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異界嬢の救済  作者: 常盤終阿
第3章:西洋妖界 編
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第44話:ゲビューラ-Gebula-

 ゲビューラ村長、アルブル・トロンコは白い髭に白い髪の毛を蓄えた老人である。アルブル村長は特使たちを自身の住む母屋へと招いた。母屋への道中には全焼した家屋や焼けた田畑、半壊した建物など戦闘の痕跡が多く見受けられた。

 母屋へ着くと、狗美と陽子は和神を椅子に座らせた。アルブル村長は自分用の椅子に腰かけ、村に何が起きたか話し始めた。

 3時間前、数十人いた遠征隊が隊長を含む数名だけとなってボロボロの状態で村に帰投してきた。傷ついた遠征隊の治療を村の常駐部隊と村人で行っているとカッティングゼロが村を襲撃。迎撃した常駐部隊は撤退するカッティングゼロを追った。戦闘中に村の“次元間通信機”は破損。常駐部隊の活躍によって村人への被害は殆どなかったという。

 アルブル村長の話の途中で陽子がふと外を見ると、母屋の周囲には村人が集まってきていた。アルブル村長も外に集まる村人を見る。ゲビューラの村人たちと常駐部隊、遠征隊はとても懇意にしていたため、村人たちはカッティングゼロを追った常駐部隊を非常に心配しているという。

 追って行く常駐部隊を最後に見た村人の話では、カッティングゼロは北の丘の方へ逃亡していたということで、和神はふらふらのため狗美と母屋に残り、陽子と陰美と特使の3人で常駐部隊を追うことになった。

 3人は早速、北の丘へ向かうため母屋を出て、村の北にある門へ向かう。母屋に残った狗美は、ぐったりしている和神に寄り添っていた。

 北の門へ向かった3人がちょうど村の中心部に差し掛かった時、母屋で和神に寄り添っていた狗美が反応した。

「硝煙と焼け焦げた匂いで気付かなかった・・・。」

「周囲の村人の皆様の気配で気付きませんでした・・・。」

 特使も周囲の気配に反応していた。特使たち3人と母屋はともに何者かに囲まれていた。狗美はアルブル村長に奥へ隠れるよう指示し、数名の側近と奥の部屋に引っ込んだ。それから狗美は窓から外の様子を伺う。

「まったく・・・西洋妖界というのはどうなってる?」

「どういうこと?」

 ぐったりしている和神が死にそうな声で訊く。


 一方で、特使たち3人を取り囲んだ連中は姿を現した。カッティングゼロ・・・しかし、1人だけ明らかに異質な気配を纏う者が混ざっていた。

「カッティングゼロ・・・と、貴女は?」

「はじめまして♪ミネルヴァ・エンシェント・ホワイトさん♪ワタシぃ、オリエンス王国軍に所属してる、サキュバスNo.777です♪ヨロ~。」

 黒い長髪に黒い革のコルセットを着て、黒革のタイトなミニスカートと黒革のブーツを履いた何処ぞの女王様のような姿で軽口を叩くサキュバスNo.777であるが、その気配から周囲にいるカッティングゼロメンバー全員を足した戦力よりも高い戦力を有していることは明白であった。

「オリエンス王国軍・・・ということは、やはり今起こっている一連の騒動はサタン殿の計略ということでしょうか。」

「ブー!ざ~んねん♪サタン様が絡み出したのはまさに“今”からよ♪ここまでの騒動を起こしてきたのはぜ~んぶ貴女たちの身から出たAメロ・・・じゃなくって、身から出たサビってやつじゃん♪」


 母屋から出た狗美の前に一団が立ちはだかっていた。

「お前たちのその気配、天力だな?」

「よく解りましたね、日本の妖だというのに。ミネルヴァと居て学びましたか。」

 一団が着ているのはサンクティタス軍の兵装である。狗美には詳しいことは分からなかったが、取り敢えず先のフラッシュと同じケースであることは分かった。

「和神は連れて出なくて正解だったな・・・。」

 狗美はこうなることを見込んで和神を母屋に残してきていた。とはいえ、相手はおよそ30人近くいる軍人。さすがの狗美でも苦戦は必至であった。


「ここまで中が腐ってたら『サンクティタス王国オトせるかも』って考えたサタン様はカッティングゼロに兵を貸すことにしたのよ。てことで、ミネルヴァちゃんとそのオトモダチはここでBye♪」

 サキュバスNo.777は攻撃命令を出した。



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