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異界嬢の救済  作者: 常盤終阿
最終章:受け容れし者 編
351/370

第351話:正の混沌VS負の混沌

オオオオオオ・・・・・

「何かちょっと前よりふんいきヤバめな感じになってない?」

サラが指摘する通り、かつて封印されていた異空間から帰って来た“彼の者”は、異空間に飛ばされる前よりも禍々しいオーラを纏っているように見えた。

の空間に再び送られた怨みか、或いは彼の空間に溢れ出した“負の混沌”が残っていて、それを纏ったのか。』

大精霊がそう考察していると、サタンは考えていても仕方がないといった口調で言う。

「フン、封じねば和神こやつに力を受け容れさせる時間も算出つくれなかったのだ。“彼の者”が多少強化されようがな。既に“彼の者”は帰って来たのだ、嘆いている暇はない。」

『ええ、あとは和神様にお任せするしか・・・。』

そう言って大精霊が和神の方を見ると、狗美が胸に顔をうずめる様に和神を抱きしめていた。

「お前に任せるしかない・・・肝心な時に何もできない私を許してくれ・・・。」

「大丈夫だよ。今まで何度も助けられてきたんだから。」

「・・・必ず、生きてくれ。」

「うん。」

和神と狗美は鼻も触れそうな距離で見つめ合う。その瞬間、和神の纏う“正の混沌”の白い輝きが一層増したように見えた。

ンオオオオオオオオオオオオ!!!

それを察知したのか、突如“彼の者”が慟哭し、周囲に黒い波動を放った。

「ッ・・・!」

「くっ・・・なんて禍々しい・・・!」

波動を受けても大精霊とサタンは流石に動じずにいるが、他の全員が一様に悪寒と重圧を感じ、その場に膝を着いてしまう。ただ、和神と和神のすぐ傍にいた狗美だけは大精霊たちと同様に、否、大精霊たち以上に平然としていた。

「行ってくる。」

和神は何一つ不安のないような顔で狗美にそう言うと、慟哭と波動を放つ“彼の者”の元へ。

シュンッ!

狗美の超神速のようなはやさで、急接近し。

“正混沌拳”

ドバァァン!!!

全力の一撃を顔面らしき部位へぶちかました。

キュドォォン!!

王土跡の窪地の外縁まで一瞬で吹き飛び、激突する“彼の者”。そこへ和神は再び超神速で追撃を仕掛ける。

“正混沌拳”

ドガァァン!!!

和神の追撃は大地を砕いた。寸での所で“彼の者”が瞬間移動し、宙へと逃れたのである。

「あれは昔我らが封印せしめんとした時にも見せた・・・。」

『ええ、速さではない、まるで距離を無くしたかのような移動術。』

ズオオオオオ・・・ギュンギュンギュン!!!

宙に移動した“彼の者”は“負の混沌”の塊のようなものを6つほど自身の周囲に展開させ、そこから“負の混沌”の光線のようなものを和神に向けて撃ち出した。

“正混沌壁”

和神は咄嗟に目の前に“正の混沌”の障壁を展開し、“負の混沌”の光線を防いだ。更に和神は、この攻防を目隠しに高速移動して、“彼の者”の背後を取った。

“正混沌踏”

ドッ・・・!!

「ッ!!」

和神は“彼の者”の背中を蹴り飛ばすように蹴り出したが、“彼の者”はまるで背後に目があるかのようにこれに対処。背中から“負の混沌”で形成された刃を突き出し、和神が蹴り出した足を足裏から甲まで貫いたのである。

“正混沌足撃”

しかし和神もただやられているわけではなく、貫かれた足の裏から“正の混沌”の閃光を放ち、“彼の者”を吹き飛ばした。吹き飛んでいる“彼の者”に追い打ちを仕掛ける和神。

“正混沌拳”

ブン!

和神の拳が当たる直前で“彼の者”は姿を消し、追い打ちを仕掛けていた和神の背後に移動していた。

「!!」

ドス!

和神の背を“負の混沌”の刃が貫いた。

「和神!!!」

悲痛な狗美の声が王土跡の窪地に響いた。

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