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異界嬢の救済  作者: 常盤終阿
第6章:復活の神狼院 編
285/370

第285話:壇上の災厄

「悪かったな・・・。」

布団に入って天井を見上げて1分ほど経ち、狗美が隣の布団にいる和神に向けて言った。

「悪かったって?」

和神が聞き返した。

「親の形見を取りに来ただけだったのに、大事おおごとになって・・・。」

「ああ・・・別にいいよ。狗美が大事にしたわけじゃないし。むしろ狗美の役に立てて良かったよ。・・・どっちかというと、明日の式典の方が気が重いよ・・・。」

「フフッ・・・そうか・・・。」


翌日、昼-王狼街・商人地

和神と狗美は式典の為に用意された舞台上の少しだけ豪華な椅子に座り、黙祷を捧げていた。式典と言っても、かつて京で参加できなかった式典ものと同様、戦闘による死者を弔うための意味合いが強い式であるため、飲んで騒いでのお祭り騒ぎ,とはいかない。また、この式典では、王狼院側の死者も共に弔われており、“元”王狼城警備隊長の犬蔵と“元”群狼隊総隊長の犬武も拘束されたままではあるが参列していた。本来ならば、王狼院長であった狼真も参列すべきなのだが、年甲斐もなくギャンギャンと騒ぎ立てているため、見送られることとなった。

「黙祷、やめ。」

滅豪隊員の司会者の声で目を開ける。ここで犬蔵と犬武は退場となり、続いて滅豪隊隊長として士狼が演説を始める。今後の滅豪隊の方針や、豪族の暴挙は絶対に許さない,という、改めての決意表明などを5分程度にまとめた内容であった。そして、遂に2人の出番が来た。

「此度の戦いで勝利し、王狼院を落とせたのは間違いなく、この2人がいたからである!否!この2人がいなければ落とされるのは我らの方だったろう!神狼院の犬神、狗美!そして不死鳥の力を受け継ぎし者、和神ィ!」

やたらと盛り上げる士狼に呼び込まれ、おずおずと席を立ち、前に出る2人。すると、一斉に盛大で惜しみない拍手が鳴り響く。

「ありがとー!」

「英雄だー!」

「感謝をーー!!」

そんな歓声が飛び交う中、2人には士狼から滅豪隊特別隊員の証として三日月を模した首飾りが贈られた。

「よし、じゃあ、一言もらおうか!」

来た。これだ。昨晩、和神が気が重いと言っていた最大の理由。

“一言スピーチ”

かつて学生時代、何かの催しで、あるいは賞を取って、壇上へと出たら最後、かなりの高確率で求められる災厄。それが“一言スピーチ”である。

「じゃあ、狗美ちゃんから。」

しかも後攻。和神は昨晩風呂に入っている時から備えていた。この壇上で襲い来るであろう災厄スピーチに対し、どんな事を言おうかと考えていた。しかし後攻では、先攻、即ち狗美が言った内容については話せなくなってしまうのである。とにかく今は狗美の話に耳を傾ける他ない。和神は狗美のスピーチに集中した。

「えっと・・・私は小さい頃に両親を亡くしたから、ずっと1人で暮らしてきて。妖界の事とか、よく知らなくて。だから、豪族が今まで何をして来たのかとかもよく知らなくて。でも、友達が豪族に苦しめられることがあって、小さい頃知り合った友達も本当は豪族に苦しめられてたって知ったから、それで戦っただけ。私は、そんな色んな事とか世界の事とかは考えてない。ただ、友達を助けたかっただけ。それはこれからも変わらない。だから色んな事は滅豪隊の人たちに任せます。」

狗美は軽くお辞儀をして話し終えた。たどたどしいスピーチであったが、狗美の率直な思いが込められた言葉に、涙する者もおり、狗美がお辞儀した後には自然と拍手が起こった。幸い、そのスピーチの中には和神が話そうと思っていた“当たり障りのない内容”は含まれていなかった為、和神は当たり障りのないスピーチをし、そこそこの拍手を貰い、2人の出番とともに式典は幕を閉じた。

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