第345話:RPG
キュドドドドドドドド!!
フウとサラの合わせ技“風武百連陣・魔槍の舞”が賀繫の築いた砦を襲った。傷ついていた部分を中心に、無数の魔槍が突き刺さっては爆裂していく。サラが作り出した数百に及ぶ“RPG-777ジャベリン”の全てがフウの暴風によって投擲され終えようとした時、周囲を閃光が包んだ。それは陽子が獣悟に、ミネルヴァが絲角にトドメを刺した際に生じた閃光であった。
「わっ!ちょっと熱い・・・!?」
ミネルヴァが発生させた閃光には天力が含まれていた為、魔物であるサラには僅かに害があった。
「サラ・・・あれ。」
フウは閃光の事など気に留めておらず、冷静に指を指していた。その先には大きな穴が穿たれた樹木の砦があり、その穴の奥に天狗の、賀繫の姿が確認できた。
「!やったじゃ~ん♪」
ハイタッチしようとするサラをフウは突き飛ばす。
「危ないっ・・・!」
砦に大穴を穿たれた賀繫は早くも2人に蔓の刺客を差し向けてきていた。
「おっふ・・・!ビックリしたぁ。」
サラはすぐに魔力で剣を作り出し、蔓の切断を試みるが、その蔓は今までのものとはまるで別物のような耐久性を有していた。
ガッ!
「え、鉄!?植物斬った感覚じゃないんだけど!?つーか斬れてないし!」
ズルズルズル!!!
そんな蔓が地面から無数に伸びてきていた。
「わわわっ!ちょっ・・・!触手プレイは色々引っかかるからっ!色々設定とか・・・フウちゃぁん!」
色々喚きながら蔓を回避しつつフウを呼ぶサラ。肝心のフウは既に蔓の“発生源”を排除しに向かっていた。即ち賀繫本体の所へ、である。
“風薙の剣”
フウは風の巨剣を作り出し、賀繫へ向けて飛ばそうとした。だが・・・。
ドヒュウウウ!!!
賀繫は腰に差していた扇を振るい、突風を巻き起こし、フウを“風で”吹き飛ばした。
「なっ・・・!?」
風を司る精霊たるシルフであるフウが風で吹き飛ばされるという空前絶後の事態にフウ自身が最も動揺していた。
ズガァァァ!!!
再び上空へと飛ばし戻されたフウの眼前に、地面から今までの食虫植物とは比較にならないほど巨大な、全長100mはあろうかという食虫植物の竜のようなものが姿を現した。
「!?・・・操られていても王族・・・という事・・・。」
動揺から平静を取り戻したフウであるが、状況は芳しくない。せっかく大穴を穿った樹木の砦の前に食虫植物の竜が現れ出で、討伐しなければ砦には向かえないという、RPGのような展開が形成されてしまったのである。
ギジャァァアア!!!
食虫植物の竜が咆え、フウに向かって自身から生える無数の蔓で襲い掛かる。
“鎌鼬”
フウは無数の風の斬撃で対抗するが、食虫植物の竜が伸ばす蔓は先刻サラの剣を弾いたものと同種であった。そのため、フウの“鎌鼬”も物ともせずに向かってくる。
「ッ・・・!」
フウが不味いと風になって回避しようとしたが、蔓は風になったフウすらも逃がさなかった。
ガシィ・・・!
「この蔓・・・自体が・・・内開式の性質を・・・。」
フウは蔓に捕らえられてしまった。
「フウちゃ・・・うわっ!」
フウの方に気を取られたサラもまた蔓に巻き付かれ、捕らえられてしまった。
ギシィ・・・!!
蔓は締め付ける力を強め、2人を圧死させようとしていた。
「ぐっ・・・!」
2人の脳裏に絶体絶命の4文字が浮かんだ、その時であった。
ザガァン!!!
“エクスカリバー”
ズバァン!!!
“真・天狐ノ陽帝”
ゴオオォォ!!!
フウに伸びていた蔓を狗美が、サラに伸びていた蔓をミネルヴァが切断し、食虫植物の竜を陽子の作り出した太陽の如き火球が呑み込んだ。
ギッジャァァァァァァァ!!!
食虫植物の竜は業火の中で断末魔の叫びを上げ、悶えている。
「残す操られた王族は彼のみです。ぬかりなく対処しましょう。」
「みんなぁぁ・・・!」
サラは駆け付けた狗美、陽子、ミネルヴァの姿に、ガラにもなく心底歓喜し、感動した。




