表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界嬢の救済  作者: 常盤終阿
第3章:西洋妖界 編
43/370

第43話:魔界へ

「“ゲビューラ”とは?」

 魔界と繋がる次元孔に向かう車中で、陰美が特使に訊ねた。

ゲビューラは魔界のオリエンス王国領内にあるサンクティタス王国唯一の拠点で、西洋妖界と魔界の橋渡し役を担っている村である。この村には貴族院職員とサンクティタス王国軍が常駐する他、庶民階層の志願者が居住して耕作などを行っている。このゲビューラの存在はオリエンス国王サタンも認可しているため、魔界の住人がこの村を襲う事はオリエンス王国を襲う事と同義である。それ故、ゲビューラは野良魔物が接近することはあっても襲撃されるなど前例がなかった。

「そのゲビューラと交信が途絶え、遠征隊とも連絡が取れないとなると、考えられることは・・・魔界側の裏切りか或いは、先のフラッシュの一件のような身内の裏切りという線が濃厚でしょう・・・。」

 やがて魔界と繋がる次元孔のある場所に到着した。そこには既に一個小隊が待機している。

「ミネルヴァ殿!院長より、ミネルヴァ殿の支援を行えとの命を預かっております!どうかご指示を!」

 エルフにしては珍しい熱血漢、カリドゥス・ブランコが小隊長であった。特使は彼らに、自分たちがゲビューラへ赴き30分経っても帰還しない、もしくは他の誰かが戻っても自分がいなかった場合は貴族院へ報告の後、ゲビューラへ突入するよう指示を出した。カリドゥスは御意!,と熱い敬礼をした。

 和神たちと特使は5人で魔界の村ゲビューラへと向かった。


 次元孔を潜ると、そこはどんよりとした重苦しい空気の漂う暗い世界であった。

「ここが、魔界・・・。」

 和神はそんな言葉を漏らした。これまで、色んな漫画や映画等で描かれてきた“魔界”のイメージそのもののような世界観が広がっていた。だが、創作物では感じ得なかったものが和神を襲った。

“重圧”

妖界にはなかった強い重圧のようなものが魔界には存在していた。ものの数秒で和神はその場に膝を着いた。気付いた狗美が和神に肩を貸す。どうやら、狗美たちは自身の妖力を上手く使うことで重圧を凌いでいる様である。

「和神様にはやはり魔界の“瘴気”は厳しかったようですね。」

 和神の様子を見て特使が言った。何でも“瘴気”というのは魔界に立ち籠める独特の空気で、その組成は不明で、ただ妖界や流界の空気とは異質であるということしか分かっていないという。そのため、慣れない者や弱者が魔界に来ると必ず和神と同様に瘴気による酸素量等の変化の影響を“重圧”として感じることになる。

「本来ならば和神様が瘴気を受け容れ、順応するのをゆっくり待つ予定でしたが、事態が事態なのでこのまま進みます。」

 そう言うと、特使は先陣を切ってゲビューラへと歩を進めた。歩くのがやっとの和神に、陽子も肩を貸した。

「姉様!姉様まで肩を貸す必要はありません!」

 すかさず陰美が和神から陽子を引き剥がそうとする。しかし、陽子も頑なに離れようとせず、陰美は特使様についてて差し上げなさい,と制した。むくれる陰美は一瞬和神を睨みつけてから特使の後を追った。

 次元孔から徒歩3分の立地にゲビューラはあった。周囲を丸太の防壁で囲まれた村は、外からでは全く中の様子が伺い知れない。ただ、狗美の嗅覚はその僅かな硝煙の匂いを捉え、皆に注意を喚起した。

 3m強の高さのある丸太を組んで作られた門は施錠されていた。特使がドンドンと門をノックし、自らが貴族院からの使いであることを告げた上で門を開けるよう叫ぶ。しばらくすると、見張り台に村人らしき人物が出てきた。第一村人発見,とばかりに特使はその人物に村の状況や何が起こったのかなどの質問をぶつけた。その人物が質問に答えることはなかったが、やがて門が開き、村長のアルブル・トロンコが5人を出迎えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ