第97話:贖罪のために
飛来する真空の刃をシルバー少将は手に持った長刀で斬り落とす。
「出たな、精霊。」
フウは少将の前に降り立った。
「よく防いだな・・・。真っ二つになるところだった・・・。」
「精霊ってのは残酷なもんだなァ。」
「残酷・・・?ザンコク?」
フウの黄緑色の長髪がわらわらと逆立ち始める。霊力も湧き出し、それは少将に重圧としてのしかかった。
「何だァ・・・?」
「残酷ダト・・・?ソレハ以前ニ此ノ地ヲ攻メタ、貴様ラノヨウナ者ノ事ヲ言ウノダ!!」
風の精霊は憤っていた。かつて眼前で喪った小さな命を思い出して。精霊の怒りは自然の怒りとなり“技”や“武力”を超えた“現象”を引き起こす。雲が逆巻き、周囲にあらゆる方角からの風が吹き荒ぶ。
“風槍”
“風刃”
“風槌”
・・・・・“風武百連陣”
フウとシルバー少将の上空に空気で形成された無数の武器が漂い並んでいた。
護国隊本部
護国院本部の説得に成功したミネルヴァも和神たちと合流し、早急に次の行動に移ろうとしていた。“次の行動”とは他でもない“和神くんで帝国を惑わそう大作戦❤”である。
「・・・というのが、サキュバス・・・サラの提示した作戦です。信じるかどうか迷いましたが、現に彼女は単身で魔鎧の軍勢を足止めしておりますので、取り敢えずは信用してよろしいかと。」
ミネルヴァが作戦の概要を説明した。と言っても、内容は非常にシンプルなものであった。
「要するに和神が前線で妖力・霊力・天力・魔力を使いまくって戦って敵の意識を攪乱させて、私たちは和神に降りかかる火の粉を払う,ってことだな?」
狗美が簡単に要約した。ミネルヴァはそうです,と頷く。すると、後ろから声を掛けてくる者があった。護国隊長・天ヶ崎衛士と千明・千影の双子姉妹である。彼らは自分らも作戦に参加したい旨を伝えに来たのだった。
「先の陽子様の謀反・・・いえ、“主張”。陽子様のお気持ちに気付けず、あのような手段を“取らせてしまった”我らに、どうか贖罪の場を与えて頂きたい。」
「私たちも。」
「協力したい。」
「陽子様に立ちはだかってしまった。」
「傷つけようとしてしまった。」
『贖罪をしたい。』
天ヶ崎と千明・千影姉妹の眼差しを前に、ミネルヴァは振り返って陽子に判断を仰いだ。陽子は既に答えを決めていた。
「千明・千影は協力をお願い。護国隊はダメ。」
喜ぶ姉妹と驚く隊長。しかし、すぐに身を引いた。
「解りました。我らは我らの仕事を致します。ただ、その仕事はないことを祈ります。」
護国隊の仕事。それは“天帝結界”を突破してきた敵の排除。即ち、和神たちの作戦が失敗して初めて、彼らの仕事が始まるのである。
「祈っててください、仕事しなくていいことを♪」
陽子が冗談めかして言う言葉を背に隊長は隊員たちのもとへ帰って行った。
「さて、敵が差し迫っております。参りましょうか。」
ミネルヴァがそう言うと、皆が戦人の眼へと変わった。
奈良北部
「ヤバいねぇ、これ。」
サラの前には未だ無数の魔鎧の軍勢が犇めいている。それに加え上空には飛行艇部隊が、更に魔鎧兵の後方には戦車部隊が迫っていた。
「ミーちゃん急いで~。」
ドォン!!
危機的状況のサラの東の方角で凄まじい爆音が轟いた。魔鎧兵たちもそちらに意識を傾けた。その瞬間にサラは魔鎧兵の1人に突っ込み、蹴り倒した。そして、兵の持っていた剣を奪い、持っていた兵に振り下ろした。
「止めろ!やめ・・・!!」
断末魔の叫びと共に兵の頭は兜と共に割られた。
「なぁ~んだ、こうすれば良かったのね♪」




