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市長さんにとってダンジョンの幼児は、大切な宝物です。立派な管理人になるように、都市をあげて応援するつもりです。ツキヨミさんと市長さんは、これからの事を、相談しています。市長さんは、父親になった気分です。そう言えば幼児に名前をつけました。愛ちゃんと名付けました。
「ツキヨミさん、亜空間の電子頭脳と都市との関連付けに、愛ちゃんを加えることが出来ますか」「どの様にしたいのですか、市長さん」「私にとって、娘の愛の成長が第一です、都市はその為の手段に過ぎません」「つまり愛ちゃんを都市の中心に据えたいのですね、市長さんは」「そうですが娘の行動をしばりたくもありません、ときに登山や海水浴も楽しみたいでしょうから」「なら、都市機能だけを、娘さんを中心に展開したらどうでしょう、一人のときも隠れて護衛を付けられますし、友達も与える事が出来ます、自然豊かな場所に小学校を建築するのも良いですね」「娘の愛に友達を与えることは出来ますが、後で実態を持たない友達と分かったとき、傷ずつける事に成るかと思うと心配です」父親の市長さんは大変です。
「それで、どの様にしたいのですか、市長さん」「ツキヨミさんと管理人さんの分身をオートマタで作ってもらいたいのです、勿論お礼はします」「しかしそれでは娘さんの成長に、合わせられません」「娘は成長の限界を外見17才の美少女に、固定したい様です、私もその方が嬉しい、この姿のまま何時までも、父親の威厳を保てる」「17才ですか」「ツキヨミさんと管理人さんの、いまの外見年齢を越えたくないのです、いつまでも姉であって欲しいのです」
ツキヨミはオートマタの製作を、影丸たちに指示しました。すでに影丸忍軍はツキヨミの持つ、技術のすべてを伝授してあります。オートマタはすぐに市長さんによって、市長さんの娘の愛ちゃんに届けられました。このオートマタには、互いの体を修理することもできます。ロボットを素材鉱石の段階から作る技術も、それを補助する魔法も内蔵されています。オートマタとマナ魔法結晶鉱石を置いた亜空間を、関連付けてありますので、マナ魔法エネルギーのない世界でも、魔法が使えます。
市長さんのお礼は電子頭脳でした。忍者隊が一生懸命、戦車を幻影魔法で作ろうとして、頑張っているのを、知っていたのでしょう。これがあれば市長さんの都市と、同じことが出来ます。ツキヨミ達が時空の狭間で展開し、拠点としている亜空間に置けば、絶対無敵です。
ダンジョンの愛ちゃんは、ツキヨミと管理人さんの分身オートマタと一緒に寝ます、もう管理人さんを煩わせる事はありません。市長さんもお土産を持って、毎日来ます。
市長さんはツキヨミが好きでした。ツキヨミも市長さんが好きです。しかし、口にすることも、形にすることもありません。ふたりですごす時間をただ、ひたすら大事にしています。音楽が好きで都市の芸術劇場のホールで、交響楽団の奏でる交響曲を夢心地に聞きます。都市美術館で西洋画や日本画の鑑賞をします。市長さんの解説を聞くのがすきです。登山もしました。忍者隊が作った二人乗りドローンに乗って、海にも行きました。管理人さんに頼んで、亜空間のダンジョンの青い水中の空間で、何時間もふたりでいました。ツキヨミは、しの笛を吹きます。青い水の中は,しの笛が似合います。お囃子をふくと、クリアな水が愉快そうに飛び回っています。
市長さんとツキヨミと管理人さんと愛ちゃん、総出で冒険旅行を企画しました。愛ちゃんはダンジョンを一時的に亜空間に収納して、わずかにずれた次元に置き、自分と亜空間を関連付けます。長時間、愛とダンジョンを、切り離せば、愛は死にます。しかしダンジョンを亜空間に閉じ込めることが出来るのは、いまだけです。今後飛躍的にダンジョンは成長します。個人の力で亜空間に閉じ込める事は、出来なくなります。
まだ、ツキヨミが時空の狭間に跳ばされるまで、2年あります。残された期間を、冒険旅行に注ぎ込むつもりです。上空を無人探査機を使って、地図を作成しました。市長さんも、都市の回りだけしか、わからないそうです。当然道路もありません。ツキヨミは何個かGPS衛星を打ち上げました。詳細な地図と、行きたい場所をピックアップしました。ツキヨミの古代遺跡が、冒険旅行の本部です。影丸が優秀なので、短期間で準備が出来ました。
大型ヘリコプターで港に向く地形の場所に、造船のための資材を運びます。筧十蔵の指示でロボットたちが帆船を作成します。すでにツキヨミ達は本部を出発しています。冒険者達が到着する時に合わせて、完成するつもりです。帆船はツキヨミの指示で昔、作成していますから、問題ありません。
ツキヨミ達、冒険者の乗り物はオートマタの馬です。悪路も問題なく進めます。外観も見事な名馬です。乗り方は普通の乗馬と同じですが、乗り手の考えている事を、馬は一瞬で判断して進みます。体温もあります。遭難したとき馬は横たわることが出来るので、馬に抱きつけば体温を奪われずに済みます。食事も、休息も必要ありません。
愛ちゃんは市長さんと一緒の馬です、勿論ツキヨミや管理人さんは別々の馬です。ツキヨミの使い魔の狼が動きまわり、頻繁に情報を交換しあっています。先頭は才蔵です。最後尾は佐助です。「ずいぶん、大がかりな探険隊になりましたね」市長さんの言葉に、喜びの感情が伺えます。2年にわたる大冒険が始まりました。
密林を苦労して通り抜けます、やっと広い場所にでました。はるか彼方まで、山々が続きます。お昼です。メイド隊ががんばります、勿論男の子も頑張ります。幾つかのテントを張って、オートマタ10人が作った料理は、美味しいです。素人料理ではありません。有史以来の味とレシピがオートマタにはあります。食事が終わり、休息の時間もあっという間に終わる。「出発です!」影丸の大声が響く。
魔獸が出て来ました。30匹近くの大型魔獸です、さあ大変! 使い魔の狼が応戦します。戦いはダイナミックです、吠えているだけの狼など、一匹もいません。みな影丸が育てた時空の狭間の忍者狼です、略して忍狼といいます。良い戦いです。狼は3次元的に楽しんで、戦ってます。市長さんたち、興奮して観戦しています。突然魔獸は崩れて逃げ出します。「はい、アトラクション終わり、出発しますよ!」また影丸の大きな声。海までまだ20日以上あります。




