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市長のお願いにツキヨミは答えることが出来ませんでした。忍びと書いて刃の下に心と書く、確か昔、テレビで放送した隠密剣士のなかの忍者が言ってました、かっこいい言葉ですよね、猿飛佐助程の忍者が小市民になりさがる、この都市の魔力、ツキヨミだってダメ神に成りますよ。「近くの土地を開拓して住みたいと思います、たまに遊びに来ることを許して下さるとうれしいです」
ツキヨミの返事に、市長は複雑な顔をしていましたが、快諾してくれました。「それでしたら、近くに人間が暮らしていた街があります。今は誰も暮らしていませんが、なにせ人間が居なくなりましたから。それでもまだ利用出来るものがあるかもしれません、そこに住んで頂けると、この街にも近いですし、遊びに来るのに都合がよいです」
市長の教えてくれた街は、すぐに見つかりました。古代遺跡です。ツキヨミは忍者隊に命令しました。「猿飛佐助を斬れ」怖いですね、忍者隊はすぐに猿飛を囲み、抜刀の構えを見せます、居合術です、才蔵の本気の居合に、さすがの佐助も小市民ボケが一瞬で解けました。
古代遺跡には面白い機械や道具がたくさんありました。ツキヨミは管理人さんにお願いして、キャンプを引き払い、こちらに移動するようにいいました。管理人さんは女性なので、才蔵みたいに命令は出来ません。
ロボット100体を使って住居を整備しました。指揮は管理人さんです。畑も水田も作りました。水路も整備しました。ツキヨミの未来予測だと3年後にまた強制転移になります。でも管理人さんは手を抜きません、自分の理想とする街造りにはげみます。
「影丸さん、街の図面をひきなさい、古代遺跡との調和が大事です、古代ローマを意識しなさい」管理人さんは、時空の狭間でツキヨミとの麻雀で勝ち取った権利を拡大解釈しているようです。メイド隊5人は完全に管理人さんの部下です、
素晴らしい街が出来ました。もう誰も管理人さんの手腕を疑いません。古代遺跡のしゃれた会議室で、全体会議が開かれました。ツキヨミは市長との会談の様子を、みんなに話しました。どう思う、ツキヨミの言葉に、みんな考えこみました。
「都市との距離を保たないと、我々も都市に捕らわれ、おそらく自滅します」影丸の言葉に誰も否定出来ない。強力な精神魔法、相手にむち打ちの拷問を与え続けると、むちの音を聞くだけで体にみみずばれが、つくという。
管理人さんが言います「市長さんが可哀想です、私たちと折合いをつけて、ともに進む事が出来ないのですか」「どのように折合いをつける」ツキヨミの言葉に管理人さんは「私たちとともに、市長さんも旅立つのです」「3年後に市長も我々と共に連れて行けと言うのか」「そうです」管理人さんは、珍しく激してます。「市長さんは私と同じです、ツキヨミ様が助けなければ、誰が市長さんを助ける、誰も市長さんを助けられない」管理人さんは泣いています。
ツキヨミは何も言えませんでした、いま市長を助けなければ、全員の信頼を裏切ることになる、なぜ、こんな事になる。ツキヨミは分かりませんでしたが、一つだけ分かる事があります、都市に対抗するには、都市と同じ能力を持たねばならない。精神魔法で人を殺す能力か、或いは猿飛佐助ほどの忍者をわずかの時間に小市民に落とす、人間を知り抜いた能力か。他者、或いは社会から守られているだけの状態に、疑問を持たず幸福感・満足感を感じる佐助の不自然さ、思い出すだけで慄然とする。
しかし疑問もある、ロボット100体で都市に攻撃を仕掛けたとき、都市側は一万の軍隊を用意した。数は問題無いのかも知れない、市長の本体は電子頭脳である。人間とは演算の速さ、能力が違う。問題なのは人間の感情を有しない半自動型ロボットに、軍隊を認識させた事である。ツキヨミの直感が言っている、あのまま戦っていたら、ロボットが破壊されていた。神の直感である。




