第91話:半妖態
「貴様ら魔界の住人には無いのか?この“半妖態”。」
半妖体・・・それは、妖本来の姿である“妖型”と人の姿である“人型”の中間に位置する妖の姿のことである。最近では“獣人型”と呼ばれることの方が多い。
「人型でいる時は50%程度の能力しか使えなくてな・・・。だがこの姿ならば75%~80%は出せる。」
「ほう。我を前にして尚、100%振るわぬとは。1000年前とは変わったものだ。」
そう言うと、アダマス元帥は瞬時に陰美との間合いを詰めた。陰美の“陰撃拳”がアダマス元帥を再び捉えたかに見えた。だが、アダマス元帥はその陰美の拳を剣を持っていない左手で受け止めていた。
「同じ手は食わぬ。」
「そうか。同じではないがな。」
2人の周囲には無数の鬼火が漂っていた。陰美は身を翻し、アダマス元帥の手を振り払って鬼火群の外に出る。そして、無数の鬼火に仕込まれた術を解放した。
“鬼火・万針棺”
無数の鬼火から炎で形成された槍がアダマス元帥目掛けて放たれた。背後からも容赦なく放たれるその術に逃げ場はなく、アダマス元帥はそれを全て受けることとなった。ドドドドドン,という幾重にも重なる爆発音とともに凄まじい火柱が上がり、これにより大地は抉られ、周りに生えていた草木もその熱に当てられて発火した。瞬く間に周囲は火の海と化した。
「・・・!」
何か気配を察した陰美は飛び退き、火柱の中から放たれた“それ”を避けた。“それ”は玄斎の命を奪った“高火力火炎放射器”であった。一瞬で火柱に風穴が空けられ、そこからアダマス元帥は何事もなかったかのように悠然と歩き出てきた。
「温い、温いわ!この程度、メリディエス火山のマグマに比べれば微温湯よ!!」
「メリディエス火山のマグマに入ったことあるのか?」
陰美のそんな独り言を掻き消すようにアダマス元帥は火炎放射器を放つ。陰美はそれを躱し、次の手を打つ。
“陰陽術・雷遁・閃光花”
けたたましい轟音とともに閃光を放つ稲妻、いわば妖術による音響閃光弾である。アダマス元帥の視覚と聴覚を一時的に奪い、陰美は背後を取った。が、アダマス元帥は即座に反応し、背後に剣を振るってきた。
「温い!それが貴様の限界か!!」
陰美は剣を躱して後退し、距離を取ったところで“陽撃”を放つ。これを剣で振り払ったアダマス元帥に対し、背後を取った時点でアダマス元帥の足元に仕込んでおいた術を発動させる。
“陰陽術・水遁・間欠泉氷柱”
足元から水柱が噴出した後、凍結。アダマス元帥は凍り付き動きを止めた。しかし、これは一瞬のこと。すぐに自信を取り巻く氷柱を砕き、動き始める。が、全ては陰美の計算通りであった。
“陰撃・九葬槍”
八つの細い“陰撃”の中心に巨大な九つ目の陰撃を据えた、陰美の持つ最強クラスの術である。大地を抉りながらアダマス元帥を飲み込み、その黒い閃光は先に広がる森を一直線に縦断した。
「これが、貴様の・・・。」
その声に陰美は術を切り上げて距離を取ろうと飛び退いた。が、アダマス元帥は“陰撃”を斬り裂き、陰美の眼前へ現れた。
「限界だ。」
「姉様・・・。」
アダマス元帥の剣に陰美は袈裟懸け斬りにされ、地面に叩きつけられた。それでもアダマス元帥は手を緩めず、叩き付けられた陰美を剣で貫き、火炎放射器を放った。




