表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/17

双子

 ルークはヒットアンドアウェイで細かく攻撃する。

 スキルの効果でスピードも乗っているため、一撃一撃も重い。


 しかしローガンを倒せない。

 ローガンの速さは全く変わっていないにも関わらず。


 ローガンはまるでルークの動きが全て分かっているように避ける。

 右半身を引く。

 左半身を引く。

 首をひねる。

 手で弾く。


 羽織っている赤いマントはほとんど動かない。

 最小限の動きだけで避けていく。


 ルークは焦る。

 しかし焦れば焦るほどルークのスキル効果が上昇する。


 感情スキルは文字通り感情によってスキル能力が左右される。

 つまり、ルークのように焦るほどスキル能力が向上する者もいれば、焦りという感情に支配されてスキルを発動出来なくなる者もいる。


 “The fastest(早くて速い)


 さらにルークのスピードがあがる。

 もはや常人の目では追いつけない。

 しかしそれでもローガンに攻撃は当たらない。


 “The fastest(早くて速い)

 “The fastest(早くて速い)

 “The fastest(早くて速い)


 もはやルークは自分の感情をコントロール出来ていない。

 "焦燥"という感情に身を任せているだけだ。

 そしてそれと同時に動きも雑になってきている。

 いつになっても攻撃は当たらない。


「まだまだ未熟だ。次に会うまでに鍛え直しておけ」


 ローガンはそういうと体に力を込めた。


 空気が変わった。


 ローガンの身体から光が溢れ始める。

 その光は落ち着いていて見ている者を元気付ける、不思議な光だ。


 ローガンはルークへと迫る。

 ルークもそれに対抗するようにスキルを使って近づいた。


 ルークが上段蹴りを放つ。

 ローガンはそれを片手でいなす。


 ルークが下段蹴りを放つ。

 ローガンはジャンプして躱しルークに拳を放つ。


 ルークは咄嗟に避ける。

 ローガンは正拳突きを放つ。


 ルークは辛うじて蹴りを放った。


 拳と足が交差する。


 ルークはこの間合いは不利だと感じたのか距離を取ろうとした。


「逃すものか」


 ローガンはそういうと立て続けに攻撃した。



「ちょっとルークやばくない?」


 アンナは心配するように言った。


「そうねえ。でもルークなら手を出すなって言ってきそうだわあ」


 ステラは扇で口を隠すように言った。


 ちなみに、先程追って来ていた敵はステラのスキルとドミニクによってすべて倒されている。


「とは言えルークが欠けるとそれはそれで問題だ。ルークがなんと言おうとここは介入する。ドミニク」


 レードルはヒゲをいじっている老練の戦士に声を掛けた。


「あいわかった」


 ドミニクが返事をした時だった。


「見つけたぞ!レードル!」


 遠くから小太りの男が数人を引き連れて走って来る。


「これはこれはダミアン大臣。直接お出迎えいただきありがとうございます」


 レードルの言葉の端々から相手をバカにしている雰囲気が伝わってくる。


「うるさい!そんな軽口を叩けるのも今日で終わりだ!」


 ダミアンの顔はひどく赤らんでいる。


「そんな日が来るといいな」


 レードルはバカにしたような敬語を辞めた。


「私の秘策にきっと驚くぞ!」

「どうせなにもないんだろう?」

「なっ!本当にあるぞ!」


 ダミアンはムッとした表情で言った。


「ああ。わかっているよ。ただのハッタリだということも。そんなに気負わなくていいんだ。私も同じ立場だからあなたの気持ちもよくわかる」

「いや、本当にある!嘘じゃないからな!」

「もういいんだダミアン大臣。あなたはよく頑張った。嘘なんかつかなくていい。あなたに嘘は似合わない」

「だから本当だってーー」

「そうか、そうだな。わかったわかった。きっとあるんだろう」


 レードルの表情は全く信じていなさそうだ。

 子供の嘘を許す親のような表情をしている。


「本当だって言ってるだろ!!」

「ああ。だからわかったって」

「いや、その表情は全く信じていない顔だ!」

「いいや、信じている」

「嘘をつけ!」

「嘘をついてるのはあなーーいや、失礼。信じているさ」

「おい!やっぱり信じていないじゃないか!もういい!後で後悔するんだな!行け2人とも!」


 ダミアンの言葉を受けて周囲にいた子供2人が走り出す。


「おじさん、こいつらさっきまでの奴らと雰囲気違うじゃん。本当にランキング10位内じゃないの?」


 アンナは怒りを隠しながらレードルに聞いた。


「すまない。どうやら私は間違った情報を入手したようだ」

「つまり裏切り者がいるってことね。おっさんを騙すってなかなかじゃん」


 レードルとアンナが話している間にも敵は向かって来ている。


「僕たちが相手だよ」

「相手だよ」


 被っていたフードが外れた。

 2人はどうやら双子のようだ。

 パーカーの中にローガンと同じくオレンジ色の軍服を来ている。

 ダミアンよりも小柄だがダミアンのように太っているわけではない。

 むしろほっそりとしており十分に美少年といえるだろう。


「えっ!?その金髪と銀髪!それにビル国の双子といえばジェミニ兄弟じゃん!初めて生で見た!」


 アンナは嬉しそうにしている。


「VR世界なんだから生じゃないぞ」


 レードルは小さな声で言った。


「うるさい」


 アンナはレードルを睨みつけた。


「僕たちを知っているの?」

「知っているの?」


 双子ーージェミニ兄弟も嬉しそうしている。


「知ってるも何もレイシュ国ですごく人気だよ!強いのに可愛いって!うちも実はファンだったんだ!この戦争には出ないと思ってたから超ラッキー!」


 アンナは喜びを隠しきれずに小さくジャンプしている。

 アンナが着ているパーカーも一緒に喜んでいるかのように揺れている。


「僕たちも嬉しい」

「嬉しい」

「ねえルル」

「なにララ」


 ジェミニ兄弟の兄、金髪の男の子ーーララが、弟の銀髪の男の子ーールルに話しかけた。


「僕たち戦うのやめようよ。このお姉さんとは戦いたくない」

「そうだね、やめよう」

「おーい、ダミアン大臣!」


 ララは味方に守られているダミアンに声をかけた。


「なんだ!早くそいつらを倒せ!」

「僕たち戦うのをやめるよ」

「なに!?何を言っている!」

「このお姉さん僕たちのことが好きみたいだから戦いたくない」

「そんなこと通用すると思っているのか!これは戦争だぞ!」

「僕たちにはそんなことは関係ない」

「関係ない」


 ララとルルは平然と言った。


「貴様らあ!」


 ダミアンの顔はりんごよりも赤い。

 しかしダミアンは一度深呼吸をして息を整えた。

 赤みが引いていく。


「…ふう。もうお前らを怒る気も失せた。いつも何を言っても聞かないからな」

「そうだね。大臣の言うことは聞いたことない」

「聞いたことない」


 ダミアンの額に青筋が立つ。


「落ち着け、落ち着くんだ私。…ふう。ならば妥協案を出そう」

「妥協案?」

「妥協案?」

「ああそうだ。その女に手は出せないと言うことは、ほかのやつらになら手を出せるんだろう?」


 ダミアンはニヤニヤ笑いながら言った。


「出せないよ」

「うん。出せない」

「なぜだ!!!!」

「お姉さんが悲しむから」

「悲しむから」

「ふざけるなああああああ!」


 ダミアンの怒りが爆発した。


「ダミアンが怒った」

「怒った」

「かわいそうだからこれくらいにしておいてあげようか」

「そうだね」

「大臣ー!」

「なんだ!!!!!!!!!!」

「その妥協案飲むよ。僕らもこれでお金をもらっているわけだからね」

「わけだからね」


 ジェミニ兄弟はそう言うとアンナの方を見た。


「と言うわけだからごめんねお姉さん」

「ごめんね」


 兄弟は2人とも頭を下げた。


「これも運命なのね…」


 アンナはまるで少女漫画の主人公のように空を見上げて呟いた。


「このお姉さん面白い」

「面白い」


 兄弟はクスクスと笑っている。


「でもうち以外に手を出すなら、うちも戦わなきゃいけない」

「そっか…。残念だね」

「残念だね」


「「じゃあ早く終わらせて現実世界で会おう」」


 ジェミニ兄弟のララとルルはスキルを発動した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=285200033&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ