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 ツキヨミは気が重かった、自分たちをはるかに凌駕した能力を持つ、市長に助けを求められている。へたに市長の言葉に乗ったら、それは自分たちが、都市の奴隷になることを意味する。管理さんの気持ちは分かるが、ハードルが高すぎる。


 管理さんの気持ちと、影丸の気持ちと、市長の気持ちの共通点は孤独、3人とも「ともに連れていってくれ」とツキヨミに訴えた。いや、市長の言葉は違うが、根底に流れる意味は同じものだろう。自分も影丸に出会わなければ、一人で時空の狭間と異世界の間をさまよう、旅人になっていた。同じか。


 ツキヨミ忍群は全員が、虚像を出すことが出来る。ただ、ツキヨミと影丸以外は、戦いに命を掛けた瞬間、瞬間に自分の分身として出せるだけだ。もちろん虚像の攻撃は有効だ、はじめてツキヨミと佐助、影丸と才蔵が魔族の国で戦ったとき虚像の攻撃に驚いた。攻撃をよけなければ虚像に殺されていた、幻影魔法といわれる精神魔法である。魔法のもとになるマナエネルギーの消費を最小限に抑えた殺人技である。


 幻影魔法では他人格を作ることは出来るが、人格を維持することは出来ない。果たしてそうだろうか、人格を作るのは術者の心の中、それを殺し合いで対峙する敵がかってに、術者の動きを先読みしようと、術者の心のイメージを無防備に呼び込んでしまう、イメージに暗示を掛けておけば、相手の心の中でイメージは勝手に増幅して、術者の思い描く通りになる。術者の能力が高ければ、イメージは実在の人間と変わりない。場合によっては条件、時間に関連付けてイメージを発現できる。


 ツキヨミは、訓練所に全員を集めた「これより他人格の虚像を出現させ、出来るだけ長時間、出現させたままにする訓練をする」ツキヨミは話を続ける「これには全員参加してもらう、管理さんは魔法の基礎から、オートマタは精神魔法の防衛機能を少し緩めて、始め!」


 管理人さんの指導員は花子があたりました。最初は難しく、思うような結果が出ませんでしたが、花子の献身的な指導のおかげで、精神魔法が使えるようになりました。彼女はダンジョンの管理人です。潜在能力は才蔵や佐助の比ではありません。それに管理人さんが夢中になったのは、精神魔法に癒しの効果を見たのです。いにしえの地球では臨床心理士という資格があり、取得者は癒しの能力を持つという、特に百里眼というふたつ名を持つ岬美由紀先生は管理人さんの生涯の憧れです。


 忍者隊はすでに集団感応精神魔法を、先の訓練で習得済みである。自分以外の他人格を作り、出来るだけ長時間、出現させたままにするという課題は、さすがに難しい。しかし都市で相手の作った幻影他人格を敵として戦い、その結果苦い体験をしている。出来なければ、都市を避け続けなければならない、忍者の矜持が許さない。


始めは1対1の戦闘で対峙する瞬間、他人格を幻影魔法で作り、虚像を入れて2対2の戦いを展開した。長時間の戦闘である。


 それが出来るようになると、虚像の数を少しずつ増やしていた。虚像同士での会話も可能にした。訓練場の忍者隊戦闘訓練は虚像の数が徐々に多くなり、さながら集団戦闘訓練と変わっていった。



 ツキヨミと管理人さんは市長を訪ねた。定期的に都市へ遊びに行くのは、市長の要請である。都市の女性案内人が出迎えてくれた。定期訪問が友好関係の維持の為の行事となった。洒落たレストランで市の職員と歓談しながらの食事は楽しかった。ツキヨミは市長に話しかける。「市長さんを、私たちの街まで招待したいのですが、無理ですか」


 警察署長が難しい顔をする。そして警備の都合で行けませんと断る。ツキヨミも無理強いしない。「出来れば、街をお見せしたかったのですが」

 市長は興味を持った。「署長、すぐ近くだし、行ってみよう」約束が出来ました。


 市長の訪問の約束は、古代遺跡の街に活気を与えた。遺跡を改造した舞台は、ツキヨミ自慢のものであった。舞台でツキヨミは巫女舞を舞うつもりだ。管理人さんはメイド隊を率いて料理のレシピに余念がない。忍者隊は虚像を動員したアクロバット、オートマタの男子は楽器を演奏するようだ。


 次の日曜日、市長が来る日です。歓迎の準備は出来ています。自動車が進んできます。WELCOMEの垂れ幕のしたを車が通過します。


 遺跡の舞台での、ツキヨミの巫女舞は見事でした。雅楽の演奏とともに、市長さんは、本当に楽しそうでした。忍者隊の虚像と実像のアクロバットも見事でした。オートマタ男子5人のクラシック音楽演奏も、素晴らしかったです。管理さんとメイド隊5人の創作バレエも美しかったです。これにはバーチャルリアリティーの技術も取り入れました。


 市長さんは管理人さんとメイド隊5人で作った料理に舌鼓をうっています。本当はここに泊まっていきたいみたいです。でも都市からあまり離れることは出来ないのでしょう。都市に戻ったら、次にツキヨミ達が訪ねて来るまで、無人の都市になるのでしょう。市長さんは亜空間につくられた電子頭脳の依代なのですから、虚像として消えます。


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