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今日は妖精達にとって、待ちに待った薬草採取の日です。お弁当を持って、馬車で行きます。ツキヨミと先生と妖精達は薬草の群生地帯を、探しながら行きます。
猪が馬車に突っ込んできた。馬はあらかじめ、猪の動きを予測しています。高性能全方向感知器が、だいぶ前から猪の行動パターンを解析し、電撃バリアを張ってます。猪はバリアに当たった瞬間、反対方向にすっ飛び、気絶します。
全員が出て来て、猪を見ます。意見が分かれます。猪に治療を施せと言う、可愛らしい妖精。引きずって、お昼に食べてしまいましょうと言う、鬼のような妖精。連れて帰って、飼おうと言う、愛らしい妖精。連れて帰って、夕飯にしましょうという、育ち盛りの妖精。
先生が妖精の顔を、一人ひとり、見ます。「意見が分かれたから、猪にききましょう」先生は気絶している猪の心に声を出して問います。「あなたの処分について、意見がわかれています。あなたは私達に、食べられたいですか。それとも、私達に飼われたいですか。それとも、逃げたいですか」残酷な問いかけですね。逃げたいのに決まってます。さらに先生は無言で警告します。「早く逃げなさい。食べられちゃうよ」猪は急に目を覚まし、一目散に逃げ出しました。
手間取りましたが、出発です。湿地帯を馬車は進みます。道もありません。しかし、湿地帯には馬の足跡も、車輪の跡もありません。馬は反重力魔法で空中を走っているのです。馬はツキヨミの考えを読みます、ツキヨミも馬の心を読みます。「ツキヨミさま、ありました。薬草の群生です」馬が思念で、情報を伝えています。わかるのはツキヨミと先生だけです。「みなさん、目的地に着きました、薬草を集めてください」先生は妖精達に、長靴を履かせ、馬車から降りるように、命じました。妖精達は、喜んで馬車から降りて、泥んこになりながら、薬草を採取します。
「お昼ですよ、みんな集まれ!」先生の号令が響き渡ります。泥んこが、薬草の籠を持って集合します。馬が洗浄魔法で一人ひとりを洗います。薬草も錬金術で乾燥させます。足場が悪いので、移動です。丘の上で車座になり、お昼です。先生の食堂で、みんなで作ったお弁当です。
お昼のお弁当が終わって、昼寝の時間です。先生とツキヨミを囲んでお昼寝です。先生はみんなと手をつないで、お昼寝が一番幸せです。
洞窟のコケの採取です。妖精が洞窟の奥まで行きます。光コケの一種で、淡く光っています。上級ポーションに使います。あまり取りすぎると、次に来た時、採取できないことがあります。みんなで洞窟の奥にこもって、ファンタチックな雰囲気にしたっています。
帰りは疲れて、全員で寝てしまいました。馬車は馬の方向探知機で方向を定め、無人で進んでいます。夕方には帰れるそうです。
最近、新しい錬金術師が育ちません。錬金術の条件に、精霊と呼ばれる妖精との契約があるのなら、むりです。妖精は全員、先生のお手伝いです。最近病院が繁盛しています。ダンジョンの魔物が増えているそうです。スタンピードがあるのではないか、患者がうわさをしています。
ダンジョンの入口に、領主様の兵隊が集まっています。責任者の若い隊長が指示しています。冒険者も腕利きは、全員集合です。先生と妖精スタッフも軍の依頼で集合です。仮設のテントを張り、まさかの事態に備えています。スタンピードを心配しているのです
。
領主様が、先生のテントを訪れます。「先生、今日はありがとうございます、スタンピードが始まろうとしています」切迫した気配が流れます。ツキヨミも心配しています。この気配は、只事ではありません。
未来予測、ツキヨミは予想できます。いまの状態でスタンピードが起これば、街は全滅します。ツキヨミ一人なら、幻影魔法で対処する自信があります。そしてそれを成し遂げたら、ツキヨミは危険者と見なされて、この街には居られなくなります。迫害され、追われ続ける未来がみえます。
ツキヨミは思念でダンジョンの管理人を、さがします。もう時間がありません。先生と妖精達との楽しい生活が、終わってしまうのです。何とかしないと、焦るばかりです。最悪、先生と妖精達を転移陣で助けます。ほかの人間を助ける事は、出来ません。助ければ、魔女としてツキヨミに、石つぶてが降りそそぎます。見えるのです。ツキヨミには。




