第356話:地球生命誕生以来最大級の絶対的な破壊力を有する災害
しかし、“生命力”という“力”を持つケツァルコアトルスや木々が操れるのはともかく、生物ではない岩まで飛ばしてきたのはどういう事か。和神はそんな事を考えながら飛来した木々を不知火で消し炭にしていた。
(岩にも自然エネルギー的なものが宿ってるのかも知れないな。)
そう結論づけ、和神は“彼の者”との間合いを詰めようとするが、“彼の者”は一瞬で近くにあった火山の山頂・火口上空まで移動した。和神は直ちに超神速でそこへ向かうが・・・。
ドガァァン!!
突如、火山の中腹部が砕け、そこからマグマが噴き出し、和神を襲った。
「!!これも“彼の者”の・・・!?」
ギュンッ!!
和神は瞬時に身を翻し、飛んでくるマグマを躱し、そのまま山頂にいる“彼の者”のもとへ向かった。
ドォン!!ドォン!!ドォン!!
和神の進行を阻むように火山に次々と穴が開きマグマが噴き出すが、和神はこれを躱しつつ自身の身に不知火を纏う事で完全に攻略し、“彼の者”との距離を詰めていく。
ズガァァン!!!
あと少しで届くという所で、和神の眼前に紅蓮の壁が出現した。火口が爆散し、マグマが津波のように溢れ出してきたのである。
「やるしかない!」
“魔拳【穿孔】”
上から覆い被さるように迫り来るマグマの津波に魔力を纏わせた拳を打ち込む。
ドバァァン!!
紅蓮の壁に大穴が穿たれ、その穴を和神は超神速で通過。“彼の者”の眼前へと肉薄した。
“正混沌拳”
ドッ・・・ガァン!!!
和神は“彼の者”の斜め上から拳を振り下ろし、“彼の者”を火口へと殴り飛ばした。
“正混沌撃”
ズアッ!!
一撃では落ち切らない“彼の者”に追撃を浴びせる。“正の混沌”の光線で追加ダメージを与えると同時に目眩ましをし、そこへ・・・。
“正混沌踏”
超神速の勢いを100%活かした踏み付けを食らわせた。
ドギャン!!!
“彼の者”は火口に滞留しているマグマへと落下した。当然、和神は、これで“彼の者”が終わるとは思っていない。この火山に溜まっているマグマ全てを纏って、マグマの巨人のようになってくるかも知れないし、また別の攻撃を仕掛けてくるかも知れない。和神は注意深く構えていた。だが、“彼の者”の次なる一手は予想を上回る規模のものであった。否、正確には“次なる一手”ではなかったのかも知れない。“既に打ってあった一手”が今、効果を発揮したのかも知れない。それは、白亜紀に来てからここまでの“彼の者”の和神に対する遠回しな攻撃の数々が、この一手が効果を発揮するまでの時間稼ぎだったのでは?とさえ思える、地球生命誕生以来最大級の絶対的な破壊力を有する“災害”であった。
ゴォォォ・・・!
「?」
周囲がザワつく感覚に和神は辺りを見渡す。恐竜が、翼竜が、昆虫が、天を仰いでいた。
「・・・まさか。」
和神も他の生物同様に天を仰いだ。
「“受け容れし者の受け容れし力”はここまで出来るのか・・・。」
“彼の者”が“受け容れた”のであろう。宇宙に無数に存在している巨岩の1つを。
ゴォオオオオ・・・!!
和神は天を仰ぐのを止め、マグマに突き落とした“彼の者”の方をどうにかしようと思い立つが、最早手遅れであった。
「間に合わない・・・!」
ゴォォオオオオオオ!!!
和神と“彼の者”がやってきた事で歴史が変わったのではない。彼らがやってきた時代が白亜紀の末期だったのである。巨大隕石の衝突により、繁栄を極めた恐竜の時代が終焉を迎えた・・・と言われている。それは自然の衝突ではなく、“彼の者”の手によるものだった,という事なのだろう。何れにせよ、恐竜たち白亜紀に生きていた生物の殆どが絶滅し、和神はその場に立ち会う事となったのである。
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次回投稿は6月17日(金)を予定しております。




