40
防衛隊幹部のおかげで、難無く王都に入れた。領主様の居場所を聞くと、王宮内に部屋を借り、詰めているという。お会い出来るかと、聞くと、防衛隊幹部は、領主様の方がダンジョン近くの情報を知りたいだろうと、すぐに取り次いでくれた。
領主は少し痩せた様だ、心労が重なっているのだろう。「領主様、子供たちがいるもので、遅くなって、いま王都に着きました」「先生、無事で何よりです、いままで、ダンジョン近くに?」「はい、ダンジョン近くで気を失い、なんとか住まいの方に戻れました。子供たちが居るので、脱出に手間取りました」先生は話しながら、精神魔法で領主を味方にした。
領主が味方になったお陰で、国王、重臣たちの全てを味方にできた。中堅幹部にも、一人一人、精神魔法を掛けた。いま先生の会えない人間はいない。しかし、先生の目的は神との戦いです。神の計画している人間大量虐殺計画を、阻止しなければならない。とりあえず神の計画を人間側に周知して、戦いの準備をしなければ、ならない。
王宮の会議にツキヨミ、先生も呼ばれた。最後まで現場近くに、留まった者として、発言してもらいたいとの要請であった。会議は先生の発言から始まった。ツキヨミは会議の場に強力な精神魔法を掛けた。それは〔先生が語る言葉は真実であり、どう選択するのは、人間しだいであり、その結果も人間が負うことになる。〕といったシンプルなものでした。人間が戦わないと、選択すれば、ツキヨミは先生、妖精達と、逃げるつもりです。でも、人間たちの世界会議開催までは、先生とツキヨミの責任だと思っています。
「今回の魔物の暴走は神の仕業です。人間の9割を間引きするつもりです」
先生は王都の精神魔法師を恐れています。たとえ精神魔法師がいても、見破れないように自分自身に精神魔法をかけます。「私はダンジョン近くで、気を失しない、たまたま、敵対する神同士の話を聞きました。魔物の気配とあらぶれる神の息吹に、恐れ慄きながら、聞こえたのです。人間を虐殺すると。いまダンジョンでは、神同士の近親増悪による殺し合いが、行われています。」
先生の短い報告は、会議を恐怖に落としいれた。先生とツキヨミは領主の計らいで、会議を退席出来た。「今日はありがとうございました。もし、また聞きたい事があった場合、呼び出しますから、よろしくお願いします」
防衛隊の兵士に送られて、避難民が集まっている、宿舎についた。顔なじみも多かった。病人が多くいた。けが人も多い、直接魔獣と戦わなくとも、これだけの避難行を行なったのだ、焦燥しない方がおかしい。
先生は張り切った。ポーションや薬草、治癒魔法によって、病人の治療を開始した。馬車に積んである薬類は十分にある。瞬く間に先生は「聖女」のふたつ名を民衆から与えられた。
先生は領主と国王に面会している。王都の空き地で、栽培期間の短い作物を作ろうと、栽培の許可を得るためだ。国王の許可はすぐに下りた。避難民を使い、明日から畑仕事です。そのときポーションの作成を頼まれた。材料を採取するため、少し王都を離れます。国王は快く許可した。
「避難民の扱いに、困惑している見たいですね」ツキヨミの言葉に先生は「出来るだけの事をしましょう。出来ない事は出来ないのだから」外に出て、郊外を開拓しようにも、神と虚像の戦いが終われば、王都に魔獣がその日の内に、雪崩れ込むだろう。ツキヨミの出来る転移陣が、ダンジョンの神に出来ない分けがない。王都の城壁すらも先生には、木っ端にみえました。
「精神魔法には、使い魔の魔法があります。先生」ツキヨミは先生に語りかけます。「無理です、魔獣の雰囲気に飲み込まれて、小動物達は震え上がるでしょう」先生はツキヨミが何を言おうとしているのか、分かるようです。口惜しくツキヨミは唇を噛みます。いざとなったら、先生とこの子達を連れて逃げよう、先生に何と思われようとも。涙が出そうです。
世界に国王の使者が出たのは、ツキヨミの報告から次の日です。はたして信じてくれるか、どうか。




