第8話 火薬無双
火薬、それは漢のロマン。バクハツがゲージュツなのか? ゲージュツがバクハツなのか? それが問題だ……
オレの左手には龍の紋章(のようなただの痣)がある。
左手を握り締めて拳を作り更に手首を限界まで曲げて真っすぐ前に伸ばす。そしてやや内側に捻った状態で後方約30度の角度から斜めに睨むと、俺の左手首から甲にかけて龍を模った何か(タダの痣なんだけどね)を見出す事が出来るだろう。
これはオレが厨……中二の時に交通事故に遭った時に出来た傷痕だ。あの時に異世界への転生を垣間見た(ような気がしている)オレは何時向うの世界へ召喚されても困らないようにと、こちらの世界の知識を学び続けている。
魔法が一般的に普及している異世界とは言え、その誰もが強力な魔法を使用出来る訳では無い事を先人たちによる様々な記録が物語っている。
もしオレが異世界へと転生(又は転移)を成し遂げたとしても必ずしも女神たちの祝福に恵まれて魔法の才を持つとは限らないし、オレのハーレムパーティの女子たち全員が魔法による攻撃力を有していない事もありうる。
そうした事態をも想定して今回は魔力を用いなくても大きな殺傷力を持つ火薬に関する知識を学んでおこうか。
火薬とは爆薬とも呼ばれ熱や衝撃によって急激な燃焼反応を起こす物質の事で、黒色火薬やニトロセルロースなどを指す。実際にはもっと沢山の火薬に分類されるのだがオレが異世界で再現したいのは黒色火薬だ。
黒色火薬はその作成方法がわりと簡単で6世紀頃に発見されて14世紀頃にはヨーロッパで大量に使用されていたから、異世界の文明レベルでも十分に製造する事が可能だと思われる。
製造には木炭と硫黄それに硝石(硝酸カリウム)が必要だが一部の地域を除けば入手する事はそれほど難しくはないだろう。一般的な黒色火薬の配合比率は木炭が10~20%に硫黄が15~25%で残りの60~70%が硝酸カリウムとなる。これだけ知っていればあとは実際に製造し発破実験を繰り返して細かな配合比を調整すれば実戦配備が可能になるだろう。
こうして製造した爆弾で魔王城もろとも爆破してやれば魔王なんて恐れる理由などどこにも無い。途中で出て来るザコや四天王なんかには小型手榴弾があればスムーズに戦闘を進める事が出来るし、対魔王用として特別製のモノを用意してやればオレの戦いのフィナーレを飾るには相応しいかも知れない。
そんな魔王城での一戦にまで及ぶオレの想像力こそが真のチートではないだろうか? 持っているオトコとは実はオレのような存在を指す言葉なのかも知れない。
『よくぞここまで辿り着いたな勇者どもよ!』
「フッ、今日こそホントに本気で魔王の最後の日にしてやるからな! ちょっとそこで待ってろよ!」
『……で、いつまで待てば良いのだ勇者よ?』
「だからちょっと待ってろって、もうすぐだと思うから…」
(チクショウめ!何で全部湿気てるんだよ><!)
『……勇者よ、そろそろ予は晩御飯の時間なのだが?』
「うぅ、今日はこれくらいでカンベンしてやるからなっ!」(涙目)
……オレの苦悩は続く。
(;´・ω・)「引火が怖くてここまで水魔法で戦っていた事が原因ですね?」
( ゜Д゜)「実際の火薬はすぐに湿気るで気を付けるがや」
これまでの戦績
1勝7敗(不戦敗7)