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 「神々の戦いは終わりました」先生は世界会議の最高責任者の国王に報告しました。国王はじめ幹部達は一様に喜びを、顔に現しました。報告は続きます、「神はこの戦いのため、恐らく、世界中のダンジョンの魔物を、魔物の暴走のはじまったダンジョンに集めたと思われます。世界中の魔物の死骸、腐肉がうず高くダンジョンを中心に積み上げられ、腐敗して、底なし沼になっています。


 50キロ圏に近づくと、大地は真っ赤になっていました。ダンジョンから流れてきた、魔獣の血が大地に染み込んだのです。ためしに井戸の水を汲むと、真っ赤な血の色と、生臭い魔獣の血の色です。

 30キロ圏内は死臭のつくる毒ガスで人は生きていけません。

 20キロ圏内は腐肉のぬかるみです。ぬかるみは10mの深さがあります。


 「神はダンジョンから半径200キロを太陽の炎で焼くつもりです。このまま放置すれば、この世界は死病が蔓延して、死に絶えるでしょう。虫一匹、ねずみ一匹、生き残ることは出来ないでしょう。いま人間に出来ることは、250キロ圏内の外へ避難することです、さあ、王よ、逃げてください、時間がありません」


 ここにいる全員が精神魔法で、先生の崇拝者です。たちどころに、先生の言葉はすぐに実行されました。同時に240キロ圏にバリアが張られました。ツキヨミは全力でダンジョンから200キロ圏を核融合で燃やし尽くしました。太陽の熱です。何もかも燃え尽きます。炎は成層圏まで上がり、地下80キロから始まった核融合はダンジョンの周り160キロの物質を蒸発しました。このままでは王国は国の大半を失います。ツキヨミは蒸発した物質を再度土に戻し、元の地形に形状を整えました。しかし地脈は元に戻せません。


戦いは思わぬ形で、終わった。若し、神である月読命が人間に絶滅するまで虐殺を繰り返せと、幻影魔法を掛ければ、いまと同じ結果になったのか。

 ダンジョンの神は、幻影魔法を知らなかったのか。知っていたとして、交戦中の神の虚像の前に、余裕がなかったのか。

 ツキヨミにダンジョンの神と同じことが出来るか? 全てのダンジョンの作成者がツキヨミなら出来る。しかしツキヨミはダンジョンを作成出来ない。

 ダンジョンの管理人を片端から、自分の奴隷にするなら出来るのか、ダンジョン間に転移陣を設置すればできるのか。


 先生と妖精は馬車で200キロ圏内を隈なく調べた。人間の暮らしていける場所に戻ったのか。核融合による影響はあるのか。辺り一面剥き出しの土であった。大気圏まで蒸発させた岩石や土を、再び構成し直し、戻したのである。


 ツキヨミと先生、妖精達は馬車に乗って、かって先生の住まいがあった場所へ、帰っていた。国より広大な土地を褒美として頂いた。馬車の旅は気が重かった。広大な大地を旅するものは、今のところ、一台の馬車だけであった。まだ王都の避難民は、恐怖を克服出来ていない。領主も避難民を残して、状況の分からない領地に、生活の基盤を移す事に、躊躇している。


 かっての先生の住まいに着いた。見渡す限り、剥き出しの大地。先生の土地は何十倍に広がったが、緑がまったく無い。ツキヨミは土魔法で、住居を作った。心にイメージして壁を立ち上げていく。赤レンガ状の壁が見る見る、土の中より、立ち上がって行く。錬金術で鉱物資源を抽出精錬、溶解加工して、建物の骨材を作る。個人用空間収納庫から木材を取り出し、複製魔法で量産、反重力魔法で屋根材を屋根に運ぶ。先生、妖精たち全員で屋根材を張って行く。陽も傾いてきた、今日は建築途中の建物の中で仮寝である。


 みんなくたくたである。無人の大地の中での作業であるが、汗をかくことは楽しい。仮の食事であったが、火を起こし暖かい食事は疲れを和らげる。


 夜は布団の中で、先生を中心に抱き合って寝た。一塊になっていると安心感がある。オートマタ馬が常に周囲を警戒している。ツキヨミは建築途中の建物を見て、人々が不信感を抱かないか、思ったが、直ぐに考え過ぎだと思った。全員に精神魔法を掛けている。


 ツキヨミは先生が頂いた領地の中に、山がある事に注目して、深く大きな溜池を土魔法で作った。その他にも計画的に、多数の溜池を作り、土地の勾配を利用して、雨水の確保を推進した。また溜池につながる灌漑用水路を計画的に作った。将来の農業、酪農のためである。ただ雨が降らないため、いまはただの窪地である。


 恐怖感のためか、一人も戻って来ない。先生と妖精とツキヨミだけの生活が続いた。寂しいがそれなりに、楽しかった。何日か大雨が続き、緑が無いため、いたる所で、水害が発生した。ツキヨミの作った灌漑用溜池は十分な水を蓄えた。ツキヨミは蓮華草と菜の花の種を溜池の周りに蒔いた。清い水と青空と菜の花の黄色が相まって美しかった。また植林のための、苗木を植えた。春の桜の木が溜池周りに、美しく咲くことを夢見て。


 さすがに、これ以上の作業は、人手を要する。全員で王都に様子を見に行く事にした。久しぶりに人々に会える。馬車は道なき道を正確に進んだ。森が無いから、小動物も居ない。しかし、何度か降った大雨のため、雑草の種が流れて来たのか、大地には緑の群生が、育ちはじめていた。






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