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王宮の女神3像の美しさは、世界に知れ渡りました。女神像の前で瞑想すると、透明な海の底に居るような気持ちになります。体がリラックスして、泳ぎたいと思います。何時間も泳いでいるのに、ちっとも疲れません。青い洞窟があります。ふと、だれか隣に居るのに気がつきます。振り向くと、三人の女神の一人がいます。顔を近づけ、私の目を覗き見ます。笑って離れ、腕を絡めます。一緒に泳ごうと誘っているのです。一緒に何時間も泳ぎます。
体を揺すられ、目が覚めました。「王様、大丈夫ですか」「皇后か、何時間こうしていた」「一分ぐらいです」王は何時間も泳いでいたのです。女神様をみて、それから自分の腕を見ました。腕を絡め何時間も泳いでくれたのです。楽しい時間が過ぎ去ってしまったようで、寂しさを覚えました。
皇后は不審気に、女神像を眺めるが、余りの美しさに、命を吸い込まれそうになります。気がつくと春の浜辺にいました。青い海に、怖いような高い空。足元を波があらいます。桜吹雪です。風が桜を運んできます。いつの間にか桜に追われて海の中にいます。青い海の中で、上向きに横になると、太陽の光が、綾なして七色の虹を生みます。間近から女神が皇后の目を覗き込みます。笑っています。手をとりあい、水の中で踊りを踊ります。美しい音楽が水中を響き渡ります。何度も何度もターンをして、笑いあいながら踊ります。気がつくと王が心配そうに、こちらを見ています。幸せな気分がどこかに消えてしまいました。
大臣がいらいらしています。だれも私の気持ちを理解してくれない。女神像を見に来たのです。女神を見ると、いらいらが収まる様です。何時の間にか、女神がとなりに座ってます。心臓がどきどきします。女神が抱きしめてくれました。周りは青い海の中、私の苦しみを女神だけが分かってくれる。大臣は女神の胸の中で、赤ん坊のように泣き出しました。泣きつかれて眠ってしまいました。起きたとき、スッキリとしています。
だれもが女神像との不思議な体験を口にしません。自分だけの大事な体験だと信じているのです。
ツキヨミはロボットの力を借りて、オートマタの改良にとりかかりました。男性一体、女性一体を改良し終えると、後はロボットが手順を覚えて、流れ作業です。休み無く800体のオートマタを改良し続けます。女性型は男性型より15cmばかり身長が低くく、目の高さしかありません。男性型はより男らしく、首が太く肩幅が広く筋肉が目立ちます。顔は意志の固さをあらわしています。
初任給で男女のカップルとなって、街に買い物にいきます。強制されたカップルでなく、実験的に相性の良し悪しをみるためです。基本的にコミュニケーションはどの様な相手とも対応できるようになっています。基準値の範囲内で性格も体格も容姿も個性豊かにしてあります。けしてどこかの国の美女軍団やドラマ俳優にまけません。特に女性の肌は透明感あふれるものになっています。
王都と先生の領地に、複数の銀行を設けました。複数の病院を設けました。複数のレストラン、ショッピングモールを設けました。学校も開設しました。将来オートマタが差別されることがあっても、十分やって行ける環境を作りたかったのです。
受注のあった各種帆船の納品は、すべて完了しました。船舶の受注と同時期に湾岸工事を各国から請けているので、オートマタ監督と土木・建築ロボットがセットになり、海外に出張しています。資材は先生の領地の資材を、大量に運搬、使用します。あらかじめ精神魔法でオートマタやロボットの拒否反応を無くしているので、問題なく工事は完了しました。これからは人間には無理な環境の中での工事を積極的に請け負うつもりです。
各国に支店をつくります。ツキヨミ商会とします。先生の名は民間取引では、あまり出しません。土木・建築工事では、3年後に完成する先生の領地の森を、林業に大いに、活用する積もりです。
税金免除の3年間のお陰で、森もすっかり成長しました。魔法を付加した苗木の開発のため、3年で成木になります。来年から、海外の建築工事に積極的に使っていく予定です。
広域無人農業も、魔法付加の種苗のおかげで、順調です。厳冬期の雪を使った貯蔵庫により、長期保存が可能となり、出荷の時期をずらして、計画的に安定供給が可能となりました。
オートマタも1000人となり、可愛い赤ちゃんが、各地で誕生しています。ツキヨミ商会では、幼児を対象としたアパルトメーカーを立ち上げました。
世界会議で貿易の不均等の案件が提出されました。会議には先生も出席しています。あらかじめ、すべての人間に精神魔法を掛けているので、感情的な無意味な会議には、成りません。先生が発言します「魔獣の暴走より3年、わが国も復興を急ぐ必要があり、このような歪な数字として出てきてしまいました。まず、復興の完了の報告をします。ありがとうございました。貿易の不均等の問題は早急に対応しなければ、なりません。すぐに実務者会議を行いたいと思います。会場と日時ですが。各国の一律の話し合いでは、難しいので、別途会場を用意しましたから、予備会談をしたいのです。相当数の国の代理人が詰めますので、各国は実務者を選んでください。下敷きとなる資料は当方でも、用意しています。この予備会議は、当事者が了解すれば、即実行に移るものです」
先生は大きな妥協をしても、ここでおかしな関係にするつもりはありません。あらかじめ、ツキヨミ商会の各責任者が国の代理となって、各国に解決案を提示します。商会だけでは無理な場合、幾つかの候補をもって、国にお伺いをたてます。国も了解しています。




