人外達の会合です4
勇者としての特徴を参考までに確認しておくと、
曰く、人族の中では圧倒的だが、このダンジョンに対抗できるほどの力はない。なおかつ大した道具も保有していないらしい。
又、もうすぐ攻めてくるらしいが、まだ召喚されたばかりのLv1らしく、森を越えてこれるかも定かではないという。
てか、勇者攻めてくるなんて聞いてない。
「この森自体、フォレストウルフの上位種、ウォーウルフの縄張りになってるから、まだステータスが2桁だろう勇者には酷な環境になるかもね」
2桁…………。
「そのくらいが人族の平均値らしいよ。僕もさっきしった。戦闘職でやっと3桁、勇者の最高到達でも4桁中盤が限界っぽい」
(そんなのでよく戦おうと思ったね)
「同感だよ。蛮勇にも程がある」
「最早自殺志願者集団と呼んで差し支えないよ」
3人が3人とも、ため息をついてしまう。
私は猫ですが。
(ならこのまま傍観でも余裕なんだ?)
「余裕だよ。ただ今後ちょっかい出してこないように畏怖を広めてもらいたいから全滅は避けないといけないのが面倒なんだよねぇ。弱いから」
「勇者の進行を報せて嘆いてたのはそれか」
◆◇◆◇
自己紹介をします!
「最後の一人だねぇ〜いや、1匹の方が適切か」
「語弊を生む相手もいないんだし、いいんじゃないか?気に食わないならひとつに統一するけど」
(私はどっちでもいいよ。元は人だったし)
「やっぱりそうなのか?」
(やっぱりって?)
「単純に自分と照らし合わせただけじゃないの?ここまで自我を確立した猫なんて普通じゃ考えられない訳だし」
「猫だと認識はしているが、君の言動はどうも、人間臭いと思ってたんだ」
それでか。
「ここには元人間の化け物が3人もいる訳だね」
(むぅー、猫は化け物じゃないよ!)
「勇者をワンパンできる猫がか?」
(ちょっと強いだけだよ!)
「ちょっと強い猫に負ける勇者って……」
頬をひきつられるウルドラを恨めしく思いながらも、私は自己紹介を続ける。
ちなみに、私がこの世界の住人じゃなかったのは秘密だ。
皆が素性を明かしたのに私だけとは思うが、この世界での転生者の立ち位置が分からない以上は話すことが出来ない。
だから2人には悪いが、喋るのは元人間だったことだけにさせてもらう。
(自己紹介だけど私まだ名前ないんだけどどうしよう?)
「ん?人だった時の名前でいいじゃん」
(いやぁせっかく違う人生歩むんだし一新しようかと)
「……それならミリムなんてどう?」
なんとこう言ったことに無関心そうなサヤが提案してきた。
(唐突だね。何か由来でもあるの?)
「僕の知り合いの名前を文字っただけだよ」
うげぇ。初対面で友達の友達的な人物を話に出すとか、この子も相当人との関わり方慣れてないな。
側仕えがどうとか言ってたし長い付き合いになるなら大変だ。
そんな悠長なことを考えていると頭の中に不意なアナウンスが流れた。
【名付けが完了されました】
(嘘でしょ!)
「どうしたの」
唐突な大声(声じゃないけど)に目をぱちくりさせながらウルドラが尋ねてくる。
(名前固定されちゃった)
「おめでとう、これで君も名実ともにネームドモンスターだ」
(私の意見ガン無視で!?)
「あらら、残念だったね。この無機物の独尊は我にも止められないから」
「残念とはなんだ。いい名前だろ」
(おかしくはないけど、こう、なんかさぁ)
「決まったことにつべこべ言っても仕方ないだろうが」
(うぅ。私の今世の大イベントがぁ)