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異界嬢の救済  作者: 常盤終阿
第5章:破滅の不死鳥 編
228/370

第228話:人型の不知火

富士見島~京間・海上上空


不知火の翼を広げて高速飛行する和神とその腕に抱きかかえられている狗美。狗美自身も腕を和神の首に回している。

「・・・あの時とは逆だな。」

不意に狗美が呟いた。

「あの時?」

「王狼院の連中と戦った時だ。あの時は私がお前を抱えていただろ?」

「あぁ~、そうだね。あの時もその後も、移動する時はいつも抱えられてけど・・・。狗美と出逢ってからまだ半年も経ってないって、なんかもっと長く感じる・・・。」

狗美が和神の顔を見る。和神はその視線に気付く。

「!・・・何?」

ことのほか近かった狗美の顔に動揺する。

「・・・不死鳥になろうが、お前は和神だからな?」

「?うん。」

狗美の和神の首に回した腕の力が少し強くなった気がした。


京北部・対破滅の不死鳥作戦本部・指令室(簡易テント)

「“人型の不知火”、以前京を目指し南下中!速度は遅いですが、隠密隊及び陰陽隊の妨害を悉く退け、着実に侵攻しております!!」

「やはり止まらぬか。」

「加えて、時間経過と共にその力を増大させている模様!移動速度も徐々に速くなっております!!」

「ッ・・・!!」

護国隊長・天ヶ崎が苦い顔をしている。和神たちが疾風を撃破した直後、京の北に出現した不知火の種火のようなものは数分で人ほどの大きさまでに膨れ上がり、疾風を模した形態へと変異して後、まっすぐ京へと向けて侵攻を続けていた。その歩みは牛歩の如く、ゾンビのように遅いが、まさしくゾンビのように不死身で、かつ疾風ほどまでではないものの非常に高い戦闘能力を有しており、侵攻を妨げるものは生物・静物問わず破壊していくため、その侵攻を止めることは出来ていなかった。

「直接攻勢に出れば返り討ちに、術で止めようにも不死鳥に不知火以外の術は効果が殆ど見込めない・・・。元より封印より“すり抜けた”存在であるが故か封印術の類も効かぬと・・・まさしく“不死”鳥か・・・。」

普段は嫌みなほど搦手に長ける陰陽隊長・難波も頭を悩ませている。冷静なようでかつてなく焦ってもいた。

「破滅の不死鳥が撃破されたと吉報が入ったと思えば・・・!これが不死鳥を相手にするということか・・・!」

まさに打つ手なし,といった各隊の長たち2名のもとに隠密隊副隊長・アンが駆け込んでくる。

「天ヶ崎様!」

「今度はどうした!?」

「今、富士見島監視役の隊員から報告が!“不死鳥”と犬神の女性・狗美殿がこちらへ向かっているそうです!!」

「美鳥殿と狗美殿が!?それはありがたい!」

「“癒しの不死鳥”がいれば勝機はあろうぞ!」

歓喜する2人に暗は言いづらそうに伝える。

「い、いえ、それが、“不死鳥”というのが“癒しの不死鳥”・美鳥殿ではなく・・・。」

「!?美鳥殿以外に不死鳥はおらぬはず・・・!」

「よもや“癒しの不死鳥”と“破滅の不死鳥”の間に子が?」

動揺する難波は的外れな推論をしているが、暗はそれをバッサリ切り捨てるように報告する。

「いえ。“不死鳥”というのは、かの“受け容れし者”、和神翔理殿であるようです。」

「!!?」


京の北・1㎞地点

「カ・・・ノ・・・。今・・・解キ放ッテ・・・。」

そのゾンビのような歩みを徐々に速くしていく“人型の不知火”。姿かたちは疾風を象った不知火の炎そのもので、実体は伴っていない様子である。

「マズいぞ、1㎞地点まで来ちまった・・・。」

「ああ、やるしかねぇ・・・!」

1㎞地点で待機している護国隊員と陰陽隊員が覚悟を決めて“人型の不知火”に特攻を仕掛けようとした、その時。上空より白き一筋の光が差す。

“不知火拳”


作者の都合により、次週は休載させて頂きます。

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