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異界嬢の救済  作者: 常盤終阿
最終章:受け容れし者 編
305/370

第305話:“彼の者” VS 狗美&陽子&陰美&フウ

“陰陽術・土遁・地穴穿ちけっせん

ミネルヴァによる猛攻の直後、陰美の術により、“彼の者”の足元に直径3mほどの穴が開く。しかし、“彼の者”が重力に従い穴に落ちる事はなかった。

「あの纏っている気・・・“混沌”が重力も無効化しているというわけか。」

分析する陰美の上空で、半妖態となった陽子が太陽を思わせる巨大な火球を形成すると同時に、その場にいる和神たち味方全体に“二十重盾結界”をかけていた。

“天狐ノ陽帝”

同時に、陽子の作り出した火球が“彼の者”へと落下する。たちまち周囲には灼熱と業火が炸裂し、大地さえ蒸発し、王土跡の窪地は更にその深さを増す事となり、それに伴って和神たちは結界ごと数m落下した。

「まだです。」

“【禁忌】空間妖術・次元裂き”

“天狐ノ陽帝”の爆炎によって皆が目を眩ませている中、術者である陽子だけは“彼の者”の生存を認識できていたのである。そして、“彼の者”を次元ごと斬り裂いた。

“【禁忌】空間妖術・圧縮”

更に“彼の者”の周囲の空間を“彼の者”へと収束させる。並みの生物であれば当然“空間に圧し潰されている”ところだが、“彼の者”はこれすらも意に介してはいない様子で、そこに浮かんでいた。

「浮かんでる・・・!?」

視界を取り戻したサラが“彼の者”を見上げて言う。

「いえ、陽子さんの火球で周囲一帯が抉られたのです。私たちが落ちただけで、“彼の者”は初めにいた位置から全く動いていないものと思われます。」

ミネルヴァが状況を解説する。そこへ、遠方から風の武器が大挙して押し寄せる。

“風武百連陣”

遺体を運び終えたフウからの贈り物。百を超えるのではないかと思われる風で形成された剣・槍・斧・刀・槌等々が一斉に“彼の者”を襲った。しかし、それらが全てすり抜けているかのように“彼の者”は宙に留まり続けている。

“風薙の剣”

“風武百連陣”の最後尾に、巨大な風の太刀。それが“彼の者”を貫くも、結果は同じであった。

「・・・耐久力・・・などではないな、あれは。」

フウがミネルヴァの傍に姿を現す。

「はい。何をしたところで暖簾に腕押し、糠に釘、といった感覚に思えます。」

そこへ陽子と陰美もやって来る。

「空間を使ってもダメみたいです・・・。」

「何か根本的に手段を変えなければ、こちらが消耗するだけでしょうね。」

そんな話し合いの目の前で狗美が“彼の者”に対し、超高速で打ち込む。だが、これも今まで同様に全く効果が見られない。

「確かに、何か滝とかに水面とかに打ち込んでる感じに似てるな・・・。いくら殴っても終わりがない感覚だ。」

「・・・。」

陽子たちは得体の知れない“混沌”に“素手”で打ち込んだ事に言葉を失っていた。

“不知火拳”

狗美に続き、不知火の翼を生やした和神が殴り掛かりに行った。

「えっ!和神さんも!?」

狼狽える陽子たちが止める間もなく、和神の不知火を纏った拳は“彼の者”の顔面に打ち込まれる。

ドバァン!!

“彼の者”は、のけぞった。和神の拳が炸裂し、その衝撃によって頭部を後方に持っていかれ、のけぞったのである。つまり・・・。

「効いた・・・!?」

皆が一様に声を漏らした。

「・・・“受け容れし者”・・・。」

フウがそう呟く。

「“受け容れし者”には“受け容れし者”・・・という父の読みが当たっていたと?」

陰美の言葉に、確かめたいことができたミネルヴァが和神に言う。

「和神さん、“不知火”以外の力でも攻撃してみてください!」

「あ、はい!」

自分の攻撃が、自分の攻撃だけが効いた状況に一番驚いている和神は、言われるままに試す。

“妖拳”

ズドォン!!

“彼の者”の腹部に打ち込んだ、妖力を纏った拳も見事に炸裂した。

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