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異界嬢の救済  作者: 常盤終阿
第3章:西洋妖界 編
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第35話:特使邸

 和神らを乗せたエンシェントドラゴンの駕籠かごは、既に西洋妖界内、特使たちの母国であるサンクティタス王国領海上空にいた。

「見えてきました。あれが我が祖国サンクティタス王国です。」

「到着した後は、貴族院に挨拶を?」

 駕籠の窓から外を見ている特使に、陰美が訊ねた。

「いえ、我々の行動はなるべく内密にしておきたいので、貴族院へは寄らずに直接我が家に来て頂きます。」


 サンクティタス王国、貴族階層、ミネルヴァ・エンシェント・ホワイト(特使)邸

 特使の言葉通り、駕籠は特使の自宅の裏手にある森に着陸した。およそ5時間程のフライトであった。久しぶりの大地を踏みしめ、伸びをする狗美。

不意に狗美は気配を感じ、辺りを見渡す。気配の正体は、特使邸お抱えのメイドたちであった。メイドたちは、駕籠の中にある荷物を迅速かつ丁寧に運び出す。だが、狗美は、メイドたちの気配以外にも違和感を覚えた。これは、駕籠で西洋妖界に入った時から、陽子と陰美も感じていたものであった。

「何だ?この違和感は?」

「何か変なのか?」

 この違和感、和神は感じていなかった。違和感これについて、特使が教えてくれた。

「みなさんが感じている、この違和感は、サンクティタス王国に元々存在していた天力と頻繁に開く魔界への門から流入した魔力が混ざり合っているのが原因です。元来相容れない力である天力と魔力が共に存在しているために生じております。和神様は、違和感これも受け容れているようですが。さしあたり、みなさんにはこの違和感に慣れて頂きたいので、本日は、我が家でお休みください。明日あすの予定は、また後程。」

 メイドたちに案内され、和神たちは特使の邸宅へお邪魔することとなった。“貴族”という響きから、もっと荘厳な家や広い庭を想像していた和神だったが、ヨーロッパの小金持ち程の二階建ての屋敷だった。それでも、今まで和神の見てきた家の中では一番大きく上品な家ではあった。

“ホワイト”という名前の通り、屋敷内は白を基調としている。掃除が大変だな,と思っている間に、和神は今日泊まる部屋に着いていた。

「こちらが和神様、狗美様のお部屋、こちらが陽子様、陰美様のお部屋になります。」

「・・・え?」

 和神は思わず聞き返した。他にも部屋はいくつかあるように見えるのにも関わらず、和神と狗美が同室とされていたからである。

「お嬢様からそのように伺っております。」

「文句を言うな、特使様の邸宅に泊めて頂けるだけありがたく思え。」

 陰美が和神に忠告していると、そこに特使がやってきた。

「どうしました?」

「あの、俺と狗美は同室なのでしょうか?」

「嫌ですか?」

「嫌と言うか・・・。」

「私は構わない。」

 狗美は堂々と言った。和神は微妙な顔をしている。

「少しでも早く、多くの妖力を蓄えてほしいのです。そのためには、なるべく和神様の近くに妖力を持つ者がいて頂かなくてはいけません。狗美様とは随分と親しそうでしたので、問題ないかと・・・。」

「・・・わかりました。大丈夫です。」

 事情を聴き、和神は渋々了解した。この時、陰美は少し羨ましそうに狗美の方を見る姉の表情を横目に見ていた。

 部屋は2人で使うにも広く、クイーンサイズのベッドにバルコニーまで付いている。

「すご・・・。」

 思わず声を漏らす和神と狗美。狗美は橙色の射し込むガラズの戸を開け、バルコニーに出た。そこからは、貴族階層を一望でき、その奥には海に沈もうとする夕日が見える。

「すごい景色だぞ、和神!」

和神も狗美に続いてバルコニーに出ようとしたが、その足を止めた。こちらを振り向いて微笑む狗美は夕日を背に受け、まるで絵画から抜け出したような美しさを醸していたからである。

「どうした?」

「いや、何でも・・・。」

 和神は狗美の隣りに並び、一緒に夕日が沈むところを眺めた。


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