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異界嬢の救済  作者: 常盤終阿
第6章:復活の神狼院 編
275/370

第275話:王狼城・1階大広間

「ほっほー!それはその通りじゃ!何せ儂は王狼院家始まって以来最高の当主じゃからな!中々見込みのある寵花ではないか、狼人の所に置いておくには勿体ない程じゃ。」

王狼院家当主・狼真は自身のもとへ狗美を連れてきた七美をいたく気に入った様子で、賛辞を送る。

「では、狼真様・・・。」

「ふむ、そこの寵花は今から儂の寵花とする故な。」

指示を仰ぐ白銀漆拾伍號に伝える狼真。

「それとそこの犬神の女は儂の第・・・何番目じゃったかの?」

「13番です。」

すかさず白銀漆拾伍號が答える。

「そうじゃったな。では儂の第13正室として迎える。相違ないな?」

それが当然であり、反論の余地などあろうはずがない,と言わんばかりの振る舞いをする狼真に、はい!,とこうべを垂れる七美。それを見てうんうん,と満足げに頷く狼真。その視線が狗美に向けられる。

「おぬしもな?」

「何言ってるか解らん。私は王狼院を潰しに来たんだ。」

その言葉に一瞬、場が凍り付いたように静まり返り、その後、アハハハハハハ,という爆笑が天守閣を包んだ。

「王狼院を潰す!?アハハハ!」

「ハハハハ!もう少しマシな冗談を言え・・・!」

「ほっほっほ!外界の住人はそんな面白い事を言うのかの~。これからの夫婦生活が楽しみじゃわい!」

金剛玖拾陸號、白銀漆拾伍號、そして狼真が口々に狗美の“妄言”を嘲笑った、その時だった。ゴゴゴォン・・・と天守が揺れた。

「なんじゃ?」

「チッ・・・!1階の連中かと、只今確認を・・・。」

白銀漆拾伍號が通信機を取り出した。


3分前、王狼城1階


「よし、こっちもやるぞ!」

「はい!」

士狼の鼓舞に和神は応え、2人は門を開いた。その先には、王狼城の1階から2階まで吹き抜けになっている大広間があり、上へと続く階段は大広間を抜けた先にあるようであった。だが、この大広間には、大きな障害があった。

「残念だったなぁ~侵入者!俺はこの王狼城警備隊・隊長の犬蔵けんぞう!白銀漆拾伍號殿の探知能力により、貴様ら4人組の居住地への侵入は筒抜けだったのだ!大人しく観念せい!」

和風の甲冑と兜を身に着けた30名を超える警備隊と、その先頭に立つ犬蔵と名乗る隊長、そしてナナミが言っていたと思われる用心棒2名が、大広間で2人を待ち構えていたのである

「あれ・・・。」

「こりゃあ・・・。」

和神と士狼は予想外の出迎えに絶句する。そんな2人を見て、犬蔵は首を傾げる。

「む!?2人しかおらんではないか!貴様ら!あとの2人はどうした!?」

「さあね?帰ったんじゃないか?」

士狼がふざけた答えをする。それに対し、顔を真っ赤にして起こる犬蔵。

「何だとォォォ!?貴様!この王狼城警備隊長を愚弄するかぁ!!構わん!どうせ白銀漆拾伍號殿の探知にかかれば他の2人も見つかる!野郎2人組など撃ち殺してしまえェ!!」

警備隊が一斉に妖銃を構える。

「王狼院らしいやり方だぜ!」

「士狼さん、下がってください!」

和神が一歩前へ出る。

「撃てぇぇ!!」

犬蔵の号令で一斉に引き金が引かれた。

ババババババババババババンッ!!

不知火壁しらぬいへき

和神が巨大な白い炎の壁を前方に展開し、自身と士狼を妖力の銃弾から守る。

「おお、やるなァ!」

「まぁ、このくらいは・・・。」

「で、これからどうするよ?」

2人は“不知火壁”の後ろで現状を打破する方法を相談する。一方、警備隊の方は、効いているかどうかも分からないまま、ただただ突如出現した白い炎の壁に銃弾を撃ち込み続けていた。

「撃て撃てぇい!王狼院の技術が通じぬ訳がないっ!」

犬蔵は王狼院を妄信している様子で部下に発砲を続けるよう命じていた。そんな中、“不知火壁”の後ろから、飛び出す影があった。


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