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 18歳女性型オートマタ医師兼看護婦のおかげで、脊髄の損傷で足が動かなくなった患者も、リハリビまでこぎつけました。他の患者も何らかの進展がありました。


 先生は何度か、国王に領地を訪問して貰いたいと、お願いしましたが、なかなか実現しません。ツキヨミ達も、厳冬期は王都で過ごすのが、習慣になりました。国王としては、領地の経営がオートマタで成り立つのなら、なるべく王都に居て貰いたいのです。国王の心の中で、先生とツキヨミの存在が大きく成っているのです。


 魔物の暴走の時も、先生の助力無くして世界会議まで至らなかったかもしれない。先生ほどの医者は居ません。この間の水難事故でも、先生の帆船が一番で駆けつけてくれて、死者が一人も出っていません。何より王都の医師が見放した患者が、歩けるようになったり、患者のため義足、義手を作って、社会復帰が出来るほどにしてくれたり、陸軍病院では神様のような評価です。


 それにツキヨミと先生がいれば、王都は芸術の街になります。先生たちの王都の屋敷は美術館と室内音楽ホールになっております。王都の広場の舞台は、コンサートやバレエの会場として世界的に知られています。ツキヨミ商会はツキヨミが製作した精密機械が展示されています。


 ツキヨミは一日一回は転移陣を通って、領地の館に帰ります。厳冬期でも出来る仕事はあります。工場は稼動しています。植林用ロボットの製作です。温室の中では魔法により成長を早くした苗木を育てています。3年程度で森になります。


 ツキヨミが心配しているのは、直径400kmの緑が失われた事による災害、異常気象です。幸いここには人間が住んでいません。雪崩があっても、竜巻が発生しても、大型台風があっても、しかし200km圏外に迷惑を掛けます。


 春蒔きの小麦と秋蒔きの小麦を開発しました。野菜の苗も魔法により成長速度を速めました。厳冬期の野菜栽培も成功しました。助手のオートマタの力が大きかったのです。来年の作付け面積を10倍にするつもりです。


 転移陣で王都に戻ると、先生、妖精、オートマタ達は全員病院です。何事かとツキヨミも駆けつけます。また海難事故です。港で何かが大暴れしたとの事。軍隊が港に展開しています。


 みんな、かいがいしく働いています。あちらこちらでポーションを薬液で薄めた点滴をしています。また一人運ばれて来ました。顔を打たれて、醜く破損しています。洗浄魔法で全体を洗浄します。ツキヨミは透視魔法で全体を見ます。頭部と顔だけで、他の箇所には破損は無いようです。脳の損傷を確認します。出血箇所を確認、血管の修復、血液の除去、脳特化型上級ポーションを破損部に浸透させます。


 顔の修復です。ツキヨミはふと昔の事を思い出します。別の世界で人間の召喚魔法に巻き込まれ、公爵の娘の顔を造形した事があります。今回も同じようなものです。時間がかかります。顔と頭の骨の修復をします。男の記憶から、顔の造形イメージを固めます。歯茎と歯を造形します。血管と神経を造形します。肉を造形します。皮膚を造形します。毛髪を造形します。完了です。


 全ての患者の治療が終わったのは、明け方でした。王様より感謝の言葉を頂きました。度重なる海難事故は、海の魔物によるものと思われます。海軍が調査を開始しました。先生の方にも、協力要請がきたので、王都に係留している小型帆船に4人のマーメイドオートマタが乗船します。


 そのうち、帆船の運航はマーメイドにすべて任せるつもりです。汎用型オートマタとマーメイドの違いは、透明の皮膜を具現化出来るか、出来ないかだけですから、全てのオートマタをマーメイド型にしても問題有りません。透明の皮膜を視覚化すると、美しい人魚にかわります。オートマタは人間の理想を形にしたものです。美しさに個性をもたせ、均一に成らない様に作られています。一つとして同じ顔はありません。皮膚の色も微妙にかえています。しかし透き通るようなきめ細かい皮膚は、すべての女性の憧れです。性格も様々です。


 4人のマーメイドオートマタが操船する小型帆船は、王都の港の入り口で停止しています。水着姿のマーメイド3人が水中に入って調査をします。船からも、小型海洋生物に似せたロボット100体を放出します。人間型のオートマタのような高度の判断能力はありませんが、かなり高性能です。もともと海洋公園のペットとして開発されたもので、人懐こい性格です。マーメイドの補助として、打って付けです。かもめ型ロボット100体も同時に放します。この調査は期間を定めない調査です。安全が確認されるまで、終わることはありません。


 先生は海外と貿易をしたいと考えています。商業組合に貿易の許可をどの様に、取ればいいのか打診します。マーメイドオートマタより、海底鉱山の存在を報告されました。美しい宝石です。魔力を有しており、見る間に色が変化します。ツキヨミとふたりで、うっとりと宝石を見ていて思いついたのです。この宝石を加工して、海外に売り込もう。


 ツキヨミは全てのオートマタをマーメイド型に改良しました。貿易会社の設立に便利ですから。皮膜を顕現化しなければ、汎用型オートマタと変わりません。皮膜を顕現化していても、透明化すれば、素晴らしく泳ぎの上手い、女性にみえます。透明化を引き下げれば、幻想的な衣服を纏う天女のようにも見えます。透明化を無効にすれば、美しい人魚そのものです。


 先生とツキヨミは王宮へ王様に会いに行きます。宝石を素材として彫刻をほどこした加工品の数々。等身大の女神も三体作りました。これは王宮の広間に飾って貰う為です。三人の女神が戯れあっている姿です。ため息が出るほど、美しいものです。暗闇のなかでも、神秘的な光を放っています。


 海底鉱山の開発の許可、海外貿易の許可を求めました。王様は関連大臣をすぐに呼び、検討にはいってくれました。女神三像は、ツキヨミの手によって王宮の広間に永久設置されました。


 貿易による収入は領地の税金と、同じ扱いとなりました。先生が王様に訴えたのは、直径400kmの植林を急がなければ、春風とともに、大量の土ぼこりが王都に舞うことになる。王都は試算では30cmの細かい土に埋もれてしまう。農業、林業、水産業、運輸業に壊滅的打撃を与え、場合によっては国の浮沈に係わると、力説しました。すべて本当のことです。大臣も細かい試算を見て納得しました。


 貿易会社の扱う品物は、制限を設けない事に、なりました。大型帆船10隻、中型帆船20隻、小型帆船40隻を新たに造船して、先生とツキヨミの領地の農業生産物、水産業加工品、美術品を海外に売り込みに行きます。王様は各国に親書を書いてくれました。18歳女性型オートマタ達は、国王の親書を持って売り込みに出発しました。


 


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