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年に一回の、国王を交えた領主会議があります。先生とツキヨミが指名されました。ツキヨミも魔物の暴走には功績があったという理由で、爵位を貰っています。皮肉にもこの中で一番広大な領地を貰っているのは、先生です。ツキヨミは爵位のみです。
先生の領地は200km×200km×3.14という広大な物です。しかし人口は、先生+ツキヨミ+妖精10人+18歳女性型オートマタ15体です。先生が懸命に移住を訴えても、誰も来てくれません。国の税金は3年間無税です。先生の領地には海もあります。無人飛行艇を24時間、毎日飛ばして、大型船舶の寄港できる、湾岸設備を幾つか、作りました。各港から領主の館までの道も整備しました。運河も幾つか作り、船で領主の館まで簡単に行けます。それでも怖がって
誰も移住しないのです。もったいない話です。
領主会議では、誰もが先生に好意的です。精神魔法のせいだけではありません。美人です。男だけの会議では、怒鳴り合いに成る様な場面でも、先生が居るだけで和みます。今年は食料事情は最悪です。魔物の暴走の影響は、いたる所に出ています。先生とツキヨミは、会議の後で相談して、援助に出せる食料の品数を決定しました。
ツキヨミ達の援助の申し入れは大変感謝されました。ツキヨミは王都に商会を開きました。既存の商人と競合しない商品の品数を揃えて、販売します。精密な機械仕掛けの楽器を奏でる人形とか、オルゴールとか、売れても、売れなくとも構わないのです。店頭に置けば、珍しくって人だかりが出来ます。美術館、博物館感覚で展示します。自分達が造った物を見てくれるだけで、嬉しいのです。その内本当に美術館を造ろうと思います。
王様が先生達の食料援助に対して、お礼をしたいと言います。先生は王都の観光名所になっている広場に、屋根付の舞台を作る許可と、演奏会を開催する許可を頂いてきました。早速18歳女性型オートマタによるピアノソナタが毎日開かれました。本格的なステージなので、照明魔法と音響魔法を駆使した創作バレイも夜の人気演目のひとつです。みな18歳女性型オートマタの美しさと才能の賜物です。
ツキヨミは天候を読むことが出来ます。今年の先生の領地の収穫は初めてとしては豊作でした。魔物の暴走を見込んで、多めの作付けをしたのが、良かったのです。植林も大量のロボットを製作したので、24時間フル稼働して、目標を上回りました。何十年かしたら、また森が蘇ります。半径200kmの植林を完成させる事が、当面のツキヨミの目標です。自ら滅ぼした森は、自ら再生させなければ、なりません。
本格的な冬の到来です。ツキヨミは領主の館から王都までの道を完成させています。その間に宿泊設備を等間隔で6箇所作りました。オートマタ12体を作り、宿泊設備の運営を任せました。冬季の間、自動雪かき車によって、除雪を徹底いています。何があっても、遭難者を出さない処置です。
3つの港の宿泊所にも、オートマタ6体を造り、運営を任せました。除雪はしていません。非常の場合は航空機で救援に向かいます。
標高3000mの山が先生の領地の中に、多数あります。冬季の娯楽として、冬山登山のルートをGPS端末上に記憶させ、可能な限り山小屋の設置をすることにしました。あくまでも先生やツキヨミ、妖精達の遊びの計画です。
新雪を踏締めるのは、気持ちのいいものです。スノーシューを履き、少しずつ上って行きます。先生が先頭です。次はツキヨミ、妖精達と続きます。先生がもらった領地に来てから、屋根を作ったり、ロボットを作ったり、妖精達も働きました。今日は反重力魔法は禁止です。3時間ほど行くと、山小屋があります。今日はそこで泊まります。登山の気分を楽しんで、朝日を拝んだら下山です。自力の山登りはきついです。しかし山小屋では、オートマタの管理人が接待してくれるそうです。
明るい内に、山小屋に着きました。オートマタの管理人が途中まで迎えに来てくれました。お風呂の用意が出来ているそうです。見えました。別の管理人さんがいます。立って手を振っています。妖精達はスノーシューでもたもたしながら、走って行きます。周りは見渡す限り白です。
お風呂はいいものです。先生を中心に、みんな湯船の中で、ひとかたまりです。先生が数をかぞえます、まだ上がっては駄目です。
夕食はカレーライスでした。先生やツキヨミが作っている物とは、かなり違います。この国の調理方法を加えているとの事でした。美味しくて先生までお変わりしました。食後、管理人さん3人による音楽コンサートです。
まだ暗い内に、起き上がります。朝日が出る前に30分峠の頂に歩かなければ成りません。スノーシューを履いていても滑ります。もう歩きたくないと、思ったとき、頂に着きました。朝日が昇って来ます。みんな感動しています。
王都に作ったツキヨミの商会は、大々的に拡張し、ウインドショッピングの目玉になっています。若いカップルが必ず寄る場所です。どの品も精密技術の粋を集めた、魔法のような物ばかりです。人形を手に取ると、その人の瞳をジーと人形は眺めます。手の指に愛しそうに、ほお擦りします。思わず抱きしめると、顔を赤くして、恥ずかしそうに俯きます。
王都の先生とツキヨミの館は、かなりの敷地を有しています。住居と言うより工房です。ここで趣味的な工芸品を作って、ツキヨミ商会に飾っています。館の大部分も一般に開放して、美しい庭の鑑賞、音楽ホールでのコンサート、絵画公募展の会場、まるで古の三菱1号館と古河庭園と上野の芸大の音楽ホールを併せて大規模にしたようなものです。絵画公募展は世界的にも権威有るものとして有名です。食堂もあります。ここでお茶を飲むのを、若い恋人達の定番となっています。結婚式にも使われます。
隣接した土地を先生は買って、病院を作りました。勿論ツキヨミや妖精達、オートマタも、お手伝いです。




