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異界嬢の救済  作者: 常盤終阿
最終章:受け容れし者 編
301/370

第301話:形成

魔界・オリエンス王国

「“奈落”になんか落ちたって?」

オリエンス城の城門前で見張りをしているスケルトン兵の1人がもう1人に話しかけた。

「あー。なんかサタン様が直々に見に行ったらしいぞ。」

もう1人のスケルトン兵が答えた。

「直々にねぇ~。まぁ、サタン様が“奈落”見に行くのは珍しくもないしなぁ。」

「そうそう。それにサタン様が見に行ったって事は、俺らの出番はないって言ってんのと同じだぜ。」

「そだな。」

2人の門番スケルトン兵は今日もやる気なさげにあくびをする。


魔界・大陸の中心にある大穴・“奈落”

立ち込める瘴気で底が見えない深い深い大穴。いつもはその縁に立ち、見下ろすだけのサタンが、今日は“奈落”の中へと舞い降り、“淵”に立つ。“奈落”は底も直径500mは下らないほど広い空間になっている。そして、護国院が把握できていない“6つの黒い塊”の最後の1つの行方が“奈落ここ”であった。

「混沌の塊か。妖界から態々《わざわざ》此処まで飛ばしたか。」

全てを悟っているように語るサタン。すると、黒い塊が変異し始める。

「ほう・・・何を開始はじめる?」


精霊界

「大精霊様大精霊様!おっきいまっくろな塊が!」

手の平サイズの小さな妖精が3体、ゆっくりと空中を移動する身長3mを超えるスーパーモデルの如き女性の容姿をした、大精霊に慌ただしく報告に来る。

『解っているわ。だから向かっているのよ?』

「でもでも!何かグニャグニャってね!何か形が変わってるの!」

「そうそう!粘土みたいにね!誰か遊んでるのかな!?」

『形が変わっている・・・?』

大精霊が着弾した黒い塊の前に到着した時、既に変異の8割が完了していた。

『あら?そんな“形”になってどうするのかしら?』


妖界・サンクティタス王国・貴族院正門前

“彼の者”については諸外国には秘密の作戦の為、サンクティタス王国軍の兵士たちは皆、正門前の周辺地域以外はいつも通りの動きをしている。多くの兵を動かさず、大事に対処するには、1人で1個大隊を凌ぐとも謳われる大将1名で当たるのが最適。そこで、黒い塊の対応に任命されたのは、先日、ホワイトランドにて七災神の一角・マスティマを葬った女傑、サンクティタス王国軍大将・スカーレット・ジャヌア・ガーネットであった。彼女が1人、黒い塊の変異に立ち会っていた。

「貴族院と護国院に報告願います。」

スカーレット大将が通信機で伝達兵に伝える。

「黒い塊は変異を終えつつあります。変異後の“姿”は・・・」


妖界・護国院・司守の間

天ヶ崎の目の前で、黒い塊は今、その変異を終えようとしていた。

「難波、黒い塊の変異が、今終わらんとしている。」

通信機で対策本部にいる難波に随時報告をあげている。

「うむ、サンクティタス王国に落ちた黒い塊も変異を終えようとしているそうだ。その姿は・・・。」

「2mを超える大男か?」

「何?違うぞ。・・・天ヶ崎、貴公の前にある黒い塊はそのような形に変異しているという事か!?」

「そうだ。肩幅も広く、着物に袴姿だが、上の着物は脱いで上半身は裸の状態・・・不精鬚ぶしょうひげ顎鬚あごひげに長い逆毛の黒髪・・・この姿、よもや・・・!」

天ヶ崎の脳裏に過ったのは、かつて学舎まなびやで学んだ歴史。日本を統一した龍族の話。その挿絵として描かれていた、肖像画であった。

「初代・・・妖王・・・。」


サンクティタス王国・貴族院正門前

「黒い塊は変異を終えつつあります。変異後の“姿”は・・・初代サンクティタス国王兼初代貴族院長・ルクス・ゼウス・サンクティタス様です。但し、体色が全身白黒、モノトーンとなっており、普通ではありません。サンクティタス王国軍人としては敵ではないと願いたいですが、もし害があるようなら対処せざるを得ません。」

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