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熱気溢れる闘技場。
そこに入っていく勇猛な者達。
彼らは皆国家の戦士に選ばれるために必死であり真剣であった。
闘技場の中に入った者達、その数400。
観覧席は客でいっぱいであった。
闘技場の観覧席に設けられている実況スペースの席に一人の男が座っていた。
虹色の王冠をかぶり、派手なマントで身をつつんでいる。
戦士達は皆、彼の方を向いていた。
その男が立った。
そしてマイクを取り喋り始めた。
「諸君、ごきげんよう。 余はレインボー・アニウス王である。 これより国家特別時募集戦闘員選考会を執り行う。 諸君、頑張りたまえ!」
男はマイクを隣にいた男に手渡した。
今度はその男が喋り出した。
「これより選考会の説明を行う。 よく聞いておくように!」
~選考会の説明~
この選考会は突如として現れた厄災を排除するため国軍のみならず国民からも優秀な戦力が必要だという考えのもと、国民の中から優秀な戦力を選ぶためのものである。
選ばれた者は『国家特別時募集戦闘員』の資格を有することができる。
またこれは『戦士』としての資格を有することでもある。
戦士とは国軍の上位階級や国家指定戦闘員や国家認定戦力および国家特別時募集戦闘員が有することができる資格である。
戦士としての資格を持てばこの国の重要人物として様々な待遇を受けることができる。
これより選考会のルールを説明する。
諸君らを4つのブロックに分け、約100人でバトルロワイヤル形式で戦ってもらう。
尚、殺人行為は厳禁である。
この選考会は戦士が見張りを行っている。殺人行為があった場合直ちに犯人特定を行う。
犯人は選考会の参加資格を抹消され監獄送りとなる。
ただし、気絶させたりもう二度と戦えぬ体にすることは認める。
殺さなければ、何をしてもらっても構わない。
ただし観客および見張りの戦士に攻撃を加えることは厳禁である。
各ブロックから2名選出される。
その2名は戦士2名とともに4人1組を組んでもらい、活動してもらう。
「以上で説明は終わりだ。 ただいまより係員より番号札が配られる。 その数字によってブロックを分ける。 Aブロックの開始時刻は13時とする。 闘技場には控え室がある。 自分のブロックの時刻までそこで待機しておくように。」
少年は控え室に行った。
少年が渡された番号は255番。
Cブロックだ。
控え室には多くの者達が集まっていた。
体格差がありすぎる・・・
少年は不安になった。
控え室にはモニターがついていてそれで選考会の様子を見ることができるようだ。
もうすぐ13時、Aブロックが始まる。
13時、闘技場のステージに約100人の者達がいた。
実況スペースにいる先程の選考会の宣言をした男、レインボー王がまたマイクを持った。
「Aブロックの試合開始!」
その声とともにAブロックの者達が騒ぎ出した。
「おりゃー!」
「ぅおらぁー!」
「おぉぉぉぉぉお!」
拳で殴り合う音、剣と剣がぶつかり合う音、銃を発砲した音、人々の悲鳴、人々の歓喜の声、それらが闘技場に響き渡る。
「おめぇを倒す!」
銃を構えた男が鎧を着た男にそう宣言した。
「やれるもんならなぁ!」
鎧を着た男も剣を構えて応戦した。
その時、銃を構えた男の背後から別の男が現れた。
「背後にも気を付けな。」
その男はそう言いながら拳で銃を構えた男を殴った。
剣を構えた男は倒れた。
その後殴った男は剣を構えた男に斬られた。
バトルロワイヤルとはそういうものである。
一対一でやれるなんて思わない方がいい。
周りはすべて敵だ。
360°上下左右前後すべてが敵だ。
休みなどない。
戦い、戦い、戦う。
それがバトルロワイヤルだ。
そんなバトルロワイヤルもそろそろサシでの勝負ができる頃になってきた。
約100人いた者達が今や5人に減った。
上半身裸で190cmの巨体を持つ男。
甲冑で身を固めた男。(といっても甲冑のせいで顔が見えないため男とは断定できない。)
大きな銃を背負っている男。
胴着を着た男。
黒スーツを着た男。
会場は大いに盛り上がっていた。
「いいぞー! やれー!」
「ぶっ倒せ!」
大きな銃を背負っていた男が銃を取りだし乱射し始めた。
その弾は運悪く胴着を着た男の頭部に命中した。
「うがぁ!!!」
断末魔の叫びもむなしくその男は息絶えた。
「68番を銃殺したとして20番を参加資格及び投獄の刑とする。」
胴着を着た男(番組札68番)の遺体が回収され、射殺した男(番号札20番)が係員に連行された。
20番は抵抗もせずおとなしく捕まった。
残るものは3人となった。
甲冑を着た男が剣を落とした。
「む・・・無理だ・・・ 」
実は先ほどの銃撃で利き腕を撃たれた。
それまでの戦いの疲れもあり剣を思うように振れなかった。
しかし、それ以上に戦いを諦めた理由があった。
巨体の男と黒スーツを着た男。
彼らから感じる恐ろしさ、怖さ、強さ。
それらに怯えてしまったのだ。
ここまでの連戦をものともせず余裕綽々と立っている。
実力の差を感じた。
絶対に埋められないほどの・・・
「で、でも・・・諦めてたまるかぁ!」
剣を拾い、構え直して、2人に突っ込んでいった。
巨体の男の肉体に剣を刺そうとしたその時、
「甲冑は殴り応えがありそうだな。」
と巨体の男は言って、思いっきり甲冑の男を殴った。
甲冑の男は倒れた。
「Aブロック終了!」
少年はモニターで試合を見ていた。
死者が出た試合だった。
その恐ろしさと緊張で体が硬直した。
観客席にブルードとレッドギンが座っていた。
2人は試合を見ていた。
「中々の試合じゃったのぅ。」
「でも物足りねぇな。」
「何がじゃ?」
「圧倒的な強さだよ。」
「大事なのはチームワークじゃよ。 圧倒的な強さがなくともチームワークがあれば強くなる。」
「まぁそうだよな・・・」
「続いてBブロックの試合開始!」
モニターに試合の様子が映し出されているが虚ろな少年には何も興味が起きなかった。
「Bブロックの試合終了!」
どうやら試合が終わったようだ。
「Cブロックの方、ステージまでお越しください。」
召集された。
少年は闘技場のステージに立った。
周りには約100人の者達。
少年は虚ろだった。
「マコトが出るブロックじゃのぅ。」
「おいおい、マコトの奴エネルギーが虚ろだぞ。 緊張してるぜ、ありゃ。」
「それはやばいのぅ。」
「Cブロックには猛者が集まってるぜ。 エネルギーの量や質からしてかなりのやり手だ。」
「それはますますやばいのぅ。」
「あそこにマコトより小さいガキがいるぜ。 エネルギーもひ弱だ。 大丈夫かあいつ。」
レッドギンは銀髪で黒いシャツを着た少年を指差した。
「ちょっと若すぎるんじゃないか?」
「まぁ何秒持ちこたえられるかってとこだな。」
「Cブロックの試合開始!」
はりつめた空気の均衡が崩れた。
少年の近くにいた男が剣で攻撃してきた。
反射的にしゃがんでかわそうとした。
かわそうと・・・している最中だった。
頭の上を『何か』が通った。
その何かは攻撃してきた男の喉仏に命中した。
男は倒れた。
その何かはステージ上の者達を次々となぎ倒していく。
一秒たっただろうか。
何かが目の前に戻ってきた。
攻撃される。
少年は恐ろしさのあまり膝の力が抜けた。
立てない。
動けない。
もうだめだと悟った。
「俺の名前はジトーだ。 よろしく。」
その何かが手を伸ばしてきた。
何かは人の手だったようだ。
視線を上げた。
そこにいたのは銀髪で黒いシャツを着た自分より幼い少年であった。
「Cブロックの試合終了!」
闘技場に声が鳴り響いた。
え・・・
負けたの?
それとも・・・
「勝者は222番と255番!」
222番と・・・255番?
255番?
どこかで見たような・・・
自分の番号札は・・・に、に、にひゃく・・・255番!
か、勝った。
勝った。
勝った!!!
銀髪の少年の手をとり立った。
「よろしくお願いします。 僕の名前はマコトです。」
2人は握手を交わした。
「にしても、よく俺の攻撃を避けられたな。」
年下の癖にタメ口なのは気にしない。
気にしないでおこう。
勝ったのだから。
「勝ったな。」
「あぁ。」
「あのガキ、エネルギーを偽ってたのか。 あいつめちゃくちゃ強いぞ。」
「あいつとならマコトも大丈夫そうじゃのう。」
「ところで、あいつの早業見えたか?」
「あぁ。 あれは手刀じゃな。」
「俺ら戦士でなきゃ見切れない。 マコトのやつ、よく見きったな。」
「マコトには素質があったからのぅ。」
少年とジトーは控え室に戻った。
「ブルード、閉会式はいつだったか?」
「15時からじゃ。」
「悪いが、ちょっと抜ける。」
「どうしたんじゃ?」
「侵入者だ。 ついてくるか。」
「あぁ。」
「じゃあ行くぜ。」
レッドギンは闘技場の壁を飛び越えていった。
「せっかちじゃのぅ・・・」
老人はやっとレッドギンに追いついた。
レッドギンは両手に鎖を持ち、その鎖で人を捕らえていた。
「それは・・・」
「獲物だ。 人というより獣だな。」
「これは潜在獣じゃな。 エネルギーを変化させて具現化した獣じゃな。」
「潜在獣は様々な情報を手に入れることができる。 俺の副業の賞金稼ぎっていう面から言わせてもらうと金にならねぇお邪魔虫なんだがな。」
「国軍に渡すぞ。」
「あぁ。」
「これより閉会式を執り行う。 各ブロック勝者は前へ。」
死亡者1人、失格1人、意識不明20人、重症125人であった。
まだ軽傷ですんだものは閉会式に参加した。
Aブロック勝者 ガイン ロード
Bブロック勝者 イネラ パンドル
Cブロック勝者 ジトー マコト
Dブロック勝者 ハンゾム キイト
レインボー王がマイクを取った。
「諸君らに『国家特別時募集戦闘員』および『戦士』としての資格を譲渡する。」
レインボー王は一呼吸おいた。
「諸君! 戦え! 朗報を待つ!」
闘技場は歓声で包まれた。
少年はこれからのことを見据え覚悟を決めた。
国軍本部では作戦会議が行われていた。
「この潜在獣のエネルギーの持ち主が厄災の原因と考えても良いだろう。」
「エネルギーには邪気と悪意が込められていた。 エネルギーの持ち主は相当の強さだろう。 編成を再構成し備えておく必要があるな。」
「被害があった場所の修復や避難民の為の仮設住宅の建設等にも人員が必要だな。」
「国家特別時募集戦闘員の選考も終わった。 中には戦士ゴード=パール氏の息子もいるそうだ。」
「それは期待できるな。 その班には強力な戦士を編入させよう。」
「そうだな。 よし国家特別時募集戦闘員を入れた編成を考えよう。 今日は長くなるぞ。」
「そうだな。」