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異界嬢の救済  作者: 常盤終阿
第4章:帝国の侵攻 編
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第83話:メリディエス帝国

 貴族院からの連絡を受けたミネルヴァはフウを連れて和神の部屋を訪ねた。

「和神さ・・・。」

 ミネルヴァは声を詰まらせた。和神にサラがくっついていたからである。

「な・・・何をしている!サキュバス!!」

「あらぁミーちゃん❤なんか用?」

 あざけるように和神の身体に腕を絡ませるサラ。ミネルヴァの中に感じたことのない何かが沸き上がる。今にもエンジェルアローサルを発動させてしまいそうなミネルヴァを横目に、フウはサラに右の掌を向ける。

「和神・・・離れて・・・それ、消すから・・・。」

 フウの掌に風が集まる。

「待って下さい、フウさん。」

 和神はくっついているサラを引き離しつつ、フウの手を下ろさせる。

「ミネルヴァさんも落ち着いて下さい。」

 和神の言葉にミネルヴァを溜飲を下げた。和神からでも分かるほどに、2人の気は怒張していたのである。

「和神様・・・貴方はもっと警戒心を持って下さい。“受け容れし者”だからといって、何でも受け容れる必要はないのです。」

 平静を取り戻したミネルヴァが和神に言う。

「受け容れたいから受け容れてるんじゃないの?」

 サラがまた和神にすり寄って来る。ミネルヴァとフウの殺気が蘇る。この時、ミネルヴァ、フウとサラは一所ひとところに置かない方がよい,と和神は悟った。

「あー、それでミネルヴァさんたちはどうして俺の部屋に?」

 はっ,と我に返った素振りを見せ、貴族院からの連絡内容を和神に伝える。

「妖界連盟に所属する全ての国との連携が取れ、流界のどの地点にメリディエスの軍勢が現れても即座に対応する準備が整ったそうです。日本に現れる可能性が最も高いため、貴族院から精鋭部隊が派遣されることになり、護国隊と協力することになりました。・・・今回の戦い、きっと大規模なものになり、妖界われわれの存在を隠すことは不可能でしょう。仮にメリディエス帝国に勝利したとしても、とてつもない余波があることは確かです・・・。」

 ミネルヴァは神妙な面持ちで告げた。そこまで聞いたところで、和神は疑問を投げかける。

「先手は打てないんですか?メリディエス帝国が攻めてくる前にこっちから乗り込むとか。」

 沈黙するミネルヴァに代わって、サラが呆れたように両手を挙げてやれやれ,といった様子で話す。

「まったく、何も知らないのね~。それが出来たらメリディエス帝国なんてとっくの昔に滅んでるのよ。」

「どういうこと?」

「あのね、メリディエス帝国ってゆーのは、元々あった魔界の4大国の中からあぶれた魔力が弱い民たちの集まりから出来た国なのね。つまり、メリディエス帝国民てゆーのは、魔力が弱い国民なの。で、なのにどーして滅びなかったかっていうと、彼らが集まった土地っていうのが、魔界でもかなりヤバイ地域だったからなのね。“メリディエス火山地帯”って言うんだけど、この火山地帯を流れるマグマは平均して摂氏5京℃とかで、しかもそこに棲んでる魔物もヤバイ奴ばっかで、魔界の大国でもそうそう近付ける場所じゃなかったワケ。でものちのメリディエス帝国民はどーゆーワケか“そこ”に辿り着いて、どーゆーワケかワインレッドな安全地帯を見つけてメリディエス帝国を作り上げて今もそこに住んでるのよ。」

 サラの説明に補足するようにミネルヴァが続ける。

「その上メリディエス火山は魔力を宿す石“魔石”が豊富に採れる場所だと言われております。魔力の弱いメリディエス帝国民にとってはこの上ないユートピアなのです。」

「なるほど・・・。」

 こちらが攻め込めない理由、そしてメリディエス帝国の成り立ちを知った和神。だが、なぜメリディエスは流界に侵攻するのだろうか,という新たな疑問が生まれた。




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