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イオンやレイクと分かれて船の上です、出雲港に寄港して、分身たちに、会いに行きます。出雲大社はツキヨミが造った、最初のおおやしろです。妹たち、弟たちに、別れを告げる、最後の機会になります。もっとも半数はダンジョンのおおやしろまで、ツキヨミに動向してくれます。ツキヨミの兄弟姉妹は、みな、おおやしろの、神官・巫女になります。エベレストの天照様のおおやしろは、場所が場所だけに、どのように運営するか、神官・巫女たちと協議になります。もちろん、転移魔法を三つのおおやしろに、設置しています。
ツキヨミは、安心と物悲しさと、これから帰る時空の狭間について考えています。影丸と出合った国は、師範代や、かおりと出あった国でした。むかいむかし、接待で出あった苛められっ娘の神様の神社の隣で、芸術学園を開校して、後進を育てた日々、影丸がいなければ、与えられない日々でした。あの国は主様とえにしを結べるのでしょうか。
ツキヨミは虚空の中に思いを巡らしています。影丸は私にとて、弟のようなもの、これからも、弟であって貰いたい。十勇士は、弟の友達のようなもの、これからも、友達でいて欲しい。かおりは私の友達、別れが近づいたとき、夜、ベッドで手をつないだまま、離さなかった。その温もりを、いま
忘れない。
ツキヨミは物語が好きです。古の光源氏の物語もすきです。とわずがたりも好きです。伊藤左千夫の野菊の墓もすきです。多分、ツキヨミが火のカグツチノカミに持った感情は父性に対する感情、或いは一つの技術に命を懸ける、不器用な男に対する愛情であったかも知れません。
しかし、この国で出あった市長は、ツキヨミに取っての、初めての異性でした。語ることも無く、体を重ねることも無く、別れるのです。覚悟の上です。
皆既月食のあと、朝方、新聞を配りながら、西の空をみます。有明の月と言いますか、満月です。これから地平線に沈んでいくのでしょう。もう生活薄明、月の下弦が地平線に掛かるころ、太陽は高く出ているでしょう。
ツキヨミは日々成長しようと、小説も読みます。漢字を忘れ、文章を忘れます。しかし人の小説を読んで、自分には書けないと、気がつきます。駄作でも365日書けば、何か気がつくのではないかと思います。しかし、その高みに到達できると、思わなくなります。
出雲港では、おおやしろ付のオートマタ達が、迎えにきてくれました。馬車に乗り、快適な道中です。もちろんタイヤは、平成30年のタイヤより、進化しています。馬車はあくまで、ツキヨミや影丸のこだわりです。馬車に原動機は付いていませんが、トイレは付いています。汚い話ですが、ダンジョンには、スライムという、生物がいます。この海月みたいな生物を、トイレの汚物槽に入れておくと、汚物を分解してくれます。トイレの悪臭もしません。馬車の客室とトイレの壁は、薄い板2枚だけですが、板と板の間に亜空間を設置すると、防音になります。なぜ防音になるかといいますと、特許申請書によりますと、アキレスと亀の競争に関わる、難しい理論です。亜空間には時間が存在しません、あるのは距離だけです。亀がハンデで先行すれば、アキレスが亀と同位置に着くころには、亀が少し先を進んでいます。これをゼノンの無限亜空間の理論と言います。この理論を進めますと、永久機関となる、素晴らしい理論です。
何日かして、出雲のおおやしろに、就きます。神官たちが総出で、迎えてくれました。みな美男、美人です。イオンやレイク達もそうですが、ホモンクロス達は人間の理想形を追っています。足が長いのです、頭が小さいのです。女は胸が大きいです、腰がくびれています。若いまま、寿命を迎えます。200歳から400歳ぐらいだと言われています、本人の寿命の選択によるものです。死ぬときは光となって分解します。羨ましいですね。
出雲に近づくと、大社の大神の神威により(市長さんの神威なのですが、場に関連付けられています)荘厳な雰囲気になります。主祭神はオオクニヌシノミコト様です。そこに並んでツキヨミノミコト様が祭神として祭られています。
出雲にいる全員を集めました。ツキヨミにとって、みな弟、妹、子供です。エベレスト山頂のおおやしろの事、天照神の神託の事、やがてこの国の首都となるイオンクやレイクの街の事、そしてダンジョンの
おおやしろの事、いろいろ、話さなければならないことを、話し、協議しました。
アマテラスオオノカミの大社は、神官、巫女が4人、半年交代で出雲から2人、ダンジョンから2人詰める事になりました。出雲とダンジョンの大社は8人、一年毎に4人づつ、入れ替わります。なかなか大変ですけれども、オートマタの神官・巫女もいるので、大丈夫でしょう。
すべての神事が終わって、ダンジョンの大社に、4人の神官、4人の巫女と共に、大型帆船で向います。本当に冒険旅行は、終わります。
出雲港からダンジョン港までの間に、影丸が調査した海底洞窟があります。マーメイド隊の進めにより、全員で神秘の洞窟を見学します。
マーメイド隊が先行して、青の洞窟と名付けられた、海底洞窟の案内です。海水が光を帯びて、七色に変ります。プランクトンか、潮流か、洞窟の壁によるものか。
ダンジョン港まで、大型帆船が到着しました。馬車で三日の距離、影丸とオートマタによって、作られた舗装道路と、宿泊所は、快適です。古代遺跡の街に到着して、すぐに亜空間のダンジョンを開放しました。ダンジョンは日々育っています。あと3年で、古代遺跡の街も、市長さんの都市も、ツキヨミのおおやしろも、ダンジョンに飲み込まれます。ダンジョン管理人の愛と、副管理人のラゲートがダンジョンに潜って行きます。
月読命大社に8人の神官・巫女が着任しました。市長さんは、意志を持つ虚像5千人と共に、大社に参詣します。空には航空機10機のアクロバット飛行です。吹奏楽団の行進もあります。
ツキヨミは時が来たのを感じました。また時空の狭間に飛ばされるのです。




