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異界嬢の救済  作者: 常盤終阿
最終章:受け容れし者 編
298/370

第298話:困惑

京・護国院の敷地内・王土へ続く門の前・簡易的な小屋

「この時間を利用して、大精霊様が仰った内容をまとめようかと思います。」

ミネルヴァが、大精霊の語った内容をさらう。

「“彼の者”は“受け容れし者”であり、かつては困窮者を救済する“善の者”であった。しかし、その“受け容れし者”の力によって具体的な期間は不明ですが、長期に渡って様々の他人ひとの負の感情と“力”を受け容れ続けたが為に、負の感情に心を侵蝕され、“混沌”を纏うに至り、世界を滅ぼしかねない存在となってしまった・・・という所でしょうか。」

「なんか可哀想ではあるよねー。みんなの為を助けるために頑張ってたら、自分がみんなを傷付ける存在になってたなんてさぁ。」

長椅子に座るサラがしみじみと言う。

「まったくです・・・。しかも“そうなる”前に誰も気付かなかったなんて・・・。」

椅子に腰かけている陽子が同調する。

「大精霊様のような・・・大いなる存在は、良くも悪くも世俗には干渉しない・・・。」

ミネルヴァの傍で数㎝浮いているフウが補足する。ミネルヴァはこれに頷き、付け足す。

「ええ、それに当時は今よりも混沌とした情勢であったのではないかと推察されます。“彼の者”に関わっていた方々も自国の維持や繁栄に忙殺されていたのでしょう。」

「・・・それに、“彼の者”には寿命がなかったって言ってましたから、もしかすると妖や魔物でも、親しい人は亡くなっていたのかも知れませんよね・・・。」

ミネルヴァの言葉に狗美と同じ長椅子に座る和神が考えを付け足した。

「和神さん・・・。」

ミネルヴァが和神に心配そうな眼差しを向ける。

「だぁ~いじょうぶ!アタシは和神くんと永遠ずっと一緒だから♪」

サラが立ち上がり、和神の隣に腰かけ、わざとらしく腕を絡ませる。反対隣りに座る狗美が負けじと和神の手を握る。

「私だってそのつもりだ。言っただろ?不老不死になる方法を探すって。」

それを見ていた陽子も近付いてくる。

「わ、わたしだって、ずっと一緒ですからっ!」

そう言った後で、顔を真っ赤にしている。

「永遠に共にあるなら・・・我が・・・適任。地球がある限り、我もいる。」

空気となって瞬間移動してきたフウが和神の背中にくっつく。

「あ・・・ありがとう、ございます・・・。」

和神は照れながらハニカミつつ、お礼を言った。

「・・・ミーちゃんはイイの?想い伝えなくて?」

サラが悪戯な笑顔を浮かべながらミネルヴァの方を見る。皆の視線がミネルヴァに集中した。

「!いえ・・・私は・・・。」

動揺し、答えに困ったミネルヴァは、話題を逸らす。

「そ、それより!大精霊様のお話の中には“彼の者”について以外にも重要な事柄がありましたね!“魔力を持たない魔人たち”を南の火山地帯へ避難させた,というのは現在のメリディエス帝国の事でしょうし、妖力を持たない妖を異界へ逃がした,というのは、現在の“流界”での“人間の発生”に関する研究のいち仮説を裏付ける・・・。」

「誤魔化して~。」

「みっとも・・・ない。」

珍しく、いや、初めてサラとフウの意見が一致し、笑いに包まれた・・・その時であった。ほのぼのとした空気を、異様な気配が塗り替えたのである。そういった気配に鈍感である元人間である和神も感じ取れるほどの異様な気配に。

「!!何ですか!?この気配!?」

陽子が慌てて小屋の外に出ようとすると、同じく慌てた様子の陰美が小屋に入って来た。

「皆さん、外へ!避難を!」

皆が急ぎ、外へ出る。その異様な気配は“王土”から発せられている事が解かる。息苦しささえ覚えるほど、大気全体を覆うかのような気配。それは“王土”から毎秒強くなっていくように感じられた。

「皆さん、“王土”から離れましょう!」

陰美がそう提案すると同時に、ドーム状の“黒い物”が膨張しながら“王土”を飲み込み始めた。

「!逃~げた方がいいよね!?絶対!」

サラの言葉に皆賛同し、和神たちは一時護国院の母屋まで撤退した。

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