1日目 〜俺、女神に会いました〜
9時
少年は目が覚めた。眼に映るものはいつも通りの天井だ。
「今日もいつも通りか。」
ボソッと呟きながら布団を蹴り上げ少年は起き上がった。目覚めたばかりの少年の目は半開き、寝癖がついた髪はもはや芸術的だ。そして少年はいつものように部屋の扉を開け一階へと続く階段を降りていった。
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少年を一言でいうならば引きこもりの高校一年生だ。なぜ引きこもりになったのかと聞かれても説明のしようがない。それでも説明しろというならば「学校がめんどくて一回休んだらそのまま休み癖がついちゃったゼ♪」としか言えない。別にいじめられていたとか、人より何かが劣っていて学校に行くのがイヤだった、とかではない。ただなんとなく休んだ結果そのまま休み続けているのだ。
少年の親は仕事で忙しく、夜遅く帰ってきて朝早く出て行く。というタイプだった。結果少年のことは放置だった。というよりも、休んでいる理由的に放置するしか方法がない。ともいえる。
そして引きこもりの少年は世間一般の引きこもりのイメージ通りにアニメやゲームにずぶずぶと浸かっていった。
まぁ、そんなこんなの理由が重なって少年は立派な自宅警備員になってしまったという訳だ。
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「・・・食料が・・・無いっ」
冷蔵庫の前に立った少年は呟いた。少年の目の前にある冷蔵庫のなかはほぼ空。せいぜい端っこのほうにワサビと辛子のチューブ、マヨネーズが置いてあるくらいだ。
「買いに行く・・・しかないよなぁ・・・」
少年はめんどくさそうにパジャマを脱ぎ、タンスの中から適当に取り出した服に着替え始めた。
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着替えが終わり玄関の前に立った少年の見た目を一言でいうならば普通である。身長は高いわけでもないし、イケメンか?と聞かれれば返事に悩む。そんなどこにでもいるような少年だった。そんな少年の服装は少し大きめのズボンにグレーのパーカー。なんともいえない。
そんななんともいえない少年は最後に握ったのはいつなのかすら覚えていない玄関のドアノブを握りしめドアを開けた。
「まぶしっ・・・!」
思わず手を頭の上に持ってくる。季節は夏。日光がストレートに少年に降り注ぐ。
「こりゃぁ引きこもりにはキツいぜ」
少年は徒歩約15分かかる家から最短のコンビニへ向けて歩きだした。
「帰ったら録画してたアニメでも見ながらゆっくりさせてもらうぜ。なにせ外に出たんだからなっ!」
一般人には当たり前のことを特別そうに言いながら少年は歩く。少年の右を見れば田んぼが。左を見ても田んぼ。まあ、田舎だ。それでもコンビニがあるだけマシだろう。
「羽が欲しい。もしくは瞬間移動みたいな魔法が欲しい。こうなんかバビュン!っとさ。一回やってみたいもんだよ。なっ!」
暑さで疲れたのか、隣に誰かがいるわけでも無いのに少年は同意を求めるように言う。
「異世界とかさ、行ってみてぇよなぁ。魔法を使ったり、剣を握ったりして敵と戦ったりさ!」
アニメや漫画でよく見る『異世界』少年もそんな異世界を夢見る仲間達の一人だった。
「俺が魔王を倒して、伝説の戦士!やっぱ憧れるよなぁ〜」
「・・・そうですか!ならばその夢、叶えてみませんか?」
9時43分。俺、女神に会いました。
ストーリーがようやく浮かび始めました。頑張ります。