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このまま、陸路を次の港まで、進みます。自然遊歩道設置隊が道路工事を、完了させてくれたおかげで、馬の旅行は快適です。市長さんが話しかけてきます「イオン開拓長が来てくれました」「はい。私の上司だった人です。この星の指導者をやってもらいます」
「いま開拓している土地は、豊饒な大地です。河川は深く広い。出雲港から直接大型帆船を、寄港出来る。川の支流を整備すれば、運搬も大量に出来る。ここを都にすればいい」市長さんの言葉は理にかなっています。
「開拓長に伝えます。神の神託のあった場所、疎かに出来ません」ツキヨミは考えます。この大地は主様の物になった。大陸国家も主様の物になった。天津国の惑星は主様のお住まい。イオン開拓長やレイクは、この国に安住して、国家をつくる。
私も少しは役にたっている。ただ時空の狭間に流される私は、何の役にも立っていないのでは、ないかと思っていた。私のやった、すべての事が。実を結んでいる。
自然遊歩道は、二三時間前に出来たばかりの、遊歩道です。この道を通るのは、ツキヨミ一行がはじめてです。大きな岩に突き当たりました。洞窟になっています。騎馬のまま進みます。馬は、騎馬で進める道と、進めない道の区別が出来ます。乗り手が収納庫の所有者の場合、あらかじめ、自分を収納する意思が、あるかどうか、確認をもとめます。言葉ではありません。思いで伝えるのです。
自然の洞窟です。横道も幾つもあります。道に迷わぬよう、淡い光りを放つ小石を、敷き詰めています。きれいな舗装です。壁には山小屋風のレトロな照明器具が、綺麗に並べられています。ツキヨミは、冗談を装い、市長さんの腕に、腕を絡めます。バージンドーロを歩いているみたいです。
横道に入ってみます。馬は下りるように即します。人間しか歩けません。馬は入口で待機します。横道は長く、段々深くなっています。ツキヨミと市長さんには、暗闇は関係ありません、いつのまにか、市長さんはツキヨミの手を取り、エスコートしています。少し広がった空間の下は、淡い光を放つ地底湖です。足場は少ししかありません。どうしても、体が密着します。市長さんの手の温もりが、嬉しいです。密着した体が恥ずかしくって、顔が赤らみます。恥らう顔を見られないように、下を向きます。
馬は待っていて呉れました。市長さんと、ツキヨミの小冒険は終わりました。二人には、何の進展もありません。
洞窟を出て、すぐに絶壁にでます。はるか下のほうに、海が見えます。自然歩道は断崖の細い道を通ります。まるで天空の道を歩くようです。変化のある長い道です。何時間も馬で歩み、途中で広場があります。洞穴があり、天候不順なら雨宿りができます。奥行きがあり、整備すれば宿泊所として、つかえそうです。ここで昼食をとります。メイド隊が食事のあと、音楽を奏でてくれます。
また数時間、馬を進ませます。やっと海岸につきます。港はすぐそばです。ツキヨミ一行は、誰も港を知りません。造られたばかりです。
綺麗な港です。大型客船を寄港できる大桟橋が、設置されています。すでに大型帆船が入港しています。旅行は終わりです。イオン開拓長の街を経由して、出雲に行きます。ツキヨミの分身と最後のお別れをして、遺跡の街で、最後のお別れの時を待ちます。
イオン開拓長の街は、ほぼ出来上がっていました。綺麗な街という印象が、みんなの共通した認識です。大きな亜空間収納庫が、レンガ造りの倉庫に設置されていました。オートマタ馬が多数います。この街まで、外海を経由して、直接きました。大型帆船の通行に、なんら不便がありません。
ここは、ホモンクロスの国、人間型オートマタとの確執は起こりにくい。しかし大陸国家のようなオートマタの国では、人間との確執が起こりやすい。いつ人間による抗体ネットワークが作られ、内戦、或いは人間との戦争が、行われるか、不安が尽きない。そういえば、アンとスージは元気だろうか。
ツキヨミはイオン開拓長に問いかける「大陸国家の事ですが、アンとスージは、どうしていますか」「元気ですよ、大陸国家の大統領と副大統領で頑張っています。ツキヨミ様の分身も元気です、おおやしろは、人間族の観光地として、世界で有名です。すでに天照様の国ですから、オートマタを侮る人間は、いません」ツキヨミは安心しました。




