ダンジョンの所有者
死んだダンジョンが再起動した。ツキヨミと影丸は目を丸くした。20Fで壁を壊し隠れていた通路が現れた瞬間、何が起こったのか。
ツキヨミは一瞬考えたのは、入口が塞がれていた未発見のダンジョンが隔壁が壊れ死んだダンジョンと一つになったのではないか、その場合、既存のダンジョンは生き返るのか?
「影丸、先に進もう」隔壁の破壊した狭い穴を通り、通路を進む、複雑に分かれた道を感のまま進む、照明魔法のため辺り一面が明るい。川があった。激流だ。浮遊魔法を使い、川を渡る。水が澄み切っている。川の先を追ってみたいが、いまは通路を進む。
魔物が出てきた、ダンジョンの魔物だ、やはり別のダンジョンと一緒になったようだ、殺せばアイテムがでってくるかな? ツキヨミはそんなことを考えていた。その考えを読むように影丸がナイフで魔物の首筋を斬った。アイテムがドロップした。30分そのまま進むと道が三つに分かれた。罠がある、「この罠は転移陣に続いている、引っかかってみたいですね」ツキヨミの言葉に影丸が同意した、行きましょう、また戻ってくればいいだけですから、二人は罠に飛び込んだ。
ツキヨミは転移陣に入った瞬間、転移陣の術式を読んだ、効果は同じでも、術者によって、そこにいたるやり方がだいぶ違う。術者の能力も、新しい発見もある。まったく新しい術もある、空間転移陣が副次的効果にすぎず、主目的が別にある場合である。なんにせよツキヨミは人の術を見るのがすきだった。
ツキヨミは保険にダンジョンの転移陣のなかに、自分の転移陣を構築した。これでどこに行こうが戻って帰れる。行き先が捕獲用檻の中でも、だいじょうぶです。
青い海中のなかであった。透明な青、水底が見えないほど深い、取りあえず水中に位置情報の確認をした、これを忘れると戻れない。
「影丸、ここはロマンチックなところだ、しばらくここで遊んでいこう」ツキヨミは空間収納庫を逆転して円形の亜空間を出した、中には半分土が入っていて、その上に瀟洒な家が建っている、大きな池があり、池の上に家が浮かんでいる、林があり、花畑がある、狼がいる、小鳥もいる。幻想的な景色だ。
影丸はツキヨミに紅茶をいれた。お茶請けのケーキを出した。ツキヨミはいなげやのショートケーキが好きだ、紅茶はテレビの相棒の影響でアールグレイとダージリンのブレンドを高い位置からいれてもらう、影丸はへたくそだ、そのうち少女型オートマタを作り、家事全般を任せたい。紅茶の入れ方はゆずれない。
影丸は水中にいて、周りの様子をうかがう。上も下もない、どこまで行っても透明な水である、普通の水ではない、純粋すぎる、水にエネルギーを感じる、広さを測るためエコーを出す。あまりに広大すぎるか、広さと言う概念がないのか、エコーは返ってこなかった。なら宇宙を模した亜空間にいるのか。
昼飯の時間である、影丸はもどってきた。ツキヨミが今日の食事当番である、本来ならば従者である影丸が食事の世話をするが、料理の趣味のあるツキヨミは食べるのも、作るのも大好きだ、いまは当番制にして、街で食べた料理の復元をこころみている。
何か食事の素材があったか、ツキヨミの問いに影丸は「水以外、なにもありません、ただ水がきれいすぎるのと、とんでもないエネルギーを感じました。あと、ここは果てのない水の空間です。
たぶん水は意思を持っている、そのうち我々にコンタクトをとってくる。ツキヨミの言葉に納得して影丸は料理を頬張る、この間食べたレストランの味がする。美味しい。
「家事用のオートマタを作ろうと思う、あと庭師も欲しい、何体造れば良いかな、」「みな、若い女性がよいと思います、見ていて花がある」「古代遺跡のロボットもここで働いてもらおうか、人間界に置いてゆくには問題がありすぎる」「ならば古代遺跡ごと、こちらに転移しましょう、工場も機械も素材まである」
影丸とツキヨミは亜空間の周りを運動のため走った。半径10km×3.14×2=62.8kmは食事のあとの運動には丁度、いい距離です。少し亜空間が狭い気がするが、どうする。ツキヨミの問いに古代遺跡を転移してから考えましょうと、影丸は答えた。
夜中に変化が起こった。正確に言うとPM12:00とAM0:00の間に問題がおこった。水が乙女の姿で境界を越えてきた。境界の中に入ると乙女は裸体から、ワンピース姿に変わっていた。顔はツキヨミそっくりの顔で建物のなかに入ってきた。ツキヨミはベッドから起きて侵入者に向き合った、影丸も後ろにいる、話に来たのですか、それとも戦いに来たのですか。ツキヨミの言葉に、少女は答える、私はこのダンジョンをつかさどる者です、話し合いに来ました。
少女は透明な水の姿のまま、人の形をたもっている。部屋を替える、応接間に通し、3人でテーブルを挟んで自己紹介をする、私はツキナミ、俺は影丸、私はダンジョンの管理者です。
「私はダンジョンの誕生と共に、管理者として生まれました。私のダンジョンは、生まれてすぐに地形の変化のため、二つに分かれました。私は誕生と同時に地下に閉じ込められました。今日、貴方達によって助けられました。お礼をしたい。」良い話です、いったい何を貰えるのでしょう。
「私にお礼をくれるのか、なにをくれる」ツキヨミはニコニコしています。管理者は少し引いているようです。「何が欲しいですか」管理者はあまり無理な注文は、無理かなと悩んでいます。「ダンジョンが欲しい」ツキヨミの言葉に、管理者は絶句しました。「私はダンジョンなくて、生きてゆけません」「ならば、おまえも欲しい」ダンジョンはツキヨミの者になりました。




