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異界嬢の救済  作者: 常盤終阿
第6章:復活の神狼院 編
270/370

第270話:動乱の王狼街

街唯一の出入り口であり、王狼院家の居住地に次いで警備が厳重な王狼鳥居からの襲撃に、街を訪れていた豪族や商人、そして制圧に当たる群狼隊の皆が思っていた。“すぐに鎮圧されるだろう”と。そのため、すぐには混乱は生じなかった。しかし、初めに駆け付けた群狼隊員の一団が返り討ちにされ、金狼・銀狼を数名含む本隊とも呼べる第2陣が狗美の力域によって神狼院の血に目覚め、強化された滅豪隊員たちの予期せぬ抵抗に遭い、防戦を強いられ始めると、状況は変わっていった。

「ちょっと、いつまでやってるのよ!」

「早く片付けないか!」

「街の中は絶対安全じゃないのか!」

豪族たちの罵声が群狼隊に浴びせられ、焦った隊員たちは平静を欠き、それが隙となって更なる苦戦を強いられることとなっていく。加えて、滅豪隊員たちは出来るだけ派手に騒ぎを起こすべく、商店の襲撃も開始。特段戦闘力を持たない商人には目もくれず、店舗の破壊と“商品”として檻に捕らえられた妖や魔物たちの解放を行っていく。

「俺たちは滅豪隊!豪族を終わらせる集団だ!」

「逃げるもよし!共に戦うもよし!全てはお前たちの自由だ!」

滅豪隊員たちの言葉に奮い立ち、群狼隊と戦闘を始める者、豪族への恐れから震えて動けぬ者、逃げ出す者、それぞれあったが、いずれもが“王狼街を混乱させる”という目的にはプラスの要素として働いた。

「何だ、貴様ッ!ぎゃああああ!!」

「ちょっとどういう・・・うぎゃッ!」

解放された者達の中には当然豪族への恨みを募らせた者達も少なくなく、そういった者達が豪族を執拗に付け狙い始めた事で、街の混乱は加速。それまで素知らぬ顔で他人事のように高見の見物を決め込んでいた豪族たちは、たちまち渦中へと引きずり込まれたのである。

こうして、平静な者がいなくなった王狼街は、かつてない大混乱となり、襲撃開始から僅か5分足らずで戦闘音と悲鳴のこだまする混沌の街へと一変した。


王狼街・商人地北部、狗美たち別動隊一行

「どうやらあいつら上手くやってるみたいだな。」

「ええ、彼らの為にも早急に王狼院長を討たねば。」

そう話す士狼とナナミ、それに追随する狗美と和神の4名は滅豪隊員たちが起こしてくれている動乱のお陰で1人の群狼隊とも出くわす事無く商店の屋根の上を移動し、王狼城へと向かっていた。

「・・・城などどこにも見えないが、まだ遠いのか?」

延々と広がるように見える街並みを見て狗美がナナミに問う。

「・・・王狼城はこの街同様の結界がもう1重かけられてるの。居住地への門を開かない限り目視出来ないし、進入も不可能よ。」

「その門は開くのか?」

「・・・何があっても絶対に動かない“門番”がいる。この動乱でも居住地への門を守る事だけを考えているはず。・・・ほら、門が見えたわ。」

そう言ってナナミが指さす先には3m程度の高さの全面金色の門と塀が立っていた。そしてその前には全身を鈍く光る銀色の鎧で覆った門番らしき兵士が2名立っている。

狗美たち4人は少し離れた商店の屋根の上に姿を隠して様子を伺う。

「おいおい、ホントに微動だにしてないぞ?」

「ええ、普段はまるで銅像。私も数度、王狼城に入る際の開門の時にしか動いているのを見た事がありません。」

「・・・右を私がやる。左を和神、頼めるか?」

「え、あ、うん。わかった。」

「ちょっと、正面からやる気?私が行って話を・・・。」

「早急に王狼院長を討つんだろ?」

「そうだけど・・・あぁ、ちょっと!」

話を早々に切り上げて狗美は門番のもとへと超高速で向かった。和神もすぐに後を追った


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