第321話:雷鳥VS不死鳥の人形
再生する2体の不死鳥の人形は背から不知火の翼を広げた。
「無駄な事です・・・。」
美雷も同様に背から雷の翼を広げる。
ドンッ!!
目にも止まらぬ速さで2体不死鳥の人形が美雷に攻勢を仕掛けた。しかし、美雷は2体の後ろに回り込んでいた。2体がそれに気付き、振り返るよりも早く稲妻が迸る。
“雷鳥気功・雷閃”
美雷の合わせた両手から放たれた金色の雷の光線が美鳥の人形を襲う。
バリバリバリィ!!
例の如く、疾風の人形が護りに入り、攻撃を肩代わりした。
「そう動く事は分かっています。」
“雷鳥空手・穿電”
ズドォ!!バリバリ!
“雷鳥閃”を受けた疾風の人形に間髪入れずに手刀を捻じ込ませた。美鳥の人形が美雷の背後に回り込み不知火の剣を振るうが、美雷はこれを難なく受け流し、反撃を食らわせる。
“雷鳥空手・延髄雷斬り”
ズバァン!!バリバリ!
美鳥の人形の右首に美雷の左足が入り、美鳥の人形は空中を側転するように回転して地面に叩きつけられる。その美雷の背後から疾風の人形が不知火の剣で斬りかかるが、これも美雷は回避し、反撃を浴びせる。
“雷鳥空手・十連直流突き”
ドドドドドドドドドドッ!!バリバリ!
雷纏う十発の正拳突きを一瞬で打ち込む。その威力に怯んだ疾風の人形に更なる攻撃を仕掛ける。
“雷鳥空手・逆雷”
アッパーのように顎に打ち込み、顔を上げさせる。
“雷鳥空手・直烈突き”
ズドドドドドドドドドッ!!バリバリバリ!
一瞬で鳩尾に何発もの正拳突きを入れ、吹き飛ばした。吹き飛ばされた疾風の人形はとこしえ荘の敷地内に張られた結界に激突した。
“【追憶】閃の不知火”
背後からの不知火の閃光を回避しながら、その閃光を放つ美鳥の人形の左腕を絡め取り、関節を決めて地面に押さえつける美雷。
「無駄なのです。貴女達は人形、過去の再現。つまり“成長”がないのです。“再現された時”から前に進むことができない。“再現された時”よりも強い存在と戦えば勝機はないのです。それでも本物の不死鳥ならば非常に厄介な相手となりましょう。なにぶん死なないのですから、こちらの体力が低下し、やがて衰弱して敗北するという道もある。しかし、貴女達は“不死ではない”。その体内に宿る混沌が減っているのがその証拠。即ち、貴女達の使うあらゆる力は“彼の者”に与えられた混沌によって再現しているだけで貴女達が生み出せるわけではない。その身体に宿る“彼の者”に与えられた混沌が尽きた時、貴女達は絶命する。・・・そもそも人形に絶命というのもおかしな話ですが。」
ドヒュン!!
疾風の人形が美雷の背後に瞬間移動してきた。
「そして、疾風殿の人形の方はもうじき“その時”を迎えます。」
美雷に対して不知火の剣を乱暴に振るう疾風の人形。だがその悉くは避けられていく。
“雷鳥空手・直流突き”
顔面に正拳突きを受けて尚、剣を振るい続ける疾風の人形。しかし2発3発と突きを入れられると、流石に堪えきれず、剣を落とし、前方へと倒れ込んだ。
バッ!!
「!!」
倒れ込んだ・・・と見せかけ、疾風の人形は美雷に抱き着いていた。そして、その身体は白く光り輝き始める。
「これは・・・!」
バリッ!
キュドォォォン!!!
疾風の人形は自爆した。とこしえ荘に張られた結界内全域が白い閃光で包まれ、結界自体も振動している。白い閃光が収まった時、美鳥の人形は自身を不知火で包んで爆発を逃れていた事が分かった。一方、美雷は・・・。




