第342話:光耀齎す者達
“真・天狐ノ氷原”
パキィィン!!!
自身を取り囲んでいた巨大食虫植物を一気に凍結させた陽子。その術を回避した混沌を纏う獣悟が頭上から急襲してくる。
“陽撃”
キュドッッ!!!
ただ妖力を光線状に撃ち出すだけの“陽撃”も、内開式発動中の現在の陽子が放てば、空間を振るわせながら天まで貫く光の柱となった。しかし、獣悟はこれも回避し、陽子の背後を取り、大剣を振るう。
ブオンッ!!!
“【禁忌】空間妖術・次元裂き”
バヂィィッ!!!
振り向きざま、陽子は迎撃する。次元を切り(斬り)裂く両者の攻撃がぶつかり、周囲の空間が激しく乱れる。
ボォウ!
獣悟が大剣に焔を纏わせ、斬りかかる。大剣の周りは陽炎のように空間が揺らいでいる。
「最期の全力、といったところでしょうか?」
そう呟くと、陽子は獣悟の振るう大剣を水流で包み込みながら身を翻し、獣悟が大剣を振るった力をそのまま獣悟に返却した。
“流水合気・狐の嫁入り”
ズガァァァン!!!
獣悟は、衝撃で半径20mの範囲に地走りが起きるほどの凄まじい勢いで地面に叩きつけられた。地面に叩きつけられるまでの軌道上の空間は歪んでいる。獣悟を包む混沌が更に厚くなる。そんな獣悟の直上10m程の空中に、トドメを用意した陽子が立っていた。
“天狐ノ光耀”
天に向けられた陽子の右掌に、直径10cm程度の小さな白い光の球体が浮かんでいる。そんな小さな光の珠に、とてつもない“力”が凝縮されている事は誰にでも窺い知る事ができた。それほどの覇気を放つ球体に、獣悟が気づいた時には既に手遅れであった。陽子の手から珠は放たれた。
キュゴオオオオオオオオオ!!!!
珠は獣悟に当たるや否や巨大な光の爆発を発生させ、周囲50mほどの範囲に王土跡の窪地に更なる窪地を生み出した。
同刻
ミネルヴァの“エクスカリバー”に腹筋を貫かれた絲角であったが、無力化はされていなかった。“エクスカリバー”に貫かれたまま、ミネルヴァに向けて拳を振るい始めたのである。
「人形と化し、痛覚もありませんか・・・。」
ミネルヴァは絲角の体から剣を引き抜き、瞬時に背後に移動した。絲角はこれに反応し、裏拳を繰り出してくるが、ミネルヴァの剣が振り返る絲角の脇腹をすれ違いざまに斬り裂いた。だが、その程度で怯む絲角ではない。再び六本の腕でミネルヴァに襲い掛かる。
「陽子さん、そして狗美さんが内開式に目覚めた今・・・もはや温存の必要もなし。」
決心したようにそう言うと、ミネルヴァは絲角の視界から姿を消す。2秒後、ミネルヴァは12人に分身し、円形に絲角を取り囲むように現れた。
“ナイツ・オブ・ザ・ラウンド”
「さようなら、王族の方。どうかごゆるりとお眠りください。」
“速さ”ではなく天力による実体を伴う、4枚の翼を持った12人の分身が“エクスカリバー”を持って一斉に斬りかかる。絲角はどうにか対処しようと拳を振るうが、弾かれ、或いは往なされ、12本の“エクスカリバー”に斬り裂かれた。
オオオオ・・・
まるで浄化されるかのように、絲角の全身から混沌が抜け出ていく。それでも尚、絲角は直立しており、倒れない。
ヴォオオオ!!
慟哭のようなものを上げ、絲角は再度拳を振り回す。すると、12人のミネルヴァの分身は姿を消す。代わりに、絲角の頭上からミネルヴァ本体が舞い降りた。
“エクスカリバー【ロード・オブ・ザ・ヘヴン】”
美しい袈裟懸け斬りと共に齎されたのは眩い光耀であった。その光が消え去った時、混沌の気配が無くなった絲角が大の字で倒れていた。




