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異界嬢の救済  作者: 常盤終阿
第4章:帝国の侵攻 編
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第85話:テラコッタ

メリディエス帝国軍基地

メリディエス帝国軍基地内部の廊下を駆ける私は魔導鎧・魔鎧まがいを着込んだメリディエス兵に追われている。重厚な割に素早い動きで距離を詰めてくる。そもそもサキュバスNo.777様にメリディエス帝国の偵察を任されて潜入したわけだが、深追いし過ぎた。結果しくじり、こうして追われている。

「だが、あの情報だけは絶対に伝えなければ・・・!」

私は帝国軍基地の敷地内にある武器庫や人気ひとけのない施設に侵入して情報を集めていた。そこで“次元孔生成機”も発見し、サキュバスNo.777様にお送りした。一通り基地の敷地内を周って、あとは進軍する時の混乱に乗じて脱出しようと思っていた矢先、巡回していた兵士たちの不穏な会話を耳にした私は、その情報の真偽と詳細を確かめるために帝国軍基地内部にまで潜入してしまったのである。

「ムリしないでね~と言われていたのに・・・。」

廊下の曲がり角を曲がってすぐにあった細い通路に身を潜め、メリディエス兵をやり過ごした。ひとまず胸を撫で下ろし、自分が挟まるような狭い通路を抜け出して兵が向かっていったのと逆方向に向かい、出口を目指す。

基地内部にあった資料室でメリディエス兵たちの不穏な会話の真偽を確かめる決定的な証拠は既に掴んでいる。これさえサキュバスNo.777様に転送できればいい。ただ、この基地内はジャミングが働いていて転送できない。

「外に出た後も転送の陣を書いてから術を発動させる猶予が必要だ・・・。それにもう敵にバレてしまっている以上、戦闘は避けられない。」

私はオリンポスマーメイド。メリディエス火山を生きられるくらいの戦闘力はある。とはいえメリディエス軍の将校クラスは皆、独自オリジナルの魔導機械を使うらしい。この情報は兵士たちの会話から得たものだが、その詳細は資料室にもなかった。余程の極秘事項なのだろう。できれば出会いたくはない。

そんなことを考えていた私の背後に、気配がした。咄嗟にその気配と距離を取る。

「ほう・・・我の気配に感づくとは流石はこの帝国基地に潜入するだけのことはある。」

「・・・カッパー中将・・・。」

会いたくなかった将校クラスだ。だいぶ年を重ねているであろう髭を蓄えている老兵である。一般兵のような重厚な鎧こそ着込んではいないものの、その軍服の下には恐らく何か仕掛けがあるのだろう。その手に持つ杖にも。

「ふふ・・・警戒しているな。だが、我が術を防ぐのは不可能だ。」

カッパー中将は杖を私に向ける。瞬間、私は腹部に強い衝撃を受けて吹き飛ばされた。が、オリンポスマーメイドの特性で体を岩石化させたため、ほぼ無傷で吹き飛ばされただけで済んだ。

「おやおや、珍しい才能をお持ちのようだ・・・。実に、腹立たしい。」

何やら眉間にシワを寄せ、憤っている様子。

「何を憤っているのか知らんが、その杖は“魔石”で出来ているようだな。」

「その分析能力もまた、腹立たしい!」

カッパー中将は私に再び杖を向け、そこから魔力の弾丸が撃ち出された。かなり高速で飛来する“魔弾”だが、さっきよりも距離があるため躱せないほどではない。私はそれを最低限の挙動で躱し、カッパー中将と間合いを詰めようと接近しようと試みた。だが、飛来した“魔弾”は躱した私の方へと向きを変えて命中した。私は再び岩石化したため吹き飛ばされて壁に激突しただけで済んだが、どうやらあの“魔弾”には追尾機能があるようだ。

「あまり基地内ではりたくないが、仕方あるまい。」

そう言ったカッパー中将はその姿を異形のものへと変異させた。


私は伝えなければならない。カッパー中将の有する能力もメリディエス帝国の計画も・・・。




次週から2週(12月30日、1月6日)は休載致します。

次回更新は1月13日になります。

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