取り囲んで襲うタイミングを見計らっているらしい。5匹もの素早い狩猟者たち。

元より、狼は集団で狩りをするものだろう。

獲物を取り囲んで逃げられないように各々役回りや配置を決める。そんな賢い彼らにわたしが1人で打ち勝つ方法…それは…


カチャッ…


刺激しないように、静かに“弾”を装填する。その銃口を天にかかげて1発。


パァンッ!と、撃ち出したそれは、“威嚇”するに十分であった。


グルヴヴッ!!


一瞬怯んだ後、1匹がわたし目掛けて飛びかかり、一瞬遅れたほか4匹も牙を向いてわたしに向かってくる。

(思った以上に攻撃性が強いな・・・)

しかし、向かってきてくれるなら好都合だった。


「ごめんね」


一思いに、銃口のすぐ下についた穂先で喉元を抉って引き金を引いた。


鼓膜に鋭く響く銃声。

脳を貫かれ、亡骸となったそれを正面の1匹に投げつける。キュウンと短く鳴いて、投げつけられた1匹は1回り大きかった仲間の体重を支えきれずその場に倒れた。

(脚でも折ったのかな・・・)


そうこうしているうちに、体制を整えたらしい3匹が一斉に襲ってきた。

3方向、わたしを中心とした3つの矢が逃がすまいと牙を向く。


「…賢いね。」


雪に足を取られる地形、その中でも素早く襲いかかる獣、昔見てたアニメにこんな絶体絶命の窮地が描かれていたのを思い出して、ふっと苦笑した。


(わたしはあの主人公みたいになれるかな。)


ファンタジー世界で巧みに魔法を操る秀才。特有の特殊能力で幾度も危機を乗り越え国を救ったあの英雄のように。


「為せば成る…!!」


銃口を真下に振り降ろし、感情任せに引き金を引いた。

______________________

____








最果て_それは全ての収束地、魂の還る場所。


はい、後書きしょっぱなから何言ってんだという感じですね。すんませんっ!!


前回からあんまし進んでない…もしや?

次回までとりあえず狼に襲われてます(泣)


そしてとっても遅くなりました!1ヶ月くらい…かな…。(そもそも読んでる人いないから関係ない説。)はーい頑張ります!ではまたまた次回!

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