第324話:大精霊の力
大精霊の人形が形成した炎の剣が大精霊に飛来する。
パキィ・・・ン!
大精霊は飛来した炎の剣を事も無げに右手で破壊した。まるでカトンボでも払うかのように。炎の剣を払った右手を掌が上を向くように大精霊の人形の方へと向け、人差し指を天へと向ける。その瞬間、凄まじい上昇気流が大精霊の人形を襲った。
“ウェントゥス・エルプティオ”
一瞬で上空1000mほどの高さまで巻き上げられていた大精霊の人形は、そこで漸く態勢を立て直した。だが、態勢を立て直した大精霊の人形は自分に向かって飛んでくる閃光を確認すると同時に飲み込まれた。
“霊撃”
大精霊が地上から放った直径25mはある極太の霊力の光線であった。それは上空1000mまで至っても威力が衰えず、恐らくは宇宙空間までも届いていたであろう。そんな空を貫くような“霊撃”に飲み込まれた大精霊の人形は全身を混沌に包まれた状態で地上へ向かって落下していた。
「さすが大精霊様だぁ!」
「一撃だぁ!」
「見たか大精霊様のお力をー!」
木陰から妖精たちがやいのやいの言っている。大精霊は落ちてくる大精霊の人形の方を見ながら妖精たちを諭すように言う。
『まだ出てきては駄目よ?』
「なんでですかー?」
「もうおしまいですよお!」
「警戒しすぎですよ~!」
バッ!
地上50mほどの位置で包んでいた混沌が無くなり、大精霊の人形は目を開けた。そして態勢を立て直し、瞬時に大精霊への攻撃へと転じる。右手を上げ、バチッと電流を光らせる。その手を振り下ろし、無数の雷を落とそうとしたが、その手が振り下ろせない。大精霊の人形が自身の右手を見ると、木の根が絡みついていた。
“アウグメントゥム・アッシェレリエイシオ・ラディックス”
地上から50mも根を伸ばす、大精霊の力であった。大精霊の人形は左手で炎の剣を形成し、根を断ち斬ろうとするが、それよりも早く木の根は大精霊の人形を振り回して地上へと叩きつけた。
バコォォン!!
木の根による高さ50mからの背負い投げ(のような技)を食らったが、大精霊の人形は地面との間に空気の層を作り出すことでその威力を軽減していた。
シュルルル・・・
掴んでいた木の根が離れ、地中へと戻って行った。それどころか、周囲にあった木々がいつの間にか移動し、大精霊の人形から離れていた。そして直後に空にキラリと光る何かが見える。
“トニトゥルス”
ズガァァンッ!!
巨大な落雷が大精霊の人形に落ち、直径80mほどのクレーターが出来た。大精霊の人形は再び全身を混沌に包まれ、回復を始めた。
「そんな!さっきの“霊撃”で死んでないなんて!」
「でも今度こそおしまいだぁ!」
「黒こげだぁ!」
『もう1度くらいは戻るでしょうね。』
「えー!!?」
『でもそれでお終いね。感じ取れる混沌が明らかに減少しているもの。』
大精霊の言葉通り、大精霊の人形は再びダメージを回復して元通りになった。何かしようと動いた瞬間に、大精霊の人形の胸を空気の弾丸が貫いた。
“エアライフル”
大精霊が右手で銃の形を作り、その指先から放たれたものであった。撃たれた衝撃で一瞬怯んだ大精霊の人形に大精霊は最後の攻撃を放つ。
“霊舞万連陣”
大精霊の人形の周囲にはいつの間にか霊力で形成された無数の武器が浮かんでいた。
『さよなら、私のお人形さん。少し、懐かしくて、少し、救われた気がしたわ。』
ドドドドドドドドドドドドドッ!!!
霊力で形成された様々な武器が大精霊の人形を飲み込んだ。
3分ほど経ち、霊力の武器の全てが攻撃を終えると、後には黒い塊だけが残っていたが、それもやがて霧散していった。
『終わった・・・“ここ”は。』
「ここは・・・?」
早速木陰から出てきた妖精が尋ねる。
『・・・少し出かけるわ。』
「えー!大精霊様がお出かけですかぁ!?」
「精霊界の維持とか世界の環境とかどうするんですか!?」
『貴女たち少しずつ役割を分けてから行くに決まっているでしょう?さて、まず貴女には・・・。』
精霊界の追憶の人形・・・撃破




