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異界嬢の救済  作者: 常盤終阿
第2章:京都守護妖 編
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第23話:VS陰陽隊

 千明&千影姉妹に危なげなく勝利した和神と陽子は、第2広場への門を開いた。護国院本家へ到達するには、三重の広場を抜け、中庭を通なければならない。他にも侵入方法はあったが、陽子は護国院に『自分は止められない』ということを示すため、わざと正面突破を選んだ。

その甲斐あって、2人は第2広場で塀の上に立ち並ぶ陰陽隊に囲まれた。

「陽子様!これ以上の愚行はお止め下さい!」

「止まらないよ、難波さん。」

 陰陽隊長が警告するが、陽子は和神の手を引いて歩みを進める。

「致し方ない。」

 陰陽隊長がそう言うと、陰陽隊全員が印を組み始める。すると、広場の地面に光る陣のようなものが浮かび上がってきた。

「これは・・・!」

「陽子様もご存じないでしょう、この第2広場に仕掛けられた奥の手・“九尾封陣きゅうびふうじん”です。九尾をも封じる最高峰の陣。よもや貴女様に使うことになるとは、残念です。」

「っ・・・!」

 陽子も今回ばかりは本気で焦っているように見える。陣が完全に浮かび上がろうとしている。和神は地面を“妖銃”で撃ってみたが、地面が多少抉れただけで、陣は消えない。

「術者を何とかしないと!」

 陽子は陰陽隊に“陽撃”を放った。しかし、陰陽隊の前には範囲が狭い代わり強固になる“八重盾結界やえたてけっかい”が張られており、受け付けない。陽子が他の術を放とうという時、“九尾封陣”は完成した。

「しばしお眠り下さい、陽子様。」

 陣が光始め、陽子と和神両者を封じようとしたその時。陰陽隊の右の一列が背後から切り裂かれ、バタバタと広場に落下した。術者の一部を失った“九尾封陣”はゆっくりと消え去った。

「何事だ!?」

 陰陽隊が落ちた後の塀の上に立っていたのは狗美であった。

「待たせたな。」

「狗美!」

「狗美さん!」

 喜びも束の間、陰陽隊は狗美めがけて様々な術を放つ。狗美は塀から降り、術は塀の上部を破壊していった。狗美は急ぎ2人に駆け寄る。

「ここは私と和神で何とかするから、陽子は先に行け!お前が護国院の頭と話せば、こいつらも止まるかも知れないしな。それに、和神がいれば最悪私が“犬神化”すればいいからな。」

「わ、わかりました。」

「放てェ!!」

 3人に向かって術が飛んでくる。それを躱すと同時に陽子は第3広場の門へ向かって走り出し、狗美は和神を抱えて反対方向へ飛び退いた。

「陽子様!」

 陰陽隊の注意が陽子に集中した時、狗美は背後の塀に飛び乗り、立ち並んだ陰陽隊を素手で倒していく。

「くっ・・・陽子様は第3広場で待つあの方に任せればいい。我々は陽子様をたぶらかした、その賊2名の排除に集中する!」

 陰陽隊長が懐から人型の紙を取り出し、宙へほうった。するとその紙はボンッ,という音と煙と共に3mはあろうかという深紅の鬼へと変貌した。

「“式神”よ、その賊2名を捻り潰せ!」

「ウォオオオオオオオオオオオ!!!」

 深紅の鬼は和神へと突進する。和神は妖銃を撃つも、鬼には効いていない。が、鬼は大きく吹っ飛び、和神の右側、第1広場との境になっている塀に突っ込んだ。吹っ飛んだ原因は、狗美が横から鬼を蹴ったからであった。

「何!?我が鬼が!」

「全く、自分で戦ったらどうだ?」

 余裕の狗美の前に新たな蜘蛛型の式神と蜥蜴型の式神が召喚された。


一方陽子は無事に門を抜け、第3広場へ入った。第2広場からの追撃を防ぐため、門を閉める。同時に背後に気配を感じる。振り返るとそこには、薄い金色の髪をしたスーツ姿の女性隠密隊長が1人立っていた。

「陽子様、ここまでです。どうか、お戻り下さい。」

「ヤダよ。あと、陽子『様』っていうの止めてよ、隠密隊長さん?」

 皮肉な言い方をする陽子だが、相手は無表情のまま、手を差し出す。

「お戻りを、陽子様。」

「小っちゃい頃はわたしが手を引いてたのになぁ。手、大きくなったね、陰美。お姉ちゃん嬉しいよ。」

 そういうと陽子は差し出された陰美の手を握った。その瞬間、陰美は宙を舞った。

「“合気”ですか。」

「ごめんね、陰美。一緒には行けないの。」

「そうですか、では。」

 宙を舞いながら陰美は陽子に右手を向ける。その手は銃を形作っている。

鬼火弾おにびだん

 指先から複数の青い火の玉が撃ち出された。陽子は妖力で盾を形成し、鬼火弾を受け止めた。陰美は静かに着地した。

「力ずくでお戻り頂きます。」

「できるものなら、ね?」



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