第3話 飲水無双
オレの左手には龍の紋章(のような痣)がある。
これはオレが厨……中二の時に交通事故に遭った時に出来た傷痕だ。あの時に異世界への転生を垣間見た(ような気がしている)オレは何時向うの世界へ行っても困らないようにと、この世界の知識を学んでいる。
前回までに”電気”と”エアコン”について調べたが、結果から言えば魔法で代用した方が異世界ではスムーズな運用が出来るだろう。同じ電気系の技術で蓄電池についても調べておきたいが、胃腸の弱いオレは旅先での飲水が心配事項の一つだったりする。
だから今回は飲水について調べておこう。
水道の始まりは古代に作られたローマ水道が有名だろう、これは歴史の教科書にも載っていたのでオレでも知っている。これは水源地から都市部まで水路を建設して飲水や生活用水を引き込むのだが、水源地や水路周辺に動物の死骸や糞尿によって汚染される可能性があるし寄生虫も怖い。
そのため異世界ではこちらの世界と同じ鉄管敷設による水道管を是非とも導入したい。その上で水源となる川や湖から引き込む所でゴミや虫の混入を防ぐ施設が必要になるから設備予算はけっこうな額が必要になるな。それでも市街地まで引き込んだ上水道配管をオレの住む家まで工事をすればこちらの世界と同じように台所や風呂、それにトイレの環境が整うと言う訳だ。
でも待てよ……それなら自宅の屋上に水槽を設置して水魔法で中に水をいっぱいにしてやればいいんじゃね? タンクの中の水は腐るから飲水としては微妙だけど風呂やトイレに使うなら問題は無い。それに魔法で作り出す水は純粋なH2Oなハズだからそのまま飲めるよな。
ただ生み出す水の量によっては多くの魔力を必要とするだろうから、やっぱ水源地からの配管工事は必要かな。でもそんな工事がすぐに終わるとは思わないから、ひょっとしたらオレが水魔法の練習をしてレベルを上げて行けば……もしかすると配管工事より先に沢山の水を作り出せるようになったらムダになるかも。でも水魔法が得意になるとは限らないし……。
『ようやくここまで辿り着いたか勇者どもめ!』
「ふっふっふ。オレが鍛えに鍛え抜いた水魔法の威力を見せてやるぜ!と言ってもパーティーメンバーの女子たち全員が毎日お風呂に入るからオレが強制的に働かされた結果なんだけどね。それも毎回一人ずつ新しく水を張って火魔法を使って温度を上げるんだけど、一人ひとりが好みの湯温が違っててね……それから……」
『いや、うん、その、何というか……勇者よ、ドンマイ?』
……オレの苦悩は続く。
これまでの戦績
0勝3敗(不戦敗3)