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1.まずはルールを確認しましょう

アイオーンクロックを起動するとコミカルなカエルが画面に現れて、プレイヤー名を入力する空欄が表示された。

俺は少し悩んだ後『カラス』とSMSでも使っているHNを入力する。

ゲーム毎に名前を管理するのも面倒だというのもあったが既に3年以上の付き合いになるこHNに愛着が湧いているのもあった。

起動したアイオーンクロックには黒く簡素な背景に4つの白いメニューバーが表示される。

1.デッキ確認

2.ルール確認

3.対戦申し込み

4.一人回し

察するにどうやらストーリーやらクエストといったものはなく対戦を主体としたソーシャルゲームのようだ。

90年代から根強くゲーム業界の一旦を担ってきたトレーディングカードゲームは5年前アメリカのヘルファイヤー社が開発したバースストーンを皮切りに様々な新しいデジタル対戦型カードゲームが開発されてきた。

これはインフレが進みルールが複雑化したことで新規を掴みづらくなり流通が難しくなってきたカードゲームのルール処理を機械が自動的に行なうことで親しみ安いゲームとしてリファインしたものだった。

それまで主流だったクエストやランキング式のソーシャルゲームとはまったく違う新しいデジタルゲームジャンルとして流行。

プロゲーマーによる世界大会も行なわれるようになったものだった。

どうやらこの『アイオーンクロック』というゲームもそういったデジタルカードゲームに類するもののようだ。

俺もその手のゲームはいくつか経験したことがある。ただ、どちらかといえば俺は今は若干廃れつつあるアナログタイプのカードゲームを兄と一緒にプレイしていたのでいまいち馴染めないソーシャルゲームタイプでもあった。

デジタルで処理されるカードゲームは処理を単純にする為にルールをいくらか簡素にしすぎている嫌いがあったからだ。

そこで俺は1つメニューに疑問を感じた。

もう一度マジマジとメニューを確認しする。

このゲームにはカードゲームタイプのゲームには必ずある筈のメニューであるデッキ構築の画面が無い。

俺はデッキ確認からツリー化されてデッキ構築が出来るのではないかと思い、デッキ確認をクリックする。

すると30枚のカードが表示された。

他の項目らしい項目はなくソートも存在しない。

俺はむっとして1枚のカードをクリックした。

するとカードが拡大されて表示される。

まず目についたのはカードの上半分を締める絵だ。

黒い人型が走るような格好をして、その後ろにスピード線が付いている。

その下にカードの名前と効果が書いてある。


―――

『加速』

種別:スペル

「1分間、音速を得る」

―――


そのテキストを見たとき俺は思わず「はっ?」と声をあげた。

まるで意味がわからなかったからだ。

まず1分間というのもわからないのだが、それ以上に音速という言葉がわからなかった。

最初に疑ったのはゲームの専門用語だ。カードゲームでは似たような効果を専門用語でまとめて単語で表す事がある。

例えば俺が昔やっていたブレイブオブザジャッジというゲームではモンスターを召喚した場合そのターンは行動出来ない召喚酔いというルールが存在していた。しかし、モンスターによっては特殊能力でこの召喚酔いをせずに即座に行動する事が出来るものもいた。

こういったカードは多く、この効果を毎度「このモンスターは召喚時、すぐに行動出来る」と書いてしまうと貴重なテキスト欄の文字数の多くを使ってしまう。そこで制定されたのがその効果の意味を持つ専門用語だ。

俺が兄とプレイしていたブレイブオブザジャッジではこういった効果を俊足と設定されていた。この『加速』というカードの音速という文章もその手の専門用語なのだろうか?

俺は画面を戻り、ルールを確認することにした。

最初のタイトルメニューの画面から2.ルール確認のクリックする。


―――


アイオーンクロック ルール


このゲームは特別な場合を除き、1:1で行われるものとする。


対戦を挑まれたものは、対戦を拒否することが出来ない。


対戦を挑まれたものはトレードするカードの枚数を提示する事が出来る。

それに挑戦者が同意した場合のみ対戦が開始される。

トレードするものがカード以外の場合も双方が同意した場合は可能とする。


片方のプレイヤーが戦闘不能になるか敗北を認めた時、ゲームは終了する。


お互いのプレイヤーはカードを最初にデッキから3枚ドローする。カードを一枚発動した場合、カードをデッキから1枚ドローする事が出来る。


プレイヤーはカードをスロットに挿入する事でカードの効果を発動出来る。


カード1枚をスロットに挿入したとき、次のカードを使うには30秒のクールタイムが必要となる。


アクセルと書かれたカードは事前に書かれた枚数のカードを使用していないと使う事が出来ない。


カードを100枚集めたものはアイオーンの元へと召喚され、エグゾダス対象者となる。


―――


読み終えて俺は再び顔をしかめた。

ルールわけわかんねぇ!!!!!!!!!

そう叫びたくなるのを抑えて、もう一度冷静にルールに目を通す。

目的とした音速の意味はまるでわからなかったが、どうやらこのゲームは⑤と⑦の項目から察するにターン性を廃したカードゲームのようだ。

通常TCGは1:1で行なわれ、先行後攻に別れ順々に攻守が入れ替わるようになっている。このアイオーンクロックというゲームはどうやらクロックという名前の通り、ターン性を廃止して時間でドローとカードの使用を管理しているらしい。

デジタルならではの新しい提案ではあるが、デジタルカードゲーム全般が気を遣っている短時間でのテンポの良いバトルがなくなりオンラインで対戦する以上切断問題が発生しやすそうだなと俺は思った。

しかし、それにしてもルールの記載が少なすぎる。

これはテキストの中に含まれる意味を読み解けということなのだろうか?

事実そういったTCGが過去に存在していたようだ。

なんでも効果テキストに書いていないルールが大量にあり、事務局に問い合わせて質問しメモをしておかなければならなかったとか、ある種そのカードゲーム専用の言語能力が要求されたらしい。

となると重要になるのはとりあえずトライアンドエラー、試してみて効果を確認するだけだ。

メニュー画面に戻り、対戦をクリックする。

いきなり対戦を選ぶのは無謀だとは思ったが、だからこそ既にこのゲームをプレイしているプレイヤーから得るものがあるのではないかと思ったからだ。

しかし、ゲームからは予想外の返答が帰ってくる


―――


対戦相手が見つかりませんでした


―――


その言葉を見て、俺は少しアホらしくなってスマートフォンの画面を消した。

使用者:『カラス』

カード名:加速アクセル

種別:スペル

効果:1分間、音速を得る


"速度の果て、その先を目指す。孤独になろうとも……"

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