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 午後の行程は太古の池で終わりです、もうすぐで到着です。馬の鞍にはエアクッションがついていて、尻が痛くなることもありません。太古の池では忍者隊の望月六郎が宿泊所の設置が終わって、いまは食事の下ごしらえをしています。この池はときどき発光します。衛星写真で確認ずみです。


 到着しました。ゆっくりなペースなので、誰も疲れていないようです。太古の池はツキヨミのネーミングです、神が付けた名前なので、きっと意味があるのでしょう。市長さんは愛ちゃんを気遣っています。「愛、疲れたかい」「おとうさん、大丈夫!」お馬さんが好きなようです。


 管理人さんはこの池を見て、不思議な興味をもちました。心がシンクロする。管理人さんは愛ちゃんを見た、”あなたは何も感じないの、この池を見て” 愛も真剣な眼差しで、池を見ます。テレパシーではありません、管理人さんの心が愛に感応したのです。伝える意思がなくとも疑問は伝わります。ダンジョン狼がふたりの間に入って座ります。影丸が結跏趺坐して精神を統一します。なにか一生懸命探っているみたいです。ところで、ツキヨミは? ツキヨミは3人が興味を持って探査しているのに、私がしゃしゃり出る必要はないとばかり、望月六郎の作る料理の味見をしています。市長は気にしています、娘の愛ちゃんの表情が尋常じゃありません。


 「六郎、この山菜は?」ツキヨミの質問に、「この池の周りに、多くの山菜があります、毒味はすませてあります、ご安心下さい」と答えた。山菜の素朴な味が好ましい。運動したので、お腹が鳴った。「管理人さん、あした、池に潜ろう、ここは何かある」ツキヨミの言葉に、3人は探査を解いた。


 旅のよるの料理は美味しいです。今日はバーベキューがメインです。メイド隊が甲斐甲斐しく支度を手伝います。話題はやはり魔獸に襲われたことです。狼の努力にみんな、称賛の気持ちを持っています。市長さんは娘を膝の上に乗せて、みんなと楽しげに話をします。愛ちゃんは食べることに余念がありません。気のおけない仲間たちといることが、こんなにも楽しいと、涙が出るほど嬉しいのです。


 メイド隊がコーラスを披露します。伴奏はオートマタの男の子です。歌は夜中まで続きました。ツキヨミはしの笛を披露しました。管理人さんはオカリナ吹きます、管理人さんの奏でる曲は、魔法によって誰の胸にも、深く美しく響き渡ります。


 その曲に感応されて池が騒ぎます、泣きます、光が辺り一面に躍り回ります。この池の異常さを初めて全員が認識しました。 影丸は池に飛び込み、池の底を目指した。何時間泳いでも池の底にたどり着けなかった。暗かった、もう夜だ、しかし水は澄み渡っている。泣いている、悲鳴をあげている。影丸は自分がうつつから虚無に流されているのを知った。戻れない、戻れないなら進むしかない。いつの間にか、水が無くなっている。女がいた。狂ったように笑っている。笑いはそのまま悲しみになっている。狂ったように泣いている。


 なぜか、影丸は管理人さんや、新しいダンジョンの管理人愛のことを考えた。もしかしたら、ここは古いダンジョンの、成れの果てではないか。


 影丸は女と会話をしたかった。何を考えているのか、思考を読もうとした。読めなかった。会話は成立しなかった。急に女の狂気に飲み込まれる恐怖を感じた、なぜ恐怖を感じる、自分の恐怖か、女の恐怖か、余りに長く時空の狭間で、独りで暮らしていた影丸は、女の恐怖など、何ほどの物でもなかった。精神が感応したか、強制的に感応させられたか。女にそれ程の力があるのか、それとも第三者がいるのか。深く精神を集中して影丸は女を見る。ここがダンジョンだとして、女が管理人だとして、ダンジョンの魔物を産むエネルギーは、女の悲しみか、狂気か、恐怖か。女を強引に、池からひっぱり上げたら、女は死ぬのか? ダンジョンは古い神が関わっているという、ツキヨミ様や自分とは異なる神、思考を重ねていると、ふと後ろに気配を感じた。ツキヨミ様がいる、管理人さんがいる、愛ちゃんがいる。佐助や才蔵や六郎がいる。


 影丸は女の精神深く潜ってみた。影丸は女の精神に潜ることの危険性を充分に知っている。失敗したら自分も無事には居られない、虚海に無限に漂う事に、なるかも知れない。しかしこの女のありようが管理人さんと、愛ちゃんの未来かもしれない。感情の波に翻弄されながら、女の心と自分の心をシンクロさせる。リアルな映像が流れる、音が聞こえる、女はダンジョンと共に生まれた。女の狂気がダンジョンを成長させる。寂しさ、悲しさが、やがて狂気を産む、ダンジョンの成長は、女の精神の崩壊から、下り坂になる。地獄界という、生命のありようがある、たとえば内戦でわが子を失い、なきがらを必死に抱きしめる、親や夫、肉親の全てを失って、なにも考えられない、命の発動が最低の状態のとき、ダンジョンは崩壊するのかもしれない。影丸は女の精神に潜ったまま、治癒魔法を注意深くかけた。


ツキヨミは、空間収納庫から出したマーメイド隊3人に、女を保護するように命令した。女はあがらいもせず、マーメイド隊に、連れられて、宿泊所の医務室のベッドに横たわった。体はメイド隊によって清められ、ツキヨミと管理人さんに治癒魔法を注意深く、弱く、長時間かけられた。魔法エネルギー体マナを薬液に薄めて点滴をした。市長の娘愛も、心配そうに女を見ている。


 池はマーメイド隊3人に、徹底的に調査された。やがて、薄明の真赤な空が東の空を覆い、太陽が地平線の上に顔をだす。探検隊全員が東天に向って感謝の挨拶をする。急に騒がしくなる。寝具の片付け、洗面、歯磨き、食事の準備。

 そして朝食の準備ができました。


 メイドがツキヨミ達に、「食事の準備が出来ましたが、どういたしますか?」遠慮がちに聞く。交代で治癒魔法を掛けましょう、長丁場になります。魔法が使える者は全員協力をお願いします。


 朝の食事はバイキングです。みんな元気いっぱいです。この池で3日間の調査を予定しています。マーメイド隊の3人の水着は男性冒険者に、人気があります。市長さんが幸せそうな顔をしているので、愛ちゃんに蹴られました。


 この辺りの地形を、すべて記録します。3D記録機で詳細まで撮影します。材質から、組成まで、すべて再構成、出来ます。もちろん、マーメイド隊のフィギュア人形の作成も可能です。3D記録機には透過機能がありますから、マーメイド隊そのものの作成も可能です。


 少なくとも、ツキヨミと管理人さんの分身として作り、愛に与えたオートマタは、素材鉱石、或いは素材に加工できる植物があれば、たとえ身一つで未開の惑星に置かれようとも、何十年の時間をかければ、マーメイドオートマタを造るでしょう。


 冒険旅行は遊びかも知れない、遊びも真剣に頑張れば、目的になる。いまの自分の技術のすべてをかけて、冒険し記録し、この星のため何かを残せれば、それで良い、達成感がすべてなら、虚しいか? ツキヨミは星を去るとき、いつも考える。


 女は目に見えて回復した。精神も安定してきた。女の健康状態が回復するにしたがって、池の様子に変化が表れた。眩しい程の光をはなっている。ダンジョンが復活するのか。


 愛と管理人さんは、女の傍から離れない、意識が戻ったら、いろいろ聞きたいことがある。すでに点滴は外されている。管理人さんは精神魔法で、女の思いの中に入り、優しく語りかける。何時間も、何時間も。


 探検隊のみなさんは、池の変化に驚いています。マーメイド隊は嬉々として、調査を楽しんでいます。変化を調べるのは楽しいものです、どんな発見があるか、わくわくします。


 マーメイド隊の体内には、あらゆる調査、分析機器が内臓されています。眩しい光のなかでも、真の暗闇のなかでも、全てがわかります。地図を作ることも出来ます。大海原に定点を3箇所定めてもらえれば、2000年代の船乗りが見たこともない、海図を作って見せます。外科手術もできます。船舶には法律で、医師を一人置かねばなりません。マーメイド隊がいれば、事たります。


 此処彼処に、古代魔法具が散らばっています。此処にも人間が居たのでしょうか。それとも人間がいなかったから、ダンジョンは滅びたのでしょうか。それならダンジョンは、人間がいるから造られるのでしょうか。市長さんは考えます。



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