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異界嬢の救済  作者: 常盤終阿
第4章:帝国の侵攻 編
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第86話:帝国、来たる

妖界・京都・転生の洞窟

狗美、陽子、陰美の3人は交替で見張りをすることで洞窟の中で一夜を明かした。白い気を纏った洞窟内の妖たちは昼夜問わずに侵入者を襲撃するようだが、3人が拠点にしていた泉の周囲には近付いては来なかった。

「見張ってる意味、なかったね。」

陽子の言葉に2人は黙っていたが、内心は同意していた。

「・・・少なくとも、あと2日はこの生活です。楽に越したことはありません。」

陰美はそう言うと、洞窟の奥へと続く3つの穴を見据えた。

「さて、今日はどれに進もうか・・・。」

そう思案していると、洞窟が小刻みに揺れ始めた。3人は洞窟内に巣食う大型の妖がこちらに向かって来ているのかと推測したが、揺れはどんどん大きくなり、洞窟自体が崩れてしまうのではないかという程の地震となった。

「原因が何かは分からんが、これは不味い!一度洞窟を出た方がいい!」

立っているのも儘ならないような揺れの中、陰美の先導で3人は洞窟の外へ何とか脱出した。この時の3人には、脱出する際、何故か妖どもの姿がなかったことを気に留める余裕はなかった。

外へ出た3人は自分たちの無事を実感するよりも早くに外の異様な空気を感じ取った。その空気はまるで、魔気のようであった。そして、その原因はすぐに判明した。

護国院の上空にある暗雲が妙な流れをしている。まるでどこか一点に向かうような流れである。その雲が向かう先、そこに原因はあった。いや、“元凶”と言うべきか。京都の南数㎞の上空の空間が歪み、大穴が穿たれ、そこから膨大な魔気が流れ込んでいたのである。

「あれは・・・次元孔!?」

護国院本殿の屋根の上で狗美たちはその光景を目の当たりにした。巨大な次元孔は魔気を吐き出し、やがて“物体”までも顕現せしめた。それはまさしく要塞。魔導機械帝国と言わしめるに相応しい巨大なパイプや煙突が幾つも張り巡らされた巨大な要塞であった。それが下に向けられている幾つものジェット噴射機のようなものから出されるエネルギーによってゆっくりと地上に着陸、否、鎮座した。そして、現れたのは要塞だけにあらず、数百もの飛行艇も同時に次元孔から現れた。それから程なくして上空の巨大な次元孔は閉じられた。

「メリディエス・・・帝国!?何故、妖界に・・・!?」

陰美が焦りの色を見せる。護国院内も騒然としている。


「どういうことです!?サラ!!いや、サキュバスNo.777!!」

流界・とこしえ荘・サラの部屋

ミネルヴァがサラの胸倉を掴み、壁に叩き付けている。ミネルヴァに妖界にメリディエス帝国が現れたという連絡が護国院から貴族院経由でもたらされたのである。

「ちょっ・・・待ってよ!アタシだってビビってるって!1週間後に流界にって情報しかなかったんだから!」

「嘘・・・魔物は、やはり信用ならない・・・。」

ミネルヴァの隣にはフウもいる。どちらも鬼の形相であることは言うまでもない。

「落ち着いて下さいよ、2人とも。」

羅刹と化している2人を和神が止めようとする。

「いいえ、和神様。貴方が信じたからわたくしも信じました。ですがこの魔物は・・・!」

「そもそも、サラが情報を持って来なければ俺たちは何も知らないまま妖界に攻め込まれてたかも知れないんですよ?本当にサラが敵側だったら何も教えない方が得策だったでしょう?」

「そそそ、そうだよぉ~。ミーちゃん落ち着いて考えて?ミッちゃんらしくないよ?」

ミネルヴァの締め上げる力が強まる。

「サラ、ちょっと黙って。」

「うぅ・・・。」

少し考えて、ミネルヴァはサラの胸倉を離した。フウも殺気を弱めた。

「・・・今はメリディエスへの対処の方が先でした。申し訳ありません。参りましょう、妖界の京都へ!」



明けましておめでとうございます。

今年も『異界嬢の救済』をよろしくお願いします。


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