表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界嬢の救済  作者: 常盤終阿
最終章:受け容れし者 編
316/370

第316話:不可視の軍勢

フッ!

フッ!

スカーレットの左右から同時に風切り音が聞こえた。

渦焔かえん

超高速の回転斬りを放ち、左右からの迫っていた剣を同時に弾き、その後に発生した熱風でその剣を持つ者たちを吹き飛ばした。

ヴッ!

今度は頭上から風切り音。

“ストロベリームーンサルト”

ドキュッ!!

跳んだ瞬間が見えない速さのオーバーヘッドキックが頭上から襲い来ていた者に炸裂し、吹き飛んで行った。

「“力域”で姿を消した上で“分身”による集団攻撃・・・実に効果的ですね。」

ザザザ・・・

ザッザッザッ!

ザザザザザザ・・・!

スカーレットの周囲3m程の全方位から無数の足音が聞こえ始めた。

「先ほどの奇襲の間・・・いえ、もっと早い段階から分身を形成していたようですね。見えませんが、既に私の周りは“貴方”でいっぱいなのでしょう。“不可視の軍勢”・・・並みの軍隊でも倒せる能力ちからかも知れません。加えて足音を隠さなくする事で恐怖と絶望も煽れると・・・。」

ザリ・・・ザリ・・・

周囲に展開していると思しき“不可視の軍勢”がじりじりと距離を詰めてくる。

“ブラッディゾディアック”

12人の紅い天力を纏うスカーレットの分身が本体を中心に円を作るように出現した。それはまるで円卓の騎士を彷彿とさせる。

「現代エルフも分身を出せるのですよ?」

ザザザザザンッ!!

その言葉を皮切りに“不可視の軍勢”が一斉に襲い掛かって来る音がした。無数にいると思われるルクスの人形の分身たちをスカーレットの分身たちが迎え撃つ。その場にはスカーレット本人と分身の姿しか見えていないが、そこから聞こえてくる“音”は“乱戦”のそれであった。刃と刃がぶつかる音、斬り捨て、斬り飛ばす音、蹴り飛ばす打撃音、時にはスカーレットの分身が放つ炎や熱風の音・・・。“不可視の軍勢”との戦闘は大混戦となっていた。そしてそれこそがルクスの人形の・・・初代サンクティタス王・ルクスの戦略であった。

自身の“力域”と分身で作り出した“不可視の軍勢”で敵軍を攻め、混戦状態にし、その間に大将を討つ。かつてルクスはこの戦法で幾度も自分たちよりも多い敵軍を陥落としていたのであった。混戦の間に、“大将”を討つのである。

肝心要のルクスの人形の本体は音をさせずにスカーレット本体の背後に近付いていた。

ザウッ!

ルクスの人形の分身がスカーレットの分身たちの間隙を突いてスカーレットの正面上方から飛び掛かって来る音がした。同時に背後のルクスの人形の本体は剣を構えた。正面から襲う分身と同時に剣を振るう算段であった。

「私が本気で風切り音だけで貴方の攻撃を見切っていると思っておりましたか?」

「!!?」

声は発しない。恐らくは“彼の者”に“再現”された存在であるルクスの人形は話せないし感情もないと思われる。そんな存在であるルクスの人形が驚いたように一瞬動きを止めた。

「空気の揺らぎ・・・ですよ。」

ザン!

スカーレットの正面から迫っていたルクスの人形の分身はスカーレットの分身に斬り飛ばされた。

“ブラッディゾディアック・夕焼ゆうやけ古道こどう

それまで無数に迫り来る“不可視の軍勢”の相手をしていたスカーレットの分身たちが一斉にスカーレットの背後にいるルクスの人形の本体に居合斬りで斬りかかった。ルクスの人形はどうにか1人目、2人目、3人目までの太刀は防いだが、4人目に剣を弾かれ、態勢を崩し、5人目以降のスカーレットの分身による斬撃はまともに食らった。分身たちの攻撃の後、スカーレット本体による居合斬りがルクスの人形の首を目掛けて放たれる。

ザァァン!!

ルクスの人形は貴族院正門の塀まで“吹き飛んだ”。“不可視の軍勢”の音は消え、周囲にあった光の靄のようなものも消えていた。なにより、ルクスの人形が吹き飛ぶ様を“見る”事ができた。

「“力域フォースエリア内開式インマイハート”・・・。小細工はなし、というわけですね?」

陽炎のように揺らいでいた石畳は揺らがなくなり、気温も下がっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ