第6話 製紙無双・其ノ弐
オレの左手には龍の紋章(のような痣)がある。
これはオレが厨……中二の時に交通事故に遭った時に出来た傷痕だ。あの時に異世界への転生を垣間見た(ような気がしている)オレは何時向うの世界へ行っても困らないようにと、この世界の知識を学んでいる。
文化的な生活を送る為に下水配管が必要だと考えたオレだったが、こちらの世界と同じレベルのトイレが必要だと気づいた時にイロイロと足りない物がある事を知った。
そして異世界の文化レベルでも量産が可能なパピルスに思い至ったのだが諸般の事情により更なる上質紙の開発が必要だと気づいた……いや、気付かされたと言うべきか?
――やはり古代エジプト程度の文明レベルではダメだ。
こうして更なる調査により今度は古代中国へと製紙技術の歴史を辿る事になる。
中国では紀元前150年頃には麻を原料とした紙が発明されており、この手梳きの技術はその後に少しづつ形を変えながら少しずつ発展を続けヨーロッパで広く普及したのは15世紀頃だと知った。その後17世紀くらいになると水車を動力として使用した製造方法も開発されるが、これくらい技術が進めば柔らかい紙を作る事も可能かも知れない。
それにこの頃なら異世界の文明レベルとほぼ同じくらいだから再現も可能だと思う。
紙を生産する為に先ず木材をチップ加工してそこから木材パルプを作る必要があり、大きさや厚さを揃えて薬品を加え高温・高圧で樹脂を溶かして繊維を取り出す。それからゴミなどを取り除いて洗浄し、今度は蒸してから再度残った樹脂を分解すると最後に薬品を使って漂白すればパルプと言う紙の原材料なる。
こうして出来たパルプを均一に並べてローラーで水分を除去しながら成形しドライヤーで乾かせばようやく紙と呼べる物が出来上がる。オレたちがいつも使用している紙はここから更なる加工を施して塗装したり艶を出したりして製品になって行くが、オレが欲しいのはトイレットペーパーだからここまでの工程は必要無い。
こうしてお尻の問題を解決したオレたちハーレムパーティは魔王討伐のためにその力を存分に発揮出来る事だろう。
『やっと再びここまで来たか勇者どもよ!……で、あっちの方はもう大丈夫なのか?』
「魔王!貴様の命もこれまでだ! だが絶対にそこから動かないで貰おう。こちらとしては出血だけは避けたいので立ったままの姿勢で魔法を撃つか、ゼロ距離で移動せずに格闘戦を希望したい……」
『前回より悪化しておるではないか……今日は土曜だがまだ午前中なので診察には間に合うだろう、早く逝って来るが良い』
……オレの苦悩は続く。
(;゜Д゜)「ま、魔王がこれほどの強さとわ!!」
(ノД`)「おみゃーが弱すぎるだぎゃ!」
これまでの戦績
1勝5敗(不戦敗5)