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異界嬢の救済  作者: 常盤終阿
第3章:西洋妖界 編
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第71話:精霊の表情

「ヒイイ!!やめてくれよぉ!」

 われが力の差を見せつけると、その妖は命乞いを始めた。結局我はあの

村人どもの懇願を聞き入れ、峠で行商人を襲っているという“化け物退治”をしに来たのだ。

「俺は知らなかったんだよぉ!ここが精霊様の縄張りだったなんて!ただ、ここにいる住民どもは軟弱だから、俺でもやれると思ったんだよぉ!!」

 確かにここにいる住民どもは弱い。妖力自体を持っていないのだから当然だ。しかもこの“化け物”・・・もとい妖も相当な雑魚だ。あの奇妙な穴の中のこの世界が妖界に知れれば、雑魚妖どもの巣窟になるだろう。

「おねーちゃん!」

「!」

 不意に小娘の声が脳裏を過った。別にこんななんの変哲もない世界などどうなろうが知ったことではないはずだが・・・。我は踵を返し、村に戻ることにした。

「あ、ありがてぇ・・・なんてな!こんな美味しい場所誰にもやらねぇぜ!!」

 雑魚らしい不意打ちをしてきたため、旋風つむじかぜで粉微塵にしてやった。

 退治してきた旨を告げると村人どもは我を神のように崇めた。小娘が抱きついてきて、満面の笑みで我を見上げる。この時、我はどんな表情かおをしていたのだろう。

「村人たちよ。」

 我は切り出した。

「この世は危機に曝されておる。故に我はその脅威そのものを断つことにする。その為、我はしばしこの地を離れる。」

 村人どもはどよめいている。用心棒・・・いや守り神がいなくなるのだから当然か。

「いってらっしゃい。」

 そう言ったのは、小娘だった。それに続き村の大老も行って下され,と言う。これを見た村人皆も我を見送ることに決めたようだった。村人らの祈りを背に我はあの奇怪な穴から妖界へと戻った。穴の手前に岩を置き、精霊の領域,と刻んでおいた。これで滅多な妖は入らないだろう。

 それから我は面白みはなくなったが世界に発言権を有するサンクティタスを始めとする妖界の大国を回り、奇怪な穴のことと“あの世界”の事を話し、干渉しないよう頼んだ。精霊の頼みとあらば、と交渉が容易く進む国もあれば、その穴を見たいと言う国やそんな世界があるなら開拓しようと言い出す国もあった。ここで言う“見たい”や“開拓”が“侵略”“侵攻”を意味していることは明白である。我は千年嵐に見舞われるのと風が一切吹かなくなるの、どちらが良い?と脅して黙らせた。すると、サンクティタスの王から“穴の向こう側”には干渉しない旨の法を定めようという提案が出され、各国これに賛同し、法で取り締まられることとなった。これでむやみに近付く者は少なくなるだろう。

とはいえ、これであの奇怪な穴の存在が世に知れ渡る。穴を探す輩も出るだろう。我はあの“脆弱な世界”へと向かった。岩や周辺に妖が通った気配はなかった。

しかし、穴に入ると前回来た時とは空気が違っていた。火薬と血、妖気に魔気も感じる。急ぎ小娘らの村へ向かう。

その道中、幾つもの妖の亡骸が転がっていた。それらに気を取られていると、一本の矢が我の体に突き刺さった。忘れているやも知れんが、我は風の精霊。その体も風だ。大抵の物質は我が体を通り抜ける。だが妖力や魔力などを纏った物は当たる。つまり、この矢は妖が放った物だ。我は苛立ちを覚え、矢の飛んできた方向へ旋風を飛ばした。これは見事命中し、その者の体を切り裂いた。

ところが、これを皮切りに様々な方角から矢が飛来し、我に次々と突き刺さる。正直ここまで敵意を向けられたことがなかった我は、良い的となっていた。続いて、短刀を持った奴らが素早く我を斬りつけていく。我はとにかくその場から逃れ、われが奉られたあの古い神社へ身を隠した。



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