第74話:動乱再び
貴族院・謁見の間へ続く廊下
和神たちは風の森をあとにし、貴族院へと戻ってきた。色々あったが、戦争を未然に防ぐという特使の任も今日で解かれ、それと同時に和神たちの特使の手伝いもここで終わる。その解任を受けに、謁見の間へと向かう一同。
「皆様には本当に色々と助けて頂きまして、感謝しきれない思いです。特に和神様、狗美様には私の命を助けて頂きました。」
「いえ・・・お役に立ててよかったです。」
「それに我が国の勲章まで授与される程の活躍。これでもう、処罰されることもないでしょう。」
「!?」
「処罰?」
疑問を投げかける狗美。特使はクスッと笑い、狗美を見る。
「フフッ。狗美様、陽子様の無断での流界への侵入。人目に付く場所での乱闘騒ぎまで起こしましたようですね?」
狗美は東京エデンツリーで王狼院の刺客に跳び膝蹴りかましたことを、陽子は和神の家から住宅街の上で護国院の追手と戦った時のことを思い出した。
「流界への侵入および人目に付くような行為、これは全て“流界への干渉”という国際法違反です。ご存知ですよね?ましてや1人の人間とここまで深く関わってしまっている,など言語道断です。」
「それは、特使様にも言えることでしょう?」
陽子は困ったような顔で訴える。
「私は国からの任務で動いていたので例外です。しかしながら受勲までされた方々を罪に問うことはありません。流界への干渉というのは悪影響を及ぼした際の罰則ですから、好転したことを証明できた場合には罪には問われません。ですので、ご心配なく。ただ、気を付けておいてほしいということです。」
特使のその余裕の瞳は、貴族院は思っている以上に広い“視野”を持っていますよ,と物語っているようであった。
貴族院・謁見の間・前室
受付嬢がそわそわと謁見の間の様子を気にしている様子。
「誰かいらっしゃっているのですか?」
「へ!?ミ、ミネルヴァ様!!これは失礼しました!」
どうやら和神たちが来たことにも気付いていなかったようである。
「あの・・・。」
受付嬢から謁見の間にいる人物のことを聞き、特使は急ぎ扉を開いた。そこには見覚えのある女性が1人。
「あらぁ~ミネルヴァちゃんじゃない❤良かったぁ元気そうで~。」
「サキュバスNo.777・・・!貴女、生きていたのですか・・・!?」
特使の表情が軍人のそれに変わる。
「ミネルヴァ、落ち着け。」
院長席に座す父・オーディンが諫める。
「そうよぉ、アツくなっちゃイヤよ❤今日は、味方として来たんだから♪」
「そんな事・・・信じられると?」
んもぅ,と頬を膨らませるサキュバスNo.777。ふと、特使の背後にいる和神に気付く。
「君は信じてくれるでしょ?アタシの命の恩人だもんね♪」
特使と陽子、陰美が和神を見る。
「アナタたち、彼を責めちゃダメよ?彼のお陰で、アナタたちはこの情報を得るんだから。」
「情報?」
サキュバスNo.777は貴族院長の方に向き直った。
「院長せんせ❤魔界の南にある大国メリディエス帝国が、流界に進軍するってさ。ヤバいよ、マジっぽいから。千何年か前の時みたいなハンパはやらないって。」
「!!」
謁見の間にいる貴族院上層部のエルフたちがざわつく。院長・オーディンも驚きの色を見せる。
「その根拠は?」
特使が訊ねる。サキュバスNo.777は特使の方を見る。
「この間の動乱あったでしょ?あの時一緒にいた“カッティングゼロ”の奴らが話してたんだよね~。『この仕事が終わればメリディエスに雲隠れさ。それなりなポストもくれるらしいぜ。』ってね。あ、それだけじゃないよ?それ聞いたから、一応メリディエスにアタシの部下を潜らせといたの。んで、届いた映像がコレ♪」
サキュバスNo.777は胸元から水晶のような石を取り出した。すると、石は光り始め、宙に映像を映し出した。
そこには、幾千幾万の兵が整然と並び、将軍と思われる人物の演説を聞き、最後に雄叫びを上げている様子が映されていた。




