第322話:人形の最期
白い閃光が止んだ後、不知火で自身を包むことで美鳥の人形は無事であった。一方の美雷は・・・?
「ふぅ、自爆とは恐れ入りました。人形に己が身を捧ぐ行動ができるとは。流石は護りの不死鳥・・・という事でしょうか。」
無事であった。それも無傷で。
疾風の人形が自爆するために白く輝き始めた時、疾風の人形に掴まれて離れる事が出来なかった美雷は、仕込んでいた秘策を行使していたのである。それは、“雷鳥式武術”の真価とも呼べる術で、バリッ,という電気音とともに発動し、疾風の人形の全身を一瞬、金縛りのように硬直させ、動けなくするという代物であった。その一瞬の間に美雷は疾風の人形のホールドから抜け出し、あまつさえ下方から胸部へと蹴りを打ち込み、上空へと吹き飛ばしたのである。白く輝き始め、既に自爆の“スイッチ”を入れてしまった疾風の人形は自爆を中断することはできず、そのまま空中で爆発したのであった。
「“帯電解放・縛雷”。・・・“雷鳥式武術”の真髄は“帯電”に在り・・・。」
かつて師に説かれた言葉を呟きながら周囲を見渡し気配を探る美雷。
「疾風殿の人形は・・・消滅したようですね。先の自爆が最期の混沌を使い果たした一撃だったのでしょうね・・・。」
そう語る美雷に美鳥の人形が敵討ちだ,と言わんばかりの猛攻を仕掛ける。
“【追憶】剣の不知火”
不知火で形成された剣をブンブンと振り回す美鳥の人形だが、美雷にとってその太刀筋はあまりに遅く、粗いもので、容易く回避できた。
「私の知る美鳥様の剣はもっと洗練され、素早く、何より志の乗った美しい剣でした。」
ブン!バンッ!!バリバリッ!
美雷は剣を躱した勢いで身を翻し、美鳥の人形の顔面に回し蹴りを入れた。態勢を崩しながらも、再び剣を打ち込もうとしてくる美鳥の人形に対し、美雷は言う。
「これ以上、美鳥様のそんな姿を晒させ続けるわけにはいかない。」
“帯電解放・爆雷”
美鳥の人形に打ち込まれた幾つかの“雷鳥式武術”。その都度発生していた“バリバリッ”という電。それは美鳥の人形の体内や体表面に纏わりつき帯電していた。美雷はそれを仕込み爆弾のように起爆させた。
バァァン!!!
美鳥の人形が自爆したかのように稲妻を伴う爆発が美鳥の人形から発生し、再生するための不知火に全身を包まれた美鳥の人形はその場にうつ伏せに倒れ込んだ。
「このくらいの威力でしたか・・・。疾風殿の人形の“護り”で貴女の方にはあまり打ち込めておりませんでしたから、仕方ありませんが。」
地に伏して不知火による再生をする美鳥の人形を見下ろし、美雷は言う。
「もう立ち上がらなくていいです。顔も上げないでください。」
“雷鳥空手・・・”
タンッ!
美雷はとこしえ荘の屋根くらいの高さまで跳び上がる。
“雷落”
キュドォン!!!バリバリバリィ!
雷が落ちる速度で急降下し、地に伏す美鳥の人形の後頭部に拳を叩き込んだ。周囲に雷光が迸る。雷光が収まった時、美鳥の人形の再生する不知火は無くなり、代わりに黒い靄・・・混沌が全身を覆い始めたかと思うと、人形は塵芥のように霧散していった。
「・・・終わりましたか。大家としての最初の務めは果たせたようですね。」
冷静に戦いの終わりを理解する美雷は、自身の右手を左手でギュッと握る。
「美鳥様の姿をしたものを殴らなくてはならないとは・・・運命とはかくも残酷なものでしょうか・・・。」
潤む眼から零れないように、そっと目を閉じる美雷であった。
とこしえ荘前の追憶の人形・・・撃破。




